生命倫理学とは
投稿日: Nov 19, 2017 1:38:13 PM
QOLは、生命倫理学のキーワードであるというお話をしました。
生命倫理学って何ですか?という声が聞こえてきそうですね。
大学で倫理学の講義をしていると、学生から「倫理と心理は同じですよね?」と言われることが度々あります(もちろん全く別のものです)。なかには、私の授業の科目名を「心倫学」と書いてくる学生もいて、「!?」と思ってしまいます。
生命倫理学とは、生と死という人間にかんする限りなく深い問題に、倫理学(哲学)の観点からアプローチする学問分野のことです。
21世紀に入り、医学そのものが大きな変貌を遂げつつあるなかで、医療技術や生命操作と伝統的な価値観、人間観との間に生じる多くの難問について、具体的な判断の枠組みを身に着けることが求められています。「技術が無限に進歩するとき、人間性が失われないか」、「人間の自由の限界を見極めることができるか」。
新たな技術が登場したとき、必ずしも、そこに倫理の取扱説明書がついているわけではありません。むしろ、技術に倫理が追いついていかないという状況を、私たちはたびたび目にしています。安楽死、出生前診断と人工妊娠中絶、遺伝子診断や臓器移植など、現代に生きる私たちが直面する倫理問題について、技術と人間性の調和という視点から議論を重ねていくのが生命倫理学です。
このHP上でのメインテーマとなるのは、在宅倫理のジレンマです。在宅倫理という言葉になじみがなければ、在宅ケアの倫理問題と言ってもよいでしょう。在宅での医療やケアは、最先端の医療技術が問題になる場面とは、かなり様相が異なります。
在宅の倫理では、脳死判定も、臓器移植も、生殖補助医療技術も、直接の話題にはなりません。病院などの医療機関で行われる高度な技術についての倫理問題ではなく、私たちの生活する場で、日常的に起こる問題が、そのまま倫理問題になることが多いのです。
そして、それを象徴的に表現する言葉がQOL(生活の質)になります。