投稿日: Jan 31, 2019 8:46:35 AM
情報通信の見方・考え方の追究
教科授業改善、教科横断の探究を学会はどのように支援できるだろうか?分野特有の「見方・考え方」を考えるにあたって、答申や公示された教科別の指導要領解説を整理した。
「見方・考え方」とは「各教科等の特質に応じた物事を捉える視点や考え方で、教科等を学ぶ本質的な意義の中核をなし、深い学びの鍵として、各教科等の学習の中だけではなく、教科等の学習と社会をつなぎ、大人になっても重要な働きをするもので、資質・能力の三つの柱が活用・発揮される過程で鍛えられていく。教師の専門性の発揮によって、生徒が学習や人生において自在に働かせることが可能となる」と説明されている。
すべての教科毎の「見方・考え方」が示されているが、情報通信に関係深い「理科」の指導要領解説では、「自然の事物・現象を,質的・量的な関係や時間的・空間的な関係などの科学的な視点で捉え,比較したり,関係付けたりするなどの科学的に探究する方法を用いて考えること」とし、「エネルギー」、「粒子」、「生命」、「地球」の代表的な4領域で、量的・関係的、質的・実体的、多様性と共通性、時間的・空間的等の視点を特徴として挙げている。これは物理、化学、生物、地学の学問分野の説明であり、授業支援の具体的イメージが沸いてこない上、探究で重視する社会の繋がりも見えてこない。そんな中で教科の1つである「科学と人間生活」は,自然に対する理解や科学技術の発展が日常生活や社会への影響,役割を、観察,実験を通して興味・関心を高め,科学的に探究するために必要な資質・能力を育成すると位置づけている。また新設の「理数探究科」は、自然科学だけではなく,社会科学や人文科学に関するもの,芸術やスポーツ,生活に関するものなどあらゆるものを含み,様々な事象に向き合い自ら課題を設定しようとする動機付けを重視しているほか、SSHと同様に学術研究を通じて知の創出をもたらすことができる人材育成を目指している。
このように見てくると、理科は対象に自然の事物・現象に限らず、科学技術によってもたらされた人工物を含み、米国等におけるSTEM教育に採用されている問題解決型やプロジェクト型の学習、観察・実験等を取り入れ、探究の中核となることが重要である。学習から探究に変った「総合的な探究の時間」は、各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を総合的・統合的に働かせることを通して、自己の在り方生き方に照らし、自ら問いを見いだすことを目標としている。「事象を,情報とその結び付きとして捉え、情報技術の適切かつ効果的な活用(プログラミング,モデル化、シミュレーション、情報デザインを適用等)により,新たな情報に再構成すること」との「情報科」の見方・考え方も加えて、電子情報通信学会の扱う分野での見方・考え方を示すことで高校支援を目指したい。