井上 広子 (食環境科学部)
主に大学祭で地域の方々への食育・郷土料理の普及に努める活動を行った。学生自身が、自身の出身県の特徴や郷土料理に関することを調べ、郷土料理伝承のパンフレットを作成し、来場者へ配布した。また、郷土料理に関する食育ゲームもオリジナルで作成し、子どもから大人まで楽しく学ぶことができるイベントを開催した。
農林水産省の第4次食育推進基本計画(令和3年~令和7年)に掲げられている目標の1つに、「地域や家庭で受け継がれてきた伝統的な料理や作法等を継承し、伝えている国民を増やす」という項目がある。2013年には和食がユネスコ無形文化遺産に登録され、世界的に「和食」の人気が高まる一方、伝統的な料理や作法を受け継ぐ機会が減り、日本の伝統的な料理や作法は失われつつある。
これまで私たちが板倉キャンパスにて行ってきた「若い世代における郷土料理に関する普及・啓発活動」では、群馬県と共同で栄養教諭や管理栄養士を目指す学生、若手教員の助手を中心に、群馬県内の他大学の学生や板倉町在住の方と交流し、群馬県のおもてなし料理の「すき焼き」調理講習会や「郷土料理パンフレット」の作成を経年的に行ってきた。今年度からは、キャンパスが埼玉県・朝霞市に移転し、埼玉県や朝霞市民の方々との交流を拡げ、本学が「郷土料理」を普及するアンテナとなることを目指し活動を行った。まず学生達自身が、自分たちの地元の地域の特徴や郷土料理に関することを調べ、実際に自分で郷土料理を作成し、パンフレットにまとめた。このパンフレット作成により、自身や仲間の郷土料理や地域的特徴に関する知識を深めることができた。11月のイベントの際には、来場者の方々にもご自身の郷土料理を黒板のマップに書いていただくコーナーや、近隣のスーパーやアンテナショップで購入できる郷土料理・名産品を集めた展示を設置し、学生が来場者の方々と交流を行った。その際には、学生自身がパンフレット作成の際に調べたことや郷土料理を実際に作ってみた体験話なども交えて交流することができ、学生や来場者の郷土料理に対する興味・関心を高めることができた。
また本イベントでは郷土料理に関する展示のほかに、食に関する子ども向けのクイズや来場者に普段の食事内容を食品サンプルを用いて選んでもらい、栄養価計算後、その評価について栄養相談を行うブースも設けた。栄養教諭や管理栄養士を目指す学生として、ライフステージや生活環境が異なる方へのアプローチを学ぶ非常に良い経験となった。来場者の方も自身の食生活を見直すきっかけづくりになり、栄養学的・文化的な側面から食に関する関心を高めることができた。
伝統的な食文化である日本の郷土料理をこれからも継承していくためには、これからの日本を担っていく世代である学生へのアプローチが不可欠である。本活動を通して学生が主体的な学びを得ることでき、社会活動・貢献に対する意識変容や意欲の向上につながり、非常に効果的な活動となった。今後も活動を継続してくことで、本学から地域へ、日本の伝統料理や文化を継承していくための懸け橋となっていきたい。