老衰死における消極的安楽死の是非
1.職業
家族
2.業務分類
在宅でのターミナルケア
3.施設内看護の年数
4.訪問看護の年数
5.経験内容
85歳になる男性患者は肺に疾患があるものの、容体が安定したため退院となった。自宅に帰ることは、患者本人の願いでもあった。近くに住む娘が実家に毎日通い、父の面倒を見ていた。彼女は、医療知識や介護の経験がないために看護に不安を抱えながら、ヘルパーの助けを借りて父を世話していた。
患者は意識が明瞭で、自分の意思を伝えられるコンピテンスがあった。しかし、食べ物をうまく呑み込めず、患者は退院後、10キロも体重を落としてしまった。
患者の衰弱が著しくなった時、家族は医師を呼び、延命治療を差し控えてもらうようにお願いした。医師は、たとえ呼吸が苦しくなっても救急車を呼ばないように家族に念を押した。そして、往診から数時間後、患者は息を引き取った。
無理な延命はしないで最期を看取った娘は、精一杯看護してきた充実感を感じながらも、本当にこれ(延命治療の拒否)でよかったのかと自問自答した。
延命治療の差し控えが患者本人から出されたものか、あるいは、家族の要望であったのかは、映像を見る限りでは明らかではない。しかし、患者は、最期までコンピテンスがあったことから、延命治療の差し控えは、患者本人の希望であったように思われる。患者が老衰で亡くなる場合、家族は延命治療の是非を問われることになる。たとえ患者本人が延命治療の差し控えを望んでいても、実際にその場になってみると、患者の消極的安楽死(延命治療の差し控え・拒否)を受け入れるのは、家族にとってそう容易なことではない。
6.出所
「NHKスペシャル 家で親を看取る その時あなたは」2013年4月21日放送