日常と死(1)

投稿日: Mar 29, 2019 9:29:14 AM

桜が咲き初め、わが家の玄関先につばめの鳴き声が聞こえてくるようになりました。私は春が大好きです。うららかな小春日和、窓越しの陽だまりのなかで、春の高揚感を身体いっぱいに感じながら、本を読みふけっていました。そういえば、ちょうどこんな時期に、京都でお花見をしたなぁと、大学院の友人のことを懐かしく思い出して、久しぶりに連絡を取ってみようかとぼんやり考えていました。

その日の夕方、ポストに届いた一枚の葉書に衝撃を受けました。他ならぬその友人の思いがけない訃報でした。それも連絡の取れなくなった2年近く前のことだったのです。一瞬にして、慣れ親しんだいつもの世界が、私にとって遠く隔たった、よそよそしいものであるかのように変わってしまいました。私がてっきり彼女と共有していると思い込んでいたこの世界が、彼女がいなくても、悠然としていつものように四季を繰り返していることが、何だかとてもこわくなってしまいました。