訪問看護におけるキュアとケア(2)

投稿日: Dec 06, 2017 6:45:33 AM

看護師は複雑です。医学的な専門知識に基づいて、利用者のアセスメントをしながらも、当事者の個人的実存、すなわちその人の気持ちやおかれた状況も理解できてしまいます。

医学的な利益(キュア)のために、その人が望まない医療を無理強いしてもよいのか。「畳の上で死にたい」と語っていた患者の呼吸が止まったとき、家族が救急者を呼ぼうとしたらどうすればよいのか。

あるいは、家族の希望と本人の希望が相容れなかったり、糖尿病患者が「アンパンを食べたい!」と言い張ったりするなど、医学的に見て非合理的な行為を本人がつよく希望したりした場合にも、看護師の職責と個人的信条とが、内面的な葛藤を繰り広げてしまいます。

そのような「キュアとケア」、医療的な視点と、気持ちを汲み取る(当事者の心情に根差した)ケアとの媒介者であるということが、訪問看護師の特徴ではないでしょうか。

看護という営みの専門性がそこにあり、同時に、訪問看護師のジレンマのなかに、病院医療と在宅医療・ケアとの根本的な発想の違いやギャップが、つよく表れているように思われるのです。

もちろん、みなさまは必ずしも看護関係者、あるいは、それを目指す人たちとは限らないでしょう。けれども、キュアとケア、医療と生活(人生)、生命を守るSOL(Sanctity of Life、いのちの尊さ)と、本人の意思(希望、ときめき)を尊重するQOLという、生命倫理の枠組みをなすキーワードを、想像力を働かせながら身体全体で感じ取っていくためには、看護師のジレンマに目を向けることが一番の早道だと考えています。