12,文章を書く力

【文章を書く力】

それではいよいよ、文章を書く力についてのお話です。

子ども達の多くは作文が嫌いです。それはなぜか。

字数制限があるからです。字数制限があるから、

いつまでたっても終わらなくて、嫌になってしまうのです。

今日のポイントはここです。字数。

まず、文章のレベルについては次の段階にわけられます。

1,文章を書くこと自体が苦手である。苦痛である。

2,文章はあまり面白くはないが、あるていどの分量が書ける。

3,レベルの高いよい文章をしっかり書くことができる。

レベル3のような子はめったにいません。

そして大多数を占めるのが、レベル1の人。

こういう子達の作文はたいてい、こんな感じです。

「遠足に行った。たけしくんたちといっしょにお弁当を食べた。

楽しかった。けどつかれた。」

これでもう、書くことがなくなってしまい、字数が埋まりません。

私が作文を指導するとき、最初の一歩はこれを教えます。

「詳しく書けばいい」

遠足で食べたお弁当には何が入っていたのか。

何か、いつものお弁当と違いはなかったか。

他の人のお弁当はどうだったか。

などなど、書くことは詳しくみていけば見つかるものです。

これにより、まず字数を稼げるようにします。

その具体例を示してみましょう。

「遠足に行った。たけしくんたちといっしょにお弁当を食べた。

楽しかった。けどつかれた。」

これを、より詳しく字数を稼ぐにはこうすればいいのです。

「10月2日、赤塚公園に遠足に行った。前の日の天気よほうでは、

雨がふるかもしれないと言っていたけど、ふらなくてよかった。

赤塚公園についたら、みんなでおにごっこをした。

いつもよりずーっと広い場所でできるので楽しい。

お昼にお弁当を食べた。いつも遠足の時とかには、

好きなミートボールが入っているのがうれしい。

たけしくんたちといっしょに食べた。たけしくんのお弁当も

とてもおいしそうだった。楽しかったけどつかれた。」

ハッキリ言って、読んでて面白い文章ではありません。

目立った表現があるわけでもなく、気持ちが細かく

書かれているというわけでもありません。

これは、レベル1からレベル2へのステップアップなのです。

お子さんが作文や感想文で困っているときには、

ひとまず字数を埋めるために、細かく書くように指示してください。

例えば人間の1日は、起きて食べて寝るだけではありません。

もっと詳しく言おうとすればいくらでも言えます。

それにより、字数を稼いで、作文ギライにしないことが

最初に求められることです。

作文の練習はなかなか個人では難しいですが、

定期的に文章を書く練習をするのなら、

まずはこのように詳しく書く練習をするとよいでしょう。

例えば、物について書く練習ができます。

「バナナ」だとたった3字ですが、

「昨日、お母さんが東武ストアで買ってきた6本178円の、

シュガースポットが出てきてそろそろ食べ頃なバナナ」とすれば

かなり詳しく述べることができるわけです。

このような練習を繰り返していくと、観察眼が身に付きます。

そして、文章を書くときには、もう片方のコツがあるのです。

どうしても、事実ばっかり書いていたら単なるあらすじ、記録文です。

だから、他人から見てるとまるで面白くもない。

作文を面白くする初歩のコツは、「気持ちも詳しく書くこと」です。

気持ちを書くなんて、当たり前のことと思われるかも知れませんが、

これが実際には難しいのです。

「面白かった」「楽しかった」「悲しかった」

こんな書き方では字数も埋まりませんし、気持ちも伝わりません。

そこで一歩レベルアップ!

「面白かったのでいい気分になった」

「面白くて、笑いまくった」

「面白くて、笑いが止まらなかった」

「楽しかったので、いい思い出になった」

「楽しくて、時間を忘れるほどだった」

「悲しくて泣きさけんだ」

「悲しかった。お腹が痛くなるほどだった」

このように、詳しく書けばだいぶよくなります。

比べてみましょう。

「あの芸人は面白いよ」

「あの芸人は面白くて、笑い続けて壊れるかと思ったよ」

下の方が本当に面白かったんだという気持ちが伝わりますよね?

