経口栄養に関するジレンマ
1.職業
医師
2.業務分類
在宅でのターミナルケア
3.施設内看護の年数
4.訪問看護の年数
5.経験内容
重度の認知症を患う女性患者(75歳)は、誤えん性肺炎(細菌が唾液や胃液と共に肺に流れ込んで生じる肺炎)で入院していた。退院後は、夫が自宅で妻を看病していたが、退院の三日後、妻は食べ物を飲み込む力が衰えているために、誤えん性肺炎を再発していた。
医師は、患者にむりに食事をさせないよう指示していた。だが、夫は、妻が食事がとれないために急速に衰弱していく姿をただ黙って見ていることに耐えられず、玉子豆腐を食べさせていた。もちろん、夫は、このように食事を与えることは、医師から禁じられており、患者の肺炎を悪化させることを理解していた。しかし、妻に少しでも長く生きてほしいとの思いから食事を与えていた。
夫は、妻に食事を与えれば、命を延ばせるかもしれないが、肺炎を悪化させることになる。他方、食事を与えなければ、肺炎を悪化させないが、死期が早まる、というジレンマに苦しんでいた。
在宅ケアにおいては、患者の家族の協力が不可欠であるため、担当医は、その夫の行動を批判することはしなかった。
6.出所
「NHKクローズアップ現代 もう病院で死ねない」2015年5月29日放送
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3205.html
https://www.youtube.com/watch?v=9wloYShnp8s(YouTube動画)