訪問看護におけるキュアとケア(1)

投稿日: Nov 23, 2017 8:19:24 AM

本HPで「在宅ケア」を考えていくとき、医学的視点からのケアのアプローチに主眼をおくことになります。すなわち、看護職によるケアの場面が多く登場します。

「ケア」という考え方やこれに基づいた倫理は、これまで主に病院医療のなかにいる看護師たちからつよく主張されてきたものでした。その「ケア」が、在宅では、よりクローズアップされ、さらに看護師自身が主体となって、自覚的にコミットする理想として掲げられています。

「ケア」はつねに、対概念として使われることもある「キュア」を意識しています。「キュア」、つまり、医学的知識にもとづいた病気の「治療」という視点です。

「病気を診て人を見ない」という、病院医療の(あるいは医師の)ゆき過ぎた「キュア」を、相手の人格や個別のニーズに応えるという「ケア」の視点でカバーすることが、医療機関での看護職の役割であるという議論が、看護の倫理から出されてきました。

けれども、訪問看護では、看護師が、患者の状態を診る唯一の医療専門職となることもあります。病院では、医師が「キュア」を担ってくれていましたが、在宅でその役割を行うのは、主に看護師になります。つまり、「キュアもケアも」看護職の仕事になるのです。

在宅ケアには、医療的な視点がどうしても必要になります。看護師は、本人の希望や価値観を受け入れて生活を支えるケアの提供者であると同時に、医療専門職として、利用者の安全性を確保する責任や、それを果たす義務もあります(生命倫理では、無危害原則と言います)。

たとえば、血圧が不安定な人の入浴介助に訪問看護を入れずに、訪問介護がカバーしているケアプランを見たら、医療的な介入をする、つまり訪問看護の必要性を主張することが看護職の責務として求められます。そのときに、利用者本人から「お金がかかるから訪問看護は入れなくていい」と言われてしまうこともあります。