ワイヤレス給電の現状

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何年か前に「電源コードが要らない時代が来る」という記事を読んだことがある.ところで,マイクロチップは,内部に電池を持っていない.その代わりとして,内部の小さいアンテナ(コイル)で,読み取り器(リーダー)から発信される電波を受けて電力を発生させ,ICチップが起動し,記憶されているデータを発信する仕組みとなっている.少々次元が異なるが,それと同じ概念を利用した電化製品版がついに実現するのかと思った.ところが,その後話題に上らないので,インターネットで関連情報を調べると,非接触電力伝送 - Wikipediaに次のように書かれている.

ワイヤレス電源の実用化

2009年(平成21年)5月25日,総務省はワイヤレス電源の実用化の検討として,ほかの家電製品や人体への影響などの調査を経た上で電波の周波数帯割り当て,電波の干渉などの実用化に向けた課題への検討に入ると共に,7月に発表される電波政策懇談会の報告書内容に盛り込み,2015年の実用化を目指している.

2005年あたりから,実用化試験の兆しが見えてきたようである.数メールの距離での電球点灯実験,薄型テレビへのワイヤレス給電システムなどである.実験の段階では,無線給電は有線給電にくらべるとロスが大きい.家庭用の比較的消費電力の小さい電化製品の場合でも,電力をワイヤレスで供給できるようになるのはずっと先の話といっても過言ではない.

一方,電磁誘導で蓄電池に電気を蓄えるハイブリッド型のワイヤレス給電は,電動歯ブラシや携帯電話の充電で実用化されているが,大型の実用化実験も始まっている.

国土交通省は2008年(平成20年)2月6日に下記のアナウンスをしている.

羽田空港で非接触給電ハイブリッドバスが運行します

~ 国内で初めての運行となります ~

羽田空港にて報道関係者試乗会も開催します

この非接触給電ハイブリッド自動車は、国土交通省が平成14年度から実施している「次世代低公害車開発・実用化促進プロジェクト」において交通安全環境研究所を中核的研究機関として産官学連携で開発・実用化を進めているものである.停車中に,路面に設置した給電装置から電磁誘導により非接触で車両側のリチウムイオンバッテリーに急速充電する.

2009年には,東京都交通局が同様のバスの営業運行を実施すると発表した.都内で路線バスとして実証走行試験を行うもので,運行系統は都営バス「都05系統(晴海埠頭~東京駅丸の内南口)」である.[2009/04/08]

最近では,2012年7月6日に次の記事がある.

日本電業工作とボルボテクノロジー・ジャパンが電気トラック用ワイヤレス給電用の10kWクラス高効率レクテナの試作に成功

環境にやさしい 電気トラック・バスの普及に不可欠なワイヤレス給電の実用化を目指し,走行のための 電力を車両の外部からワイヤレスで給電する事を可能にする,高効率レクテナの試作に成功しました. 実験では4m離れた場所へ10kWクラスの給電をおこないレクテナ効率80%,既存従来比で2倍近い効率を実現できた.

注)レクテナは,アンテナ(antenna)と整流回路(rectifier)が一体となった電磁波を直流の電力に変換するデバイスのことである.

これらの資料には,外部から充電することにより,電気駆動の割合を増やし,排出ガス低減性能・燃費性能が格段に向上すると書かれている.一見魅力的だが,元になる電力が火力である限り排出ガス低減にはつながらないような気がするのは私だけだろうか.

民生機器についてもワイヤレス給電の文字をキャッチフレーズとした商品が出始めた.

ソニー、ワイヤレス給電やTransferJetなど対応の多機能デジカメを開発 ...

現代人は無数の家電製品を使用するために網の目のように張り巡らされた電気配線の中で生活している.電源コードがなければ,もっと整理整頓できてすっきり生きられるような気がする.しかし,ワイヤレス給電の人体への影響の解明もこれからである.電化製品を充電式にしてコードレス化を計った方が得策かもしれない.そのためには高性能蓄電池(注)の開発が急務である.

注)石油の備蓄のような概念に近い蓄電池の開発

資料

磁界共鳴型を使った高効率な「ワイヤレス給電システム」を開発 - Sony

(2012/8/1)