最新の議論について以下紹介します。
大震災からの学びを風化させないために
-人間の観点からの課題への取り組み-
<主催> HCG (HPB研究会、CML研究会)
<日時> 3月20日(水、春分・祭日)9時-12時
<会場> 岐阜大学工学部 D棟1階106番教室
<趣旨>
東日本大震災の提起した課題は多く、技術だけでなく人の観点からの課題整理が必要である。本会誌10月号の小特集「人間中心の観点での東日本大震災からの創造的復興」では東北地方の関係者を中心に、大震災後の救済から復旧・復興に至る過程での課題をまとめ、解決に向けた第一歩とした。
広範で多様な被災状況は、未だ多くの多様な支援を必要とし、支援や復興を行政だけに頼ることはできない。支援を必要とする実態を把握して広く伝えて支援提供に繋げ、学びを未来世代に伝えて改善した仕組みを構築するために情報通信の役割は大きい。小さな努力の積み重ねが大きな力になることを信じながら、このシンポジウムを「ひとつながり」の支援の輪を広める機会としたい。
ご案内はこちらから 2013.1.28 総合大会シンポジウム「人間の観点からの大震災」調整中
電子情報通信学会総合大会シンポジウム
(大会企画パネルセッション 一般公開)
2013年3月20日 春分の日
岐阜大学工学部 D棟1階106番教室
<司会 学会誌小特集編集チームリーダー 苗村昌秀>
1)被災地の今、そしてこれから~電子情報通信学会への期待 村上 育朗
2)コミュニティによる街づくりと情報通信への期待 加藤 孝明
3)復興杭を通して学びながら後世に伝える 岩井 将行
<司会 同メンバー 持田侑宏>
4)東日本大震災をテレビはどのように伝えたか 原 由美子
5)次世代ブラウザを用いた災害時情報連携 井原 雅行
<講師からのメッセージ(概要)>
村上 育朗(教育未来そうぞう代表)
東日本大震災から2年経過しようとしている。私の住んでいた陸前高田の市街地は、一本松を残してすべてを失った。その廃墟は未だに残されたまま。避難所で見つけた絆も、仮設住宅の中に眠ってしまった。学校においては、試験のための教育に戻りつつある。微かに学生ボランティアの活動の中に未来の可能性を見出すことができる。力尽きた一本松も、科学技術の力でその生命は未来に繋がるようだ。この大震災からの学びを風化させることなく、学び伝えねばならない。
情報通信の最先端の技術を駆使し、学びを広く伝えて欲しい。多くの人が被災地を訪ねて自分の目と耳で確認することから始めて欲しい。人の原点に戻って、感じて行動することで、創造的復興が始まる。
加藤 孝明(東京大学生産技術研究所)http://kato-sss.iis.u-tokyo.ac.jp/
防災まちづくりの基本は「自助・共助・公助」といわれるが、「自助の無策」「共助の自己満足」「行政の言い訳」という三すくみの状態に留まっている。災害経験を持たない、流入新住民等の無関心、地域コミュニティに不参加などの層増加により、高齢化地域では活動力の衰退、防災まちづくりの原動力が不足している。
持続的、自律発展的な「自助、共助」は、①起こり得る地域での「正しい」被災状況、②相互の役割分担の理解がベースとなる。情報通信技術を活用した首都圏先進地域の防災まちづくりは、持続的なコミュニティづくりの第一歩となる。
岩井 将行(東京大学生産技術研究所)http://lake.verdanet.org/fukko/index.php
東日本大震災以降から2年経過、被災地域の過去、当時の様子、未来の画像、映像を継続的にアーカイブし記憶を甦らせて、学びながら未来に伝える必要がある。ボランティア活動である「311 まるごとアーカイブ」の一環として、地域コミュニティ、復興支援者が参加し、デジタルカメラ、携帯電話、スマートフォンを利用して復興記録を撮影・閲覧する「復興情報杭」を試みている。
埋設された杭に埋め込まれた位置情報はサーバーに蓄積された定点写真・避難経路・土地利用情報などをタブレットやスマートフォンの表現デバイスに提供する。時間と空間を超えて伝え、繋げる情報通信の役割を改めて考える。
原 由美子(NHK放送文化研究所メディア研究部)
東日本大震災は、かつてメディアが経験したことのない規模の、広範で複合的な大災害であった。これをテレビはどのように伝えたのか。多岐にわたる事象をどのように伝えていったか、被災の規模や地域をどのように把握していったか、行動指示情報は的確に伝えられたか、被災者向けの情報と被災者発情報のバランスはとれていたか、また人々のこれらの報道に対する受け止めはどうであったかなどについて、NHK放送文化研究所が行った調査・分析結果を中心に、他のデータ等もまじえながら報告し、今後に向けた課題や活かすべき教訓を考える資料としたい。
井原 雅行(NTTサービスエボリューション研究所)
災害発生時には,安全に行動できるように各種状況の把握が重要であるが、東日本大震災では、通信ネットワークが不安定になるとともに,各自が持つ端末においてもOSや表示形式の違いから十分な災害関連情報の共有が行われなかった。本発表では、インターネットが不通でも災害関連情報を様々な端末間で適切に共有して表示するレジリエントな情報流通技術を紹介する。端末のOSや表示形式に依存しない技術仕様である次世代ブラウザ技術を利用し、端末同士が連携して効果的に情報共有を行うことを可能とする。また、この流通プラットフォームの上で動作する各種ユーザインタフェース技術についても紹介する。