5,読み取る力

【読みとる力】

この章では、3つめの「読みとる力」についてご説明します。

まず「読みとる」とはどういうことか。それは、下記のような流れになっています。

【文章を読む→意味をつかむ→全体の意味をつかむ】

こういう流れです。

通常の読解問題では、このように

意味を掴んだ後で問題に取り組むことになります。

そのような問題をすらすら解くためには、

「まず文章の内容をしっかりつかめていること」が大前提になります。

まれに、「内容をつかんでなくても問題を解く方法」というテクニックもありますが、

それらのテクニックでは本当の意味での

国語力は身に付かないと考えているため、採用しません。

勉強とは、点数をとるだけではなく、

読解力などの能力を鍛えるためでもあるからです。

さて、話を元に戻しますが、

【文章を読む→意味をつかむ→全体の意味をつかむ】

これができない子は、どうしてできないのでしょうか。

文章を読む→漢字が読めない子はここで脱落

意味をつかむ→言葉の意味を知らない子はここで脱落

全体をつかむ→長い文章を読み慣れていない子はここで脱落

これを、われわれのような大人の場合に当てはめて考えてみましょう。

例えば、ものすごく難解な哲学書を読む場合。

まず、難しい漢字が多くて苦労しますね。

次に、「なかんずく」「ないしは」「辟易する」などの難しい表現が多く苦労します。

最後に、書物は大抵、数百ページに渡っていますから、

著者の言いたいことを全体的にとらえなければなりません。

この3つの作業が難しいのです。

小中学生でも同じです。実際に指導してみるとわかりますが、

今の子ども達は言葉をほとんど知りません。

笑えない話ですが、このあいだファミリーレストランに行って

「お冷や下さい」とウェイトレスに頼んだら、

「お冷やって何ですか?」という答えが返ってきました。

また、テレビで「豚カツの肉は何の肉?」という問いに、

「鶏肉?」と真顔で答えた女子大生がいました。

「漢字をしっかり読めるようにする」ということについては、

1の「読む力」のところでお話ししましたが、

このように長い文章を読む場合でも漢字の読みは大切になってきます。

次に必要になってくるのは、言葉の意味を多く知ることです。

そのための勉強法は、低学年と高学年で違ってきます。

まずは高学年から。

高学年であれば、

1,本や教科書を読む

2,意味の分からない言葉が出てきたらノートにメモする

3,それらの意味を辞書で調べる

4,その言葉を使って短い文を作ってみる

5,時々ノートを見て復習する

この繰り返しが、シンプルですが有効です。

特に、4の短い文をつくるという練習はなかなか有効です。

例えば「関係」という言葉は、

意味を説明するよりも実際に使った方が意味が理解しやすいのです。

次に低学年の場合。まだ辞書は引けません。

やるべきことは2つだけです。

まず1つは、

「知らない言葉が出てきたら、お母さんか先生に聞きなさい」

と言ってあげること。

言葉の吸収率は、10歳までがかなり高くなっています。

辞書を引かなくても、耳から入るだけでも容易に覚えることができます。

そしてもう1つは、親御さんができるだけ多くの言葉で話すこと。

例えば急いで欲しいとき、「早くしなさい!」のワンパターンにせず、

「スピードアップしよう」「じんそくにやってね」「大至急、買ってきて」

のように、多彩な表現をするのです。

もしも意味が分からなければ、「だいしきゅうって何?」と聞いてくることでしょう。

そうしたら、あとは意味を教えてあげることです。

このようなちょっとした心がけ次第で国語力は変わってきます。

お子さんに語りかけるときは、色々な言葉を使ってあげてください。

こうした「勉強以外の勉強」の効果は意外と大きいのです。

さて、漢字が読めて、言葉の意味がわかれば、だいぶ楽になります。

あとは、「長文を読み切る力」です。これは一種の我慢強さと言えます。

マラソンの初心者がいきなり42,195kmを走れないのと同様に、

読書の経験のない人がいきなり長文を読むのは不可能です。

そこで、普段からの音読や読書が大切になってきます。

字を読み慣れているということが、ここでは重要なのです。

私は、塾生達にどんなに忙しくても1日5分は読書をするように指導しています。

すると不思議なことに、普段の別教科の学習でも、書いてあることの意味を

とらえようとするんですね。

また、何か文章を書くときでもよい表現をしたり、

表現を考えるようになるんですね。そんな変化があります。

慣れてくれば、全体の構成も考えるようになります。

全体をつかむ力というのは、大人になってから仕事をする上でも大きく役立ちます。

特に政治家や経営者など、人の上に立つ人には必須でしょう。

読書は、高学力のためには原則として欠かせない学習です。

具体的なポイントとしては、

・とにかく毎日読む。

・簡単なものを読む。難しいと読む気がなくなる。

・おもしろいと思えるものを読む。

こんなところです。本は買うのがベストですが、

図書館などで借りてきても良いでしょう。

ただしこれらは基本ですから、個々人の状況や性格に合わせて

いろいろと変えてもかまいません。

例えば、本は日曜日にゆっくり読みたいというのであれば、それでかまいません。

また、「どうしても読書は抵抗がある」と言う人は、

音読練習を地道に行うのがよいでしょう。

これらの学習を続ければ、読解力はついてきます。

もちろん、読解力というのはいろいろな要素がからみあってできているため、

これだけではまだ完全ではありませんが、プラスにはなります。

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