矢祭町内川地区と箕輪ゼミの連携による地域復興・活性化の取組

代表教員:箕輪 允智

法学部企業法学科

■活動内容

当初計画では、「本活動は、いわゆるPBL(Project Based Learning)の形を取ったゼミ活動である。Projectとして取り組んでいくべき課題は、「福島県矢祭町という人口減少に直面した地域で、数年間放置された小学校の廃校について周辺住民、及び町全体の合意を得つつ地域の活性化に資するように活用すべき策はないか。またその策が実現するように周辺住民と自治体行政と連携して取り組んでいく」ということです。そのために、①地域の自治体行政、地域住民と連携して調査活動(事前調査、現地調査含む)を行い、②調査をもとに廃校活用プランを構想し、③自分たちで作ったプランの実施に直接参加していくこととなる。
 これらの過程の中で、廃校活用をはじめとする様々な地域活性化に向けた全国各地の事例を学習していくと共に、具体的にプランを構想・実施していく過程の中で直面するであろう、合意形成や費用ねん出の難しさをはじめとする様々な課題に立ち向かっていく困難さや葛藤を、地域住民と地域の自治体行政の職員と共に考え、体感していきたい。
 廃校の利活用という課題は当該地域で課題となっているものでもあるが、全国的に人口減少が進む中で公共施設の再編が必要となる中で、同様の課題を有するところも少なくない。そのような課題である中で、学生が参画することで一定の成果ないし進捗をみることができるのであれば、当該地域のみならず、社会的なインパクトともなると考えられる。
 2019年度は他機関(福島県「大学生等による地域創生推進事業」)支援も活用し、計3回の訪問と白山祭出店による地域産品PRなどの活動を行い、4つの廃校活用案の提案を地域に対し行った。また、活動の中では地域の見どころスポットの探索や、清掃活動、台風19号の影響により詰まってしまった用水路の土砂の除去作業などを実施し、地域からも一定の評価と信頼を得られたものと考えている。
 2020年度はさらに発展的な活動として、地域づくりに具体的に資する活動を行っていきたいと考えている。具体的には、廃校利用案のブラッシュアップ、内川小学校周辺地域での植樹・植花活動を通して地域の見どころづくり、内川地域を拠点とした見どころ探索ルートマップづくり、アクティビティ開発などである。廃校のリフォーム・リノベーションの実施については多額の資金を必要とするため、箕輪ゼミの活動だけで解決するのが難しい。一方で、活動実績を積み重ね地域における信頼を高めていくことが地域内での合意形成を進めていくことや、国・県などの補助事業が利用できる可能性といったものは、いつ生じるかわからないという側面もある。事前に十分な準備として様々案を構想していたり、実績となる活動を積み重ねていくことが、チャンスが発生した場合にいち早く効果的な取り組みができるようにしていくためにも重要であり、2020年度はそのような意味でも重要な意味を持つ活動になってくると考えている。」
としていたが、コロナ禍で現地訪問を行うことができなかった。そこで現地訪問をすることができるようになった場合、廃校校舎などを利用して、すぐに現地活動に取り組むことができるよう、前期はその活動提案の作成、後期は提案に基づいて現実的に実施できるように、動画を作成しての活動案内、及び受け入れ先とその動画を一緒にみることで、今後の活動展開を考えることとした。

■活動の成果概要

 本年度は新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、現地での活動を行うことができなかった。その中でもやれることを考えた結果、前期は「新型コロナ感染症拡大が収束した後に、学校や地域資源を用いて地域の子どもたち等と一緒に活動できること」をテーマに学生を4班に分け、それぞれの提案を作成し、提案内容について受け入れ先の矢祭町、やまつり清流の里協議会の方々に対してオンラインで発表・交流会を実施し、その提案内容について議論を深めた。
後期は前期の提案内容をもとに、それらを具体化させるため、各班で2本(計8)本、実演も踏まえてを作成し、オンラインでの現地との交流、映像の提供を行うこととした。動画の作成にあたっては、今後交流を想定している矢祭町内の小学校児童でも理解でき、廃校拠点としたアクティビティ実施の参考になるようにしていくことを想定した。作成した動画の主なテーマは次の通りである。 
・砂金採り実演動画
・生物・草等の標本づくり
・地元の木材を想定した椅子づくり
・地元の名産品であるゆずの加工品作成(芳香剤、ケーキ、ゆずドリンク)
・魚つかみ取り・処理
・飯盒炊飯、包丁を使わないバーベキュー準備
・枯山水づくり
・地元の木材を想定した木のおもちゃ作り
 現地との交流は、それぞれの班が1本目、2本目を完成させた際に2度Webexを用いて意見交換・地域との交流を行った。意見交換においては、現地の状況を踏まえたアドバイスや実現可能性、改善点などについて議論した。
 現地の矢祭町においては日常的に通学可能な範囲に大学等の高等教育機関が無く、高校も町内に無いということもあり、高校進学の際に福島市などで下宿通学する高校生も一定層いるとのことある。すなわち、大学生の年代にあたる層の人口が抜けてしまっている状態であり、また、小学生や中学生の目下の成長モデルとなる存在が地域に居ないというものである。このような状況で、大学生と小学生等が触れ合って一緒に活動できるようなことが地域からも要望されており、それらの活動を行うことは、いわゆる条件不利地域における社会貢献活動であるとも考えられ、学生の参画が非常に効果的であるものと言えるだろう。今後も、当初の活動目的・対象であった廃校校舎を拠点として利用し、地域との交流を深めていくことが矢祭町での地域社会への貢献、中山間地域、条件不利地域のことを実感としてなかなか得ることができない学生にとっての有効な体験学習になると考えられる。