香川県さぬき市とアイゼンシュタット市(オーストリア)との姉妹都市交流協力

代表教員:田中 雅敏

法学部法律学科

 

■活動内容

 本年度の活動は、2019年度(採択1年目)の活動を発展させるものであった。香川県さぬき市は、唯一、海外都市としてオーストリア共和国・アイゼンシュタット市と姉妹都市協定を結んでいるが、その姉妹都市交流は数年来途絶えている。
 2019年度は、活動初年度ということで、さぬき市の姉妹都市交流史や市民レベルの国際交流の意識の水準などを知るところから始めた。その上で、オーストリアを題材にした親子イベント(オーストリアのクリスマス飾りの工作)を実施した。2020年度は、前回好評だった親子イベントを再度実施する計画を立てていたが、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症拡大のため、現地入りをすることが叶わなかった。
 そこで、さぬき市と協議し、現地入りをせずにさぬき市民にオーストリアのことを伝え、異文化理解のきっかけを提供できる取り組みとして、さぬき市が運営しているコミュニティ放送(ケーブルテレビ)用の番組を制作し、それを放送してもらうこととした。
 具体的な内容は後述するが、クリスマス文化を切り口にオーストリアを紹介するため、放送時期は2020年11月と決め、ゼミ生6名と教員1名で、2020年9月から10月にかけて制作した。

 

■活動の成果概要

 ①地方自治体は、国際交流にあてられる職員の数が限られており、さぬき市も例外ではない。昨年度(採択1年目)に引き続き、さぬき市の国際交流事業の実績になるような取り組みをすることを目的とした。
 当初は、昨年度も好評だった、小学生をターゲットとしたクリスマスリースの親子工作イベントを予定していたが、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症が拡大し、現地入りすることは叶わなかった。そこで、遠隔でも可能な活動として、さぬき市コミュニティ放送(SCN)を通じた発信をすることとした。
 番組は2本制作した。1本目は、さぬき市がオーストリアのアイゼンシュタット市と姉妹都市であることを紹介する5分間番組である。これは、昨年度の「姉妹都市パネル展示」(於:さぬき市役所本庁舎ホール)を発展させたものである。2本目は、オーストリアのクリスマスを題材とし、キリスト教の精神が根づくオーストリアの文化を紹介する15分番組である。異文化理解のきっかけを提供することを目的とし、同時に、当初実施予定だったクリスマスリース工作の手順を映像で紹介するコーナーも設けた。
 番組は、以下の日程で放送された(いずれも、2020年、さぬきデジタル12CH)。
1. 「教えて!オーストリア!」(5分番組)
11月17日(火) ・18日(水)・19日(木)・20日(金) 一日6回リピート放送
2. 「オーストリアのクリスマス〜姉妹都市アイゼンシュタットに思いを馳せて」(15分番組)
11月22日(日) ・23日(月) ・24日(火) ・25日(水) ・26日(木) ・27日(金) ・28日(土) 一日3回リピート放送
 本取組は、割ける職員の少ないさぬき市の国際交流を、大学の知と大学生の力をもって、遠隔からサポートするものであり、本学の社会貢献活動に資するものであった。
 ②当ゼミは、ゼミ生のほとんどが法学部主催のドイツ研修参加者であり、ドイツ語圏に生活した経験を持つ、オーストリア研究のゼミである。ドイツやオーストリアの祝日のほとんどがキリスト教由来であること、大聖堂・教会をはじめとする街並みを構成する建造物にキリスト教の精神が満ちていること、個の多様性を重んじて社会が生き生きとしている様子などを実体験として感じている。そのような自分たちの経験をもとに、さぬき市民に対して異文化理解のヒントを提示し、また自分の住む市の国際交流にさらに関心を深めてもらうことを狙いとし、番組を制作した。番組は、プロが作るような本格的なものではないが、プレゼンテーションソフトを用いてスライドを作成し、そこにナレーションを別撮りして当てはめる作業、あるいは、クリスマスリース工作のパートでは、実際に工作の一部始終を実演した動画を撮るなど、班にわかれて担当した。
 後日、さぬき市役所の担当者から、市民の声(感想)を届けていただいたので、紹介する:
「いろんなコーナーがあって楽しい」「飾りを作ってみたくなった」「オーストリアに行きたくなった」「秘書課にあった花器はオーストリアのものだったんだ。知らなかった!」「見ました!学生が制作したとのこと凄いですね」「オーストリアの世界遺産や、世界で住みやすい街とか、サウンドオブミュージックのロケ地だったことを初めて知りました」「去年の工作も楽しかった。オーストリアに行きたくなった!」
 まだほんの数歩ではあるが、国際交流への意識の高まりの萌芽を感じることができた。
 ③今年度は、大学の教室(大学が指定する登校日のみ)や甫水会館内のスペース等をお借りして、必要最低限の人数に限定し、かつこまめな消毒や常時換気などに留意しつつ、動画の撮影や音声の収録を行った。動画の編集は、ゼミ生が自宅で作業した。動画編集ソフトはゼミで用意した。番組で使用するBGMの権利処理関係については、SCNの職員さんからレクチャーを受け、また本学法学部の知的財産法が専門の専任教員からも助言をもらい、公共放送で番組を発信するときに必要な法的知識も得ることができた。大学の社会貢献活動に資する、健全で、かつ、若い柔軟な発想で、活動ができたと自負している。