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2006年、イギリス、監督:マイケル・アプテッド、舞台となる地域:イギリス
讃美歌「アメイジング・グレイス」は、元奴隷船長のジョン・ニュートンによって作成された。本作は、18世紀後半にイギリスの議会で奴隷廃止運動のため奔 走した実在の人物で、ニュートンの友人であるウィルバーフォースの半生を描いた作品である。宗教的なテーマは中心ではないが、「アメイジング・グレイス (素晴らしき恩寵)」がそのタイトルに冠されている通り、信仰心の問題も物語の背景となっている。
1962年、イギリス、監督:サー・デヴィッド・リー、舞台となる地域:アラビア半島、イギリス
実在したイギリス陸軍将校ロレンスを主人公とした、オスマン帝国からのアラブ独立闘争を描いた歴史映画。ロレンスはムハンマド直系(シャリーフ)の一家の王子らアラブ人とともに戦いオスマン帝国から自由を勝ち取るが、その後汎アラブ主義を掲げるアラブ人と袂を分かつことになる。
2010年、イギリス/オーストラリア、監督:トム・フーパー、舞台となる地域:イギリス
兄のエドワード8世が退位したことを受け、ジョージ6世が英国国王に即位することとなった。彼は吃音に悩み、スピーチを苦手としていたが、言語療法士の指導のもとで治療を始め、ナチスドイツとの開戦のスピーチに挑むこととなる。英国国教会を国教とするイギリスでは、国王は国教会の首長でもある。離婚歴のある女性との結婚を認めていない国教会の立場が、エドワード8世の退位と深く関係している。
1998年、イギリス、監督:シェカール・カプール、舞台となる地域:イギリス
英国国教会の基盤が確立した時期のイギリス女王エリザベスとその周囲の人間の愛憎劇。映画はエリザベスの女王即位から始まる。国力が弱まっていた中、ローマ教会やスコットランドからの攻撃に対してどのようにエリザベスが戦ったか。カトリックとプロテスタントとの争いが背景に描かれる。
2013年、イギリス/イタリア、監督:ウベルト・パゾリーニ、舞台となる地域:イギリス
都会で孤独な死を迎えた身寄りのない人々の尊厳に向き合う作品。市役所の民生係ジョンは、孤独死した人々の親類縁者を探し出し、自分で弔辞を書いて葬儀を執り行うなど誠実に職務に取り組んできたが、丁寧すぎる仕事ぶりを批判され、事業の合理化のためと解雇を告げられる。今後は、遺体を流れ作業で回収、火葬し、遺骨をまとめて共同墓地に放り込むことに。映画は、ジョンが手掛けた最後の仕事を丁寧に描きながら、死と弔いを通じてつながり合う人間模様を浮き彫りにする。
1982年、イギリス/インド、監督:リチャード・アッテンボロー、舞台となる地域:インド、パキスタン、バングラデシュ、イギリス
インド独立の父、ガンジーの半生を描いた作品。南アフリカで弁護士活動をしていたガンジーは差別に遭った。その経験から暴力を一切用いない運動をしようと決意。インドに帰ったガンジーは独立運動を率い成果を挙げていくも、暴力を起こした時点で運動を中止する。インド独立を旗印にそれまで統率がとれていたヒンドゥー教徒とイスラム教徒は次第に分離・対立していく。第2次世界大戦後にインドは独立するも、ガンジーはヒンドゥー至上主義者に暗殺され、その生涯を閉じた。ガンジーの理想と独立を望む人々の思いとの葛藤に注目している。
2004年、アメリカ、監督:アーサー・アラン・シーデルマン、舞台となる地域:イギリス
著名なチャールズ・ディケンズの小説を原作としたミュージカル。守銭奴のように生きるスクルージが、過去、現在、未来の精霊にいざなわれて自分の姿を見つ めなおすというその物語は、長年にわたって多くの人々に親しまれてきた。教会でのミサに加えて、クリスマスが家族団欒の大切さを感じる行事になっていく上 で、同作品の果たした役割は大きい。
1994年、イギリス、監督:アントニア・バード、舞台となる地域:イギリス
リバプールに着任した熱意あふれる若き司祭の物語。家族からの性的暴力に苦しむ女学生の告解を受けながらも、内容を他言してはならないという司祭の務め上、彼女を助けることができないこと。また、バーで出会った男性と関係をもってしまったことなど、現地で生じるさまざまな問題にぶつかりながら、一人の人間としてのあり方と、聖職者としての役割の間で揺れる司祭の葛藤が描かれる。
2002年、フランス、監督:(11ヵ国を代表する11人の監督)、舞台となる地域:アメリカ、イギリス、日本、中東周辺
2001年9月11日の同時多発テロをテーマに、11人の著名な映画監督の「11分9秒」の作品をつなげたオムニバス映画。米国、英国、日本、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、メキシコ、フランス、イスラエル、イラン、インド、エジプト、ブルキナファソというそれぞれの国の監督が、独自の視点から9.11を描く。9.11直後、多くのメディアでは米国政府の主張が大きく取り上げられたが、世界中ではそれとは異なる多様な解釈、反応、思いが存在していたことがわかる。
1999年、フランス/アメリカ、監督:リュック・ベッソン、舞台となる地域:フランス、イギリス
