1967年、イタリア、監督:ピエル・パオロ・パゾリーニ、舞台となる地域:ギリシャ、エジプト
現代のイタリアで、とある夫婦に息子が生まれる。母親は息子を可愛がるが、父親は自分の息子が妻の愛を奪いとるだろうという強い予感を抱く。舞台は一転して古代ギリシャに移る。荒野に置き去りにされた幼い赤子が拾われ、神からの授かりものとしてコリントス王のポリュボスと王妃のメロペーにより実の息子のように育てられる。オイディプスと名付けられ成長した青年は、自分が王夫妻の実子でないことを疑い、真実を得ようとアポロンの神殿に行くが、そこで「実の父親を殺し母親と情を通じるだろう」という不吉な予言を授かり、コリントスに戻れず放浪することになる。導かれるようにテーバイに向かうと、途中でオイディプスを物乞いと罵り道を譲るよう命令する横柄な男と出会い、男を従者共々殺してしまう。たどり着いたテーバイでは暗黒の国からやってきたスフィンクスが人々を迫害していたため、オイディプスがこれを倒すと、テーバイの王となり先王の妃であったイオカステと結ばれる。しかし、オイディプスがテーバイに来てから凶作や疫病などの災難が続き、原因を探るため神託を受けることになる。古代ギリシアの詩人ソポクレスによる、ギリシャ神話を題材にした悲劇『オイディプス王』を下敷きとするが、古代ギリシャの物語を現代の描写で挟み、我々に不気味なリアリティを突きつける構造となっていることがこの映画の特徴である。
2009年、スペイン、監督:アレハンドロ・アメナーバル、舞台となる地域:エジプト
現在エジプトはイスラーム圏であるが、古代にはキリスト教が一大拠点を築いた地であった。その中心がアレクサンドリアで、古代より学術が栄えたことで知ら れる。4世紀末、この地に実在していた女性天文学者ヒュパティアの生涯を描いたのが本作である。古代の神々への信仰の弾圧やユダヤ教徒とキリスト教徒の間 の激しい対立が、すぐれた美貌と知性を有していた彼女の運命に悲劇的な結末をもたらす。
2014年、アメリカ、監督:リドリー・スコット、舞台となる地域:エジプト
旧約聖書(ヘブライ語聖書)の「出エジプト記」に記されたモーゼの生涯をベースにし、最新のVFX技術を駆使して作成されたアドベンチャー作品。エジプト王家で養子として育てられたモーゼと兄弟同然に育てられたエジプト王ラムセスとの確執を物語の軸に据え、勇ましい闘将としてモーゼを描くなど、「出エジプト記」を題材にし独自の視点で構成されている。
2007年、アメリカ、監督:ロブ・ライナー、舞台となる地域:アメリカ、エジプト、インド
病院でたまたま同室となった自動車整備工のカーターと、病院経営者のエドワード。二人はともに余命いくばくもないことを宣告される。彼らは棺桶に入るまで にやりたいことのリストを作成し、次々と実行していく。信仰をもち家庭を大切にするカーターと俗的な楽しみを追及する富豪のエドワードという対照的な二人 の対話には、現代アメリカ人の信仰や成功、倫理に関する考え方が垣間見られる。
1997年、エジプト/フランス、監督:ユーセフ・シャヒーン、舞台となる地域:フランス、スペイン、エジプト
12世紀、イスラーム支配下のアンダルシアを舞台として、思想の自由を求めて闘った人々の物語。哲学者アベロエスの弟子となった主人公のもとに、聖典の重視、哲学批判、歌舞音曲の忌避を掲げる「セクト」による弾圧と洗脳の危機が迫る。彼は師の思想を守り抜くことが出来るのか。歌と踊りを交えたエジプト映画のもつ娯楽性を取り入れながら物語は展開していく。