看取りを支える関係者の連携・調整
1.職業
訪問看護師
2.業務分類
在宅でのターミナルケア
3.施設内看護の年数
4.訪問看護の年数
5.経験内容
60代の女性患者Iさんは、5年前に乳がんと診断され、左乳房全摘出手術を受けた。その後、化学療法を施行していたが、その翌年に腰椎と肺の転移が見つかった。さらに、転倒により骨転移部の左大腿骨を骨折し、ギブスを装着した。その頃、左片麻痺が出現し、脳転移が見つかった。全身が衰弱し、本人・家族の強い希望で退院した。病楝スタッフは「退院後2~3日で死亡する可能性が大きい」との見解で、病院から医師が出向いての確認は難しいので、死亡間際に救急搬送し、病院で死亡確認する方針であった。
しかし、訪問看護師が主治医だけでなく、病楝スタッフ、緩和ケア認定看護師、整形外科看護師長など病院スタッフとの連携が十分に取れたことで、患者の在宅療養に変化が見られた。すなわち、在宅での看取りの体制が十分整ったのである。訪問看護師がこの時点で、在宅での看取りを提案すると、家族もそれに同意した。患者本人は、意識レベルが低かったため、彼女から直接意見を聞くことはできなかったが、かねてから延命治療を行わないように家族に頼んでいた。
こうした連携によって、これまで往診に出かけたことのなかった医師も往診するようになり、病院に入院している間、役割が無くておろおろしていた夫も、家で夜間、隣に寝て様子を見るという役割を果たせたことで、悲嘆からの回復も順調であった。
<まとめ>
このケースは、家族や医療関係者との連携の重要性を指摘している。それは、たとえ患者の意識レベルが低くても、しっかりと関係者とコミュニケーションをとることにより、本人の希望通りの最期を迎えさせることができることを物語っている。また、これにより、家族のグリーフケアにも有効な効果が得られることも指摘している。
6.出所
財団法人 日本訪問看護振興財団(監修)、角田直枝(編集)『訪問看護のための事例と解説から学ぶ在宅終末期ケア』中央法規、2008年1月、p.175-187.