本プロジェクトの目的
投稿日: Dec 16, 2015 7:42:40 AM
本研究では、在宅ケアに特徴的な医療の意思決定の問題に着目し、これまで「病気」の「治療」を主な目的とする施設内看護を念頭において論じられてきた看護倫理の議論を、必ずしも「治療」や一分一秒の「延命」を第一優先としない在宅ケアの場面に照らし合わせ、その有効性を検討することにより、在宅ケア固有の倫理的課題の構造を、具体的事例の収集をふまえながら明らかにすることを目標としています。
看護倫理で用いられてきた「倫理原則」(自律、善行、無危害、正義、誠実)による事例へのアプローチを、「限られた生命予後」のもと「豊かに生き果たす」ことを第一優先とした在宅ケアの意思決定の場面で捉え直し、訪問看護の実践的指針となりうる視点を確立することが、本研究の最終的な到達目標となります。
施設内看護において、看護職が直面するモラル・ジレンマについては、サラ・フライ、パトリシア・ベナー、ヘルガ・クーゼなど著名な研究者らを筆頭に、国内外に精力的な研究が散見されますが、訪問看護における看護倫理のあり方については、「尊厳」「意思決定の尊重」「アドボカシー」等のキーワードが示唆されているにとどまり、訪問看護師の思い悩む倫理的ジレンマに、具体的、実践的に踏み込んだ倫理的アプローチはほとんど見られません。
訪問看護が直面するモラル・ジレンマの源泉として、在宅ケア固有の意思決定の問題があげられます。
以下、在宅ケアに特徴的な意思決定の問題について、いくつかの観点から、倫理的ジレンマを指摘してみたいと思います。