未成年者に対する守秘義務(2)

投稿日: Jul 08, 2021 12:20:47 PM

そもそもなぜ看護師にとって、患者の秘密やプライバシーを守ることが大事なのでしょうか。大学の授業で看護学生に問いかけると、出てくる答えは、つぎの三つに集約されます。

1)患者と患者の信頼関係を築く上で不可欠だから。ナイチンゲールの言うように、看護師として、患者に信頼される存在になりたいと思う。

2)「秘密」を守ることによって、患者のプライバシーや自律性を守ることができるから。人に知られたくないことは、誰にでもある。

3)「秘密」が守られれば、患者病状や自分の悩みを率直に打ち明けられるため、診断がより正確になり、的確な医療や質の高いケアを受けることができるから。特に未成年者の場合、保護者に対しても守秘を貫けば、思春期の患者(性感染症や妊娠など)が来院しやすくなる。

どの答えも正解で、実際に看護師の守秘義務の法的・倫理的根拠となっています。

患者との信頼関係があることによって、より正確な診断や的確な医療が可能になり、その結果、本人の医学的利益にもつながります。

このケースでも、CさんがFちゃんからの信頼を得ていなかったら、おそらく本人から妊娠の可能性があると打ち明けてくれることはなかったでしょう。

さて、みなさんがCさんの立場だったら、母親にどのように答えるでしょうか。

Fちゃんとの約束を守って、妊娠の可能性については触れないか、母親にその秘密を明かすか。この時点でどちらかを選ぶのはとても困難です。

「実習生の私からはお話しできませんので」とその場をごまかすことはできるかもしれませんが、Fちゃんは「誰にも言わないで」と言っています。けれど、せめてみなさんの実習指導者には報告しなければと思いますよね。

できれば母親に「少し娘さんと二人でお話しさせていただけませんか」と断ったうえで、Fちゃんと二人きりで話す時間を取って、不安な気持ちにていねいに傾聴しながら、妊娠に関する身体的リスクや、精神的な面からも母親の支えや医療のサポートが必要であることを伝えて、母親や医療者に妊娠の可能性を打ち明けてくれるように、説得することが必要でしょう。