そう、気持ちはただ書いただけじゃ中途半端なのです。

それにともなう「動作・結果」などを

つけくわえると断然よくなるのです。

こういった表現は、いきなり書くのは難しいかも知れません。

ですから日常会話の中で、親御さんができるだけ自分の気持ちを

細かく伝えたり、読書などで表現に触れておくことが大事です。

そして、ちょっとでもいい表現が書けたらそこを誉めましょう。

作文では、まず字数を稼ぐことから始めて

苦手意識をなくしていくことが第一で、

次に表現をちょっとずつ工夫していくことが大切です。

繰り返し述べてきていることですが、

書くと言うことは本当に難しいことなんです。

エネルギーが最も必要になる作業なのです。

だからこそ、書く練習をする前に、

読む練習はたっぷりとしておくことが大切です。

文章とは、今までに触れてきた言葉を組み合わせて

つくられるものですから、触れてきた言葉が多ければ多いほど、

よい文章が書けるようになるのです。

私の生徒で、ファンタジーものの小説が大好きな子がいましたが、

物語を書かせてみると、大人顔負けの表現で書きます。

触れてきた文章が体にしみついてる1つの例ですね。

さて、細かく書いていったり、詳しく書いていく練習を

ある程度つんだら、次はテクニックを覚えていくとよいでしょう。

例えば、「書き始めの工夫」です。

次の2つの文章を比べてみてください。

(1)

今日、ガラスを割ってしまった。

蹴ったボールが勢いよく飛んでいったからだ。

先生にひどく叱られて、さんざんな1日だった。

(2)

ガッシャーン!

タケシの蹴ったボールは勢いよくガラスをぶちやぶった。

コラー!という声とともに、太田先生がすっ飛んできた。

どうでしょうか?2の方が臨場感があるでしょう?

読み手としては、2の方が読んでて面白いです。

(1)はただの記録文に近い形。

(2)は、ドラマっぽい形です。

このような工夫をしていくと、書くのが楽しくなります。

テクニックとは言っても、ただ単に高い評価を

得るためだけのテクニックではないのです。

楽しく書けるようになるテクニックもまた大事なのです。

ただしこれは、作文の中級者のテクニックです。

初心者の場合は、詳しく書く練習をしばらく続けてから実行してください。

ここまで、作文の上達法について説明して参りましたが、

さらに、文章力や理解力をアップさせる練習方法を紹介します。

主に、小4~中3くらいが対象です。

(小1~小3のうちは音読練習で活字に慣れておいてください)

まず、適度なレベルの文章を用意してください。

教科書や問題集でもかまいません。

適度なレベルかどうかは次のポイントで判断してください。

・読めない漢字がほとんどないこと

・意味の分からない言葉がほとんどないこと

・文章の内容がだいたいわかること

長さは、そうですね、200字から400字くらいでしょうか。

これも人それぞれなので、お子さんのレベルにあわせて

苦痛を伴わない程度の長さがよいでしょう。

では、ここから練習方法です。

「文章を読み、その内容を60~80字程度にまとめる」

ただ、これだけです。しかしこの作業は、

しっかり内容を読み込めていること(理解力)と、

短いことばで表現すること(要約力)の2つが磨かれます。

できるだけ自分の言葉で、短く単純に書ければマルです。

この練習の時には、多少字が汚かったりしても、

ひらがなばかり使っていても注意しない方がよいでしょう。

あくまで、内容をきちんとまとめられているかどうかを

評価すればよいのです。

この練習を繰り返していくと、文章を読んだとき、

それを簡単にまとめる習慣がつきます。

これは地味ですが以外と大事なことなのです。

この力はが役立つのは、国語の時だけではありません。

数学でも理科でも社会でも英語でも役立ちます。

たいてい、学校の教科書の説明や、

問題文というのは長ったらしいことが多いのです。

校長先生の話が長いというのも昔からの定番です。

あまり長いと、何を言っているのかがわかりにくくなります。

実はこのメルマガで文章を書くときも、わかりやすくなるように

できるだけ短く、また一つの文章が長くならないように

心がけています。

世の中の全ての文章がわかりやすければ楽なのですが、

実際には長い文章に向き合わなければなりません。

そこで、要約力が大事になってくるのです。

「結局、何が言いたいのか?」

「この中で覚えることは何なのか?」

この2つがサクッとわかる人は優秀です。

どの科目の教科書を読んでいても、

何を覚えればいいのかがすぐにわかる。

勉強のしかたが分からない子というのは、

この要約力がないせいかもしれません。

そして、長い文章を読むことに嫌気が差して

「勉強なんてキライだー」ということになってしまいます。

音読で文章を読むことに慣れる。

漢字の読みかたと、意味を覚える。

言葉の意味を覚える。

ここまでは下準備です。これがある程度できてきたら、

要約する練習をしてみましょう。

この「要約力」もコンフーの一つであり、

社会に出てから大いに役立つ力です。

上司の言いたいことをすぐに理解できる力。

問題の原因を一目見てわかる力。

きっと、重宝されることