イタリア

イタリア

インフェルノ

2016年、アメリカ、監督:ロン・ハワード、舞台となる地域:イタリア(フィレンツェ・ヴェネツィア)、トルコ(イスタンブール)

ダン・ブラウンの小説『インフェルノ』を原作とする本作では、ダンテの「神曲」地獄篇を基に描かれたボッティチェリの「地獄の見取り図」を題材として話が展開する。生化学者ゾブリストは、人類の半数を滅ぼしてしまうウイルスの開発に成功し、増えすぎた人口を減らすために大量殺人を計画する。宗教学者のラングドン教授は、ウイルスの拡散を阻止するため、ゾブリストによって与えられた手がかりである、「地獄の見取り図」の中に隠された暗号を解き明かしながら、そのありかを突き止めていく。映画には、中心に据えられているダンテの「神曲」(地獄篇)のみならず、フィレンツェやヴェネチアの名だたる大聖堂、宗教画、またトルコのアヤ・ソフィアなども登場し、宗教建築や宗教美術に関する知識を深めることもできる。


ザ・ライト

2011年、アメリカ、監督:ミカエル・ハフストローム、舞台となる地域:イタリア

実在のアメリカのエクソシストをモデルにした作品。若き神学者マイケルは一流のエクソシストと名高いルーカス神父のもとで悪魔祓いの手伝いをすることとな るが、彼を待ち受けていたのは想像を超える恐るべき出来事であった。1973年の映画『エクソシスト』以来、カトリックにはエクソシストという悪魔祓いを 行う神父がいることが広く知られるようになったが、近年その需要は増加しているともいわれている。


ジーザス・クライスト・スーパースター

1973年、アメリカ、監督:舞台となる地域:イタリアイスラエル

イエスの受難をロック調で演出したブロードウェイミュージカルを映画化した作品。登場人物たちは現代的な衣装を身にまとい、イエスも「神の子」としてより はむしろ民衆の「スーパースター」として描かれている。それ以外にも、イエスを裏切るユダの心情が詳細に描かれていることなどが本作に特徴的な点としてあ げられる。ミュージカルは劇団四季によって日本語でも上映されている。ポップな「スーパースター」としてのイエス像は日本人にも受け入れやすいものなのか もしれない。


食べて、祈って、恋をして

2010年、アメリカ、監督:ライアン・マーフィー、舞台となる地域:アメリカイタリアインドインドネシア

35歳で人生をリセットするために旅に出た一人のアメリカ人女性が主人公である。ローマでは食を満喫し、インドでは瞑想をし、インドネシアでは人生を左右 するような占い師と出会う。世界を股にかけたグローバル時代の自分探しが描かれているといえるが、そこに登場する「外国」はあまりにステレオタイプ的であ るといえよう。瞑想や占い師といったものに代表される「神秘的」な東洋というイメージが未だに根強いものであることがわかる。


天使と悪魔

2009年、アメリカ、監督: ロン・ハワード 、舞台となる地域:イタリアバチカン、スイス

『ダ・ヴィンチ・コード』の主人公でもあるロバート・ラングドンが、核エネルギー以上の力をもつとされる反物質をめぐって引き起こされた殺人事件の謎を解 明していく。ヴァチカンでは次の教皇を決めるコンクラーベが開催されていたが、有力候補の枢機卿たちも、この反物質をめぐる陰謀に巻き込まれ次々と殺害さ れていく。秘密結社やカトリック等の宗教的モチーフをちりばめたエンターテイメント作品である。


バチカンで逢いましょう

2012年、ドイツ、監督:トミー・ヴィガント、舞台となる地域:イタリアバチカン

熱心なカトリックのドイツ人女性が主人公。罪を告白するためローマ教皇への謁見を切望する彼女が、住んでいたカナダの田舎からバチカンを目指す。一人ローマへ辿り着いた彼女にはさまざまな出会いがおとずれ、その出会いを通して生きる喜びを見つけていく。思いがけない形で教皇との謁見が叶うまでの彼女の道のりがコメディタッチで描かれる。


