電力買取保留騒動

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九州電力に始まり,全国に広まった騒動である.

その理由は,最小需要量よりも太陽光や風力の設備容量が大きくなりそうになったためであると言われているが,いまひとつ分かりにくいので調べてみた.

発電総量と消費総量は釣り合っている必要がある.もし,酷暑等でエアコンの使用が増え,電力消費量が多くなり,発電量が足りない状況になれば,電圧や周波数の低下が起こる.反対に,発電量が過 剰であれば,周波数や電圧の上昇を来す.

電気で動くあらゆる設備はあらかじめ定められた周波数および電圧が供給されていることを前提としているので,周波数や電圧が変化すると正しく動作せず,ひどい場合は故障することもある.周波数が60サイクルであることを利用した(簡易)電気時計やタイマーは狂ってしまう.パソコン類は,6%程度の電圧変動(101±6V)に対しては,その変化を補正して一定の電圧(12V)を供給する「定電圧回路」を用いて機器心臓部を保護しているが,大きな変動には追従できず,誤動作を起したり,再起動することもある.

戦後,電力事情が窮迫した際,電圧を下げて送電されたことがあった.「ろうそく送電」と呼ばれ,60ワットの電球が20~30ワット程度の明るさに低下した.クーラーや冷蔵庫等は存在せず.電気は照明やラジオ程度に使われていた時代の話である.現在は,多くの機器が電力駆動であり,おまけに,ほとんどが(マイクロ)コンピュータで制御されている,そのような事態になったら社会全体がパニック状態になることは容易に想像できる.

注)終戦前後の電力事情には,「ろうそく送電」の際は50V程度だったと書かれている.

次図は,産総研(産業技術総合研究所)が公開している資料に掲載されている「ソーラー発電の1日の変化」を示す図である(下図左).時間帯,天候で大きく変化する出力を全体としては変動のないフラットにするには,即座に対応できる発電所が必要である.そのためには,需要に応じて柔軟に出力量を変えることができる天然ガスによる火力発電がもっとも適している.単純にいえば,下図(右)に示すように,晴天時でもブルー部分を別の電力で補っているということである.雨天の場合は,太陽光発電(空色部分)の占める割合は僅かであり,ほとんどを火力発電に頼ることになる.

電圧や周波数の監視は,給電指令所が行っているが,小規模な一般住宅の太陽光発電設備までは面倒をみきれない.その代わりに「ソーラーパネル周辺の電柱を流れる電気の電圧を上昇させてしまう可能性があるときは売電をやめる」という簡単な仕組み(電圧上昇抑制装置)が備えられている.もし多くの家庭が,売電目的のため太陽光発電設備を設置したら,頻繁に電圧上昇抑制機能が働き,まったく売電できない事態が生じることになる.具体的には,電力会社の系統の電圧は,95-107Vの間で変動している.売電量が増え上限の107Vに達すると,ソーラー側の電圧を107V以上にしないかぎり送電線へ電力を送り出すことはできない.しかし,そのような行為は法律で禁止されているため,売電できなくなるわけである.

周辺の家庭が次々と太陽光発電システムを導入して自家発電+売電を始めると,電気を買ってくれる者が居なくなり,売電収入を得ることができず,初期投資費用の回収ができなくなってしまうことは可能性の低い遠い先のこととして指摘されていた.

共倒れの可能性

売電収入は,4KWで半分売電した場合,月8千円,10KWで全量売電した場合,月3万円とのことである.10KWの場合,パネル40枚を15坪程度敷き詰める必要がある(コンビニの屋根に設置されている規模).設置に要した費用を取り戻すにはかなりの時間が必要である.ついでに,250枚を設置できる土地があれば標準的な年金額は稼ぐことができるそうである.

先日(10月21日),川内原発再稼働で話題になっている九州電力は小口の設備については買取を一部再開した.大口のメガサーラーはどうなるのだろう.余った電力は蓄電すればよいではないかと言う人が多いが,現代の科学技術をもってしても容易なことではない.間接的な蓄電設備として可能性があるのは,余剰電力でダムに水を汲み上げて貯水し,必要な時に発電する揚水発電だけである.「儲け仕事であること」を隠蔽しながら,「ソーラー発電が日本を救う,投資しても損はしない」と言った有名人や指導層の意見が聞きたい.

政治家,官僚の勉強不足に起因する典型的な失敗施策例といえそうである.

参考資料

風力発電にも難題

(2014.10.25)