独居の末期患者のための地域ケアシステムの活用と連携
1.職業
訪問看護師
2.業務分類
在宅でのターミナルケア
3.施設内看護の年数
4.訪問看護の年数
5.経験内容
乳がんを患う60歳代の患者は、がんが脳、肝臓、リンパ節、骨に転移し、末期状態にあった。遠方の病院での治療を続けてきたが、本人の強い希望で、自宅近くの医院へ通院し、週1回抗がん剤治療を受けている。
健忘、話しにくさ、転倒のリスクがあり、徐々に一人での生活が困難になっていった。20歳代の二人の子供は独立し、遠方に住んでいる。患者は、家庭の事情により、生活保護を受けていた。
長女は、休日の時は帰省するが、それ以外は患者は独居であり、生活に不安を感じている。しかし、患者本人は、在宅での治療を希望しており、二人の子供も本人の意思を尊重したいと考えていた。
長男は「できるだけ家で看取りたい。母が元気なころから三人で話し合っていました」と迷いのない表情で話していた。
看護師は、在宅療養を続けたいという患者と家族の意思を聞いたため、患者本人と実妹と相談したうえで、福祉事務所へ行き、生活保護担当者と患者の現状の報告と介護サービスの提供について相談した。これにより、患者は適切な時に適切なサポートを得られて、穏やかな最期を迎えることができた。
<まとめ>
患者の在宅ターミナルでは、適切な時期に適切な専門職のサポートを受けることが必要であるが、そのコーディネーターとしての訪問看護師の役割が重要である。日ごろから地域の在宅システムを理解し、相談のできる関係をつくっておくことが必要である。
6.出所
財団法人日本訪問看護振興財団監修、角田直枝編集『訪問看護のための事例と解説から学ぶ在宅終末期ケア』(中央法規)2008年1月、p.106-121.