フランス北部がイングランドに占領されていた百年戦争の中、神の声を聞き、フランスを救うために立ち上がった少女ジャンヌ・ダルクの運命を描く。奇跡的な勝利をおさめ、オルレアンを解放したがジャンヌ・ダルクであるが、イングランドによって宗教裁判にかけられ、異端として火刑に処される。ジャンヌ・ダルクの生涯は、これまで複数の映画や小説で扱われてきたテーマであるが、本作では自らの残虐な行いに苦悩する一人の人間としてジャンヌが描かれている。
2006年、アメリカ、監督:ロン・ハワード、舞台となる地域:イギリス、フランス
宗教学者のラングドン教授と暗号解読官のソフィーが、絵画や彫刻等に隠されたメッセージを手掛かりに、連続殺人事件の謎を解いていく。事件の裏には、イエスがマグダラのマリアと結婚し、子どもをもうけたという教会を揺るがす大スキャンダルが隠されていた。本作の原作となった小説の前書きには、「この小説は真実に基づいている」との記述があり、そのため欧米のキリスト教会では本作に対して反感を抱く人も多かった。
2010年、アメリカ、監督:クリント・イーストウッド、舞台となる地域:アメリカ、フランス、イギリス、タイ
自らの持つ不思議な能力によってかつては霊能者として活躍していながらも、その能力ゆえに苦悶する青年。津波に襲われ死後の世界を垣間見たフランス人女性 ジャーナリスト。双子の兄を事故で失って以来、兄との再会を求めてやまない少年。死や死後の世界という問題に向き合う3人の物語が次第に交差していく様子 を描く。現代人にとって、死や死後世界がどのような意味をもっているのか考える機会を与えてくれる。
2002年、イギリス、監督:グリンダ・チャーダ、舞台となる地域:イギリス
ロンドンの敬虔なシク教家庭に生まれたジェスは、サッカーをこよなく愛する活発な少女。映画では、親の勧めに従いシク教徒の男性と婚約をし、結婚の準備に余念がない姉と、自らの可能性を追い求めるジェスの姿が対照的に描かれる。保守的な母親の発言、振る舞いや、姉の婚約から結婚までの準備の様子から、シク教徒の生活の様子や思考様式、婚約式や結婚式の儀礼などを詳しく知ることができる。また、イギリスに同化してゆく移民第二世代、第三世代の若者たちの友人同士でのふるまいと、親世代の前でのふるまいのギャップなども興味深い。監督のグリンダ・チャーダはインド系イギリス人で、主演のパーミンダ・ナーグラはシク教徒だという。
1999年、イギリス/パキスタン、監督: ダミアン・オドネル、舞台となる地域:イギリス、パキスタン
イギリスのマンチェスター近郊の町に暮らすジョージは、イギリス人の妻をもつパキスタン系移民である。イギリスで生まれ育った彼の息子たちは、パキスタンの伝統を押しつけ、さらに勝手に縁談の話をまとめようとする父に強く反発する。母国パキスタンの伝統(イスラーム的なものもその一部)を守ろうとするジョージと息子たちとの対立、またジョージとイギリス人の妻との対立という家族の物語をコミカルに描きながら、イギリスの移民社会の現状や移民と同化の問題についても考えさせられる映画である。
1981年、イギリス、監督:ヒュー・ハドソン、舞台となる地域:イギリス
1924年のパリ・オリンピックの陸上競技で勝利をおさめた二人の英国人の物語。一人はユダヤ人のハロルドで、英国内での差別に打ち勝つために走ることを選ぶ。もう一人は熱心なキリスト教徒のエリックで、走ることが神の恩寵を讃えることと考えている。エリックはオリンピックの予選が安息日である日曜日と知って出場を辞退するが、国家への忠誠心とキリスト教信仰のあいだで揺れ動く彼の葛藤が描かれる。
2006年、アメリカ、監督:ラリー・チャールズ、舞台となる地域:カザフスタン、アメリカ、イギリス
カザフスタンのテレビレポーターが、アメリカで繰り広げる珍道中をドキュメンタリー風に描いた作品。マイノリティに対する差別ネタや下品なジョークが続き、評価が分かれる映画である。特にユダヤ人に対する過激なジョークが繰り広げられる。反ユダヤ主義的発言は許されないという風潮を風刺したものであるともいえるが、米国のユダヤ系団体からは差別的であるとして憂慮の声明が出された。
2006年、アイルランド/イギリス/フランス、監督:ケン・ローチ、舞台となる地域:アイルランド、イギリス
北アイルランド紛争はカトリック(アイルランド)とプロテスタント(イギリス)の間の対立という側面を強くもっている。主人公のアイルランドの青年は、イギリス兵士たちに抵抗する人々の姿に心うたれアイルランド独立のための闘いへと身を投じていく。1921年に停戦、講和条約が結ばれるが、今度はこの条約をめぐってアイルランド内部で対立が起こり、主人公はかつての仲間との争いを余儀なくされる。
1975年、イギリス、監督:テリー・ギリアム、テリー・ジョーンズ、舞台となる地域:イギリス
キリスト教文化の下で生まれたアーサー王伝説を、コメディ集団であるモンティ・パイソンがパロディ映画化した作品。アーサー王が聖杯を探すために妖精や魔法使いの手助けを受けて旅をするというストーリーは伝説に沿っているが、馬に乗る代わりに従者が足音をココナッツの実をこすり合わせて出しているなど、どこかおかしなものになっていおり、とりわけ「黒騎士」「キラー・ラビット」「聖なる手榴弾」のシーンは有名。それでもキリスト教の終末論的集団である鞭打ち苦行団のシーンがあるなど、中世ヨーロッパの雰囲気は再現されている。後にミュージカル化もされたが、その際には映画ライフ・オブ・ブライアンの劇中歌が用いられている。