2人のローマ教皇

2019年、イギリス/アメリカ/イタリア/アルゼンチン、監督:フェルナンド・メイレレス、舞台となる地域:イタリアアルゼンチン

2013年、当時のローマ教皇ベネディクト16世が、1415年のグレゴリウス12世以来、初めて本人の自由意志により教皇職を辞任し、史上初のアメリカ大陸出身教皇としてベルゴリオ枢機卿が新教皇に就任するという事件があった。この歴史的交代劇を、実話をベースにフィクションも交えて描いた映画である。当時のカトリック教会は、神父による児童性的虐待や、内部機密文書漏洩(バチ・リークス)など、その体制を揺るがす様々な問題の渦中にいた。ただし、この映画で保守派のベネディクトと進歩派のベルゴリオという対照的な二人が織りなす対話は、政治的問題よりは彼らの信仰の内面に迫っており、現代における教会や聖職者、宗教のあり方を深く考えさせられるようになっている。


眠れる美女

2012年、イタリア/フランス、監督:マルコ・ベロッキオ、舞台となる地域:イタリア

映画は、2009年におきた尊厳死をめぐる国民的議論に着想を得たもの。当時、17年間植物状態にある娘の延命措置の停止を求めた父親をカトリック教会や政治家が糾弾したことから、国論を二分する激論が巻き起こった。映画では、「生命に対する罪」として尊厳死を禁じるカトリック教会が絶大な影響を与える社会の姿が描かれる。


薔薇の名前

1984年、フランス/イタリア/西ドイツ、監督:ジャン=ジャック・アノー、舞台となる地域:イタリア

山上のベネディクト修道院を訪れていたフランシスコ修道会のウィリアムと修道士見習いのアドソは、修道院で発生した謎の連続殺人事件の解明を依頼される。ウィリアムは、事件の鍵が修道院の中の閉ざされた図書館にあると考えるが、教皇派の異端審問官は、元異端の修道士と村の娘の魔術のせいであるとし、彼らの処刑を命じる。作品中では、中世における修道院の生活や異端をめぐる対応などをうかがうことができる。


ブラザー・サン シスター・ムーン

1972年、イタリア/イギリス、監督: フランコ・ゼフィレッリ、舞台となる地域:イタリアバチカン

中世イタリアにおける最も著名なカトリックの聖人「アッシジのフランチェスコ」(フランシスコ修道会を興したことでも知られる)の半生を描く。イタリア・アッシジの裕福な家に生まれた彼は、十字軍の遠征から戻ったある日、教会にある木製のイエス像の目が開いたことに気づき、何かに目覚める。身につけているものすら捨てて生まれ変わったことを宣言した彼は、家族のもとを離れ、サン・ダミアノ教会で少数の弟子たちと信仰生活を始める。地上の権威を否定し、清貧を説く彼の言葉には、ローマ教皇さえも心を動かされたのであった。


楽園からの旅人

2011年、イタリア、監督:エルマンノ・オルミ、舞台となる地域:イタリア

映画の舞台は、人々に無用とされ取り壊しが始まったイタリアの教会。50年間教会を守ってきた老司祭が悲嘆にくれるところへ、アフリカからの不法移民が逃げ込んできた。神父は「慈善を施すのが危険なら、その時こそ慈善を施すべき時」と彼らを受け入れる。十字架まで撤去された教会で、カトリックの典礼を知らない移民たちと向き合い、信仰の本義に返ろうとする老司祭の姿を描いた寓話的作品。


ローマ法王の休日

2011年、イタリア/フランス、監督:ナンニ・モレッティ、舞台となる地域:バチカンイタリア

人間味あふれるカトリック聖職者の姿を描いたモレッティ監督のコメディ映画。ローマ教皇の死後、コンクラーベ(次期教皇を選出する選挙) が行われるが、候補となる枢機卿は、みな「どうか私が選ばれませんように」と祈っている。ようやく選ばれたメルヴィル枢機卿は重圧に耐えかね、自分には無理と叫びローマの町に逃げ出してしまう。町をさまよい、「休日」を楽しみながらも、自分の人生は何だったのかと内省する枢機卿。権威的なバチカンへの皮肉とともに、人間の弱さを愛すべきものとして描いた人間賛歌になっている。