藪長 千乃 (国際学部)
本研修では、令和6年能登半島地震で被災した石川県志賀町の稗造地区におけるお祭りの継続に向けた支援と、同志賀町富来地区の住民の生活とその変化、なりわいへの影響と今後の展望、被災した住民の生活上の困難などを聞き取り、外部者の視点から将来についての提言を検討することを主な目的として調査及び活動を実施した。
これまでの能登ゼミの活動では、高齢化が進み消滅が危惧される集落の伝統文化(祭り)の維持や手伝いを通じた地域住民との交流や関係人口、集落が持つ文化や自然などを見直すことによる新たな価値の創出を図ってきた。今年度は震災による被災という偶発的な状況の中で、災害ボランティア活動、さらに地域の住民の方たちの被災経験と展望の聞取り、復興活動への協力を行うことを通じて、一部の集落にとどまらず対象地域を拡大し、また活動内容も地域社会・産業における復興への取り組みへの貢献活動へと発展させることができた。学生たちは事前学習として志賀町復興計画やその他の活動に関係する文献の読み込みも行っており、学生自身の知識の獲得が今後の活動の発展に寄与することが期待できる。さらに、振り返りを行い、各班での学びを共有するとともに、報告書を作成しており、成果を目に見える形にし、今後の活動に生かすことが可能である。
若い学生は、外部者の視点から偏見やしがらみなく地域の実情を捉えなおすことができること、新たな発想をもたらせることへの地元の住民の方々からの期待は大きい。しかし、高齢化・産業衰退・経済停滞に加えて震災による被害が加わり地元の方々が大きな打撃を受けた中で、学生の持つ明るい雰囲気やエネルギー溢れる活動が地域へ活気をもたらすことは得難くその影響力は大きいであろう。また、今年度の能登ゼミでは6班に分かれて様々な活動をしたことにより、活動の幅が広がり、今後も新たな地域・内容での貢献へ発展する可能性が期待できる。
なお、能登半島は、アクセスに課題があり、利用できる交通機関が限定的であるだけでなく交通費も高額になる。地域活性化活動支援事業は交通費がネックとなって参加できない学生の参加を促進することができ、地域への貢献活動に参加できる学生の活動を増やすことができることは、対象地域だけでなく学生の機会格差を是正にもつながる。
震災発生後、過去の能登ゼミに参加した学生や教員が個人的に震災ボランティアに駆け付けたことで、地元である志賀町から滞在施設の無償供与を受けることができるようになった。このため、2024年9月には、本学と志賀町の包括的な協力に関する協定を締結することができた。また、今年度の活動は、富来商工会、志賀町支え合いセンター(災害ボランティアセンター)、稗造地域地保地区、同鵜野屋地区の皆様との協力で実施した。