世代間交流型健康体操教室による地域在宅高齢者に対する健康づくり活動

代表教員:神野 宏司

ライフデザイン学部健康スポーツ学科

■活動内容

 2020年10月から2021年1月に計7回、地域在宅高齢者のグループと連携し17名の高齢者に対して非対面オンラインでの健康体操教室を開催した。各回の開催に先立ち教員と学生がストレッチ体操、レジスタンス体操、音楽に合わせて行う簡単なリズム体操、および歌いながら左右の手足を非対称に動かす認知機能刺激プログラムを考案した。その上で動画DVD、解説資料を作成し配布した。各回実施時には学生がオンライン上で説明および見本を行い、同時に説明する学生以外の学生は参加者の実施の様子を分担して確認し、体操間に設けたグループワークタイムにプログラムを習得できるよう個別にサポートした。

 

■活動の成果概要

 地域の健康を考える上で近年ソーシャルサポート、ソーシャルネットワークの影響、重要性を指摘する研究が多くみられる。大都市圏に居住する高齢者は地方在住者と比較してソーシャルサポート、ソーシャルネットワーク機能が弱い傾向にあることから孤立化・閉じこもりの危険性が高く、対策の必要性が強く言われている。本学は社会福祉、地域保健の分野で大きな実績を有している。この都市部における高齢者の孤立化、閉じこもり対策という課題は地域貢献を重要な課題と位置づける本学,本学部の教員ならびに学生にとって貢献できるテーマと考えられる。そのような背景を踏まえ、本活動は健康の維持に関心が集まりやすい体操を高齢者と親和性の高い、孫世代に当たる学生とともに実践することを通じてセルフケアの技術の習得を促し、さらに参加者が自身の近隣住民に対して啓発を行うことを通じて地域でのソーシャルサポート、ネットワークの構築を計る意図を有しており、本学のこれまでの実績に新たな貢献が出来るものと考える。
 活動の一つは参加者自身の健康に役立つ健康課題をテーマとして知識の提供である。二つ目に日常生活でできる解決策の提示とそれを習得する機会の提供である。本活動において教員と学生が各回、レジスタンストレーニング、ストレッチングおよび音楽に合わせながら左右非対称に手足を動かす体操プログラムを指導および習得を補助するプログラムを行った。参加者は平均年齢70歳という高齢者であることを理解しつつ、習得過程での失敗を明るい雰囲気で和ませることを学習している本学部の学生との交流でこそ行えうる講座の形式であったといえよう。本年度の活動は新型コロナウイルス感染症の流行拡大への対応策としてオンラインを通じた指導を試みた。ただ、一方向での指導では体操の要点が伝わったかを確認できないこと、またソーシャルネットワークを促したいという意図を満たせないことから双方向性オンライン形式をとり、一回90分の教室時間中に学生と参加者が小グループに分かれて要点の理解や質問への回答、雑談をするための時間を3-5回設定した。小グループのメンバーは当日冒頭の顔合わせを設定し、その日はグループメンバーを固定すること、学生はアドバイス情報をトヨネットエースに共有することによりアドバイスに一貫性をもたせるように配慮した。また、毎回参加者に対して指導する学生、フォローした学生に対する評価コメントをアンケートフォームに書き込むよう依頼した。その書込を学生と振り返りに活用した。参加者からは「外出、集合形式で実施した場合に新型コロナウイルスに対する感染が不安を伴う昨今、体を動かしたいものの何をどうして良いかわからないという中で良い機会となった」、「学生と会話すると元気が出る」と好評を得たと同時に「オンラインなら開催場所までの距離、移動時間を気にすることなく参加できることがわかった」、「オンラインでの企画を自分たちでも考えたい」と、オンラインでの活動に新たな可能性を感じたという意見が寄せられた。今回の試みは今春より朝霞キャンパスから赤羽台キャンパスへ移転する本学科にとっても示唆を得られた活動であったと感じている。それでもお互いの顔が見える関係、人となりを感じることができる関係の構築が鍵となることを感じる機会ともなった。
 一般的に大都市圏に在住する住民は人間関係の構築に苦慮している事が報告されている。と同時に近隣に新たな友人関係を求めていることが示唆されている。ここに学生が間に入り仲を取り持つことで参加者同士の会話や交流が促進されたといえる。同時に参加する高齢者から見ると指導される相手が学生であることから孫と接しているような親しみやすさとともに自身の失敗に恥ずかしさを感じずに参加できるという学生ならではの利点に対する肯定的な反応が得られた。また、学生にとっても家族以外の年齢の離れた人とのコミュニケーションを通じて専門的な内容を分かりやすく説明するための説明方法に工夫が必要という振り返りが見られ、社会人基礎力の育成を図れる貴重な経験となったといえる。
 本年度は朝霞市役所の担当課が新型コロナウイルス対応のために参加を得ることはできなかったが、参加者が市役所担当者の本活動の様子を知らせていただいている。今後、新型コロナウイルスの流行が収まった後にはオンラインと対面の両方向から市民活動による地域住民の健康づくり活動に参画していきたいと考えている。