能登ゼミ(地域住民と学生による伝統文化の協働評価) 

代表教員

藪長 千乃 (国際学部)

活動概要

8月31日から9月3日にかけて、学生・教員35名が、石川県羽咋郡志賀町鵜野屋・地保集落にて、秋祭りの神輿の奉納行事の実施協力、大学の森の保全活動、伝統芸能(富来神幸太鼓)の維持活動、祭礼などの伝統文化の勉強会を実施した。協定校の豪カーティン大学からも教員・学生が参加した。

成果

能登半島山間部に位置する石川県羽咋郡志賀町鵜野屋集落及び地保集落は、高齢化が進み、最年少住民が60歳代、現在生活をしている住民が合わせて数十名ほどの超限界集落である。2010年代まで両集落の神社(白山神社、白髭神社)において毎年秋まつりとして神輿の奉納が行われてきたが、神輿を担ぐだけでなく、祭礼のための幟やしめ縄の設置などの準備や片付けに必要な住民が足りないため、祭りが中断していた。本学の学生が訪問し、祭りの準備や片付け、神輿の担ぎ手となることで、2015年以降祭りが復活し、以降はパンデミックの間を除いて継続して実施され、本学教員と学生が支援してきた。これを通じて消滅危機にある伝統文化の維持に貢献している。

今年は、中断していたお祭りの復活を打診したところ、地元住民の方々はパンデミックへの警戒や加齢等のために当初消極的であったが、学生が意欲的であることを聞いて、実施に前向きになってくださった。本年も担当教員が2度にわたり訪問して事前調整を行い、順調にお祭りを開催することができた。また、お祭り前日には、学生たちは鵜野屋集落に位置する大学の森と呼んでいる手入れが不十分な里山林に入り、下草刈りなどの手入れを行うことで保全に協力したり、現地の研修センターをお借りして伝統芸能や祭礼についての勉強会を行ったりすることを通じて、地元の風習への理解や集落維持への貢献をしていることも、現地集落の方々との信頼関係の基盤となっている。さらに、学生たちは伝統芸能の富来神幸太鼓の子どもチームの練習を見学し、ごく簡単な太鼓のたたき方を子どもたちから教わり、交流することで、独特の太鼓のリズムや掛け声を修得し、お祭り当日の宴で一緒に太鼓をたたくことができ、地元の住民と一種の連帯感を醸成する経験をしている。また、地元住民も、東京から世代が離れた学生が数十人規模で毎年やってくることで、地元の伝統文化への誇りを再認識している。

本事業は3泊4日であるが、祭りの準備や片づけを含めて、このような一連の活動が、互いの尊重と強固な信頼関係の維持につながっている。また、お祭り支援で、当該地域へ強い関心を持った学生は、さらに研修の機会を活用して能登での調査等(フィールド調査実習)を実施しており、学生の学習機会を提供することにもつながっている。

なお、東京から現地へ移動するには、通常航空機、新幹線を使用しなくてはいけないことから、移動が高額になる。そこで、費用を抑えるために、学生たちは公民館に布団を借りて寝泊りしている。それでもなお、布団の費用などがかさむ。さらに現地での移動のための公共交通機関が利用困難であることから、学生たちにとってバスの借り上げや交通費の補助は必須である。