投稿日: Feb 27, 2014 1:52:37 PM
1. これまで
電子情報通信学会HCG(ヒューマンコミュニケーショングループ)所属第3種研究会「未来世代から見たコミュニケーションの魅力と学習意欲向上」は、2011年3月14日に発足記念シンポジウムの開催を計画していました。その数日前に発生した東日本大震災によって講師をお願いしていた高校の先生とも連絡が途絶え、中止を余儀なくされましたが、2か月後には東京で「震災から学んだことを未来につなげるために」をテーマとしてシンポジウムを開催しました。その後、仙台や石巻で被災地の高校生を招いたワークショップを開催、高校生の気持ちの理解と支援に努めました。大震災という特別の事態に遭遇した被災地の高校生は、オープンキャンパスに参加、経験豊かな講師の講義などの刺激に接し、仲間の発言に共感、違いにも触発されて自らのことに気づき、内に秘めていたものを仲間と語る中で、外部への目を開き、元気を取り戻して勇気を得たようです。特別な体験は願いに、更には目標となり学びの意欲に昇華したともいえます。
2012年3月の岡山大学での総合大会ではシンポジウム「楽しい学び実現?-高校生の意欲向上目指して-」を開催、高校現場の実践報告に加え、教育心理学の観点からの講演も含めて、近隣県の高校の先生を含む60名余の参加をいただき、このテーマへの関心の高さを確認しました。その後10月には福島で情報処理学会と連携して「特別な体験を学ぶ意欲に」をテーマに、東北の高校先生を主対象としたフォーラムを開催、広島復興や意欲を高める国内外の実践紹介を紹介して激励しました。こうした大震災を契機とした高校の先生との連携活動を学会内で広く理解いただくために、学会誌10月の小特集「人間中心の観点での東日本大震災からの復興」の編集に協力、12月に熊本で開催された所属グループのHCGシンポジウム2012では、キーメンバーによるパネル討論を行い、学会会員への大震災への関心喚起を訴えました。
2013年3月20日の岐阜大学での総合大会には、「人間の観点からの大震災」「続 楽しい学び実現は?」の連続した2つのシンポジウムを開催、延べ100名を超える参加を頂きました。意欲を高める「リベラルアーツ教育」や「行政や企業も含む多様な参加者による地域プログラム開発」「新聞や情報通信NWを活用した対話」の実践報告を伺いました。対話への自主自発的参加は、仲間生徒との意見の違いに気付いて自分を変容させる第一歩となるようです。対話を通して、身近な生活での豊かな遊び(原っぱ)を取戻し、文字ベースで書かれた新聞、映像や美術なども活用、記者や作者など多様な人の参加を得た対話が若者の変容を促すことを確認しました。
2. 2013年12月15日フォーラムの開催
こうしたシンポジウムが地方開催となり首都圏の皆様にご参加いただく機会が少ないことを考慮して12月15日に東京でフォーラムを開催しました。将来教育への寄与を目指す大学生や、イノベーションフロンティアの研究や活動を支援する研究・技術計画学会とも連携、3年を時限とした調査中心の研究会活動に一区切りつけた後の、新たな活動の展開の模索も図りました。
このフォーラムでは、高校の先生が取り組まれている授業改善の実践の中から、①グループでの討論をベースにしたアクティブラーニング(AL)授業、②地域との連携を通して社会の中での自立を促すキャリア教育、③i-padなどの情報機器の活用を通した学校や授業の改革、④これらを支援するボランティアやベンチャーの活動の紹介をいただきます。これら仲間、対話、ICT等の力を活用した学ぶ意欲を高める方向を確認した後、幸福感に裏付けされた“楽しい学び”をゴールとする社会システムデザインについて、大学の先生を含めたパネル討論を行いました。
プレイベントとしてシステム思考により教育の課題を議論するワークショップを実施、当日は可視化した図を学生が紹介した。先生による生徒の学びの意欲を高める実践には、幸福に通じる自己実現や繋がりを確認することができました。AL(アクティブラーニング)のグループワークの効果は繋がりの力の発揮されたもので、白熱教室での冒頭と同様な設問、フォローは教員の大切なスキルとして関心を呼び、多くの質問が寄せられました。一斉授業の限界を破るこうした工夫、そのノウハウの共有は、ICTで支援できることを確認しました。
3.これから
ICTの支援の可能性を教育のイノベーションに繋げることが期待されます。SNS等のICT技術の進歩は、ステークホルダー全員参加、協創するシステムデザインを可能としています。芸術の世界でも作家と鑑賞者が一体となって作品制作するインタラクティブアートが登場、工学部は新たな文化創造の担い手を育成することを期待する声、もあります。これまでの科学技術の進歩を支えた要素還元主義に立脚する西洋の近代合理主義の限界を無から出発して全体を俯瞰する東洋哲学との融合で乗り越える必要もありそうです。ALや地域融合の推進からの先生の知恵を共有する情報システムを「協創」のアウトプットの1つとして実現を目指したいと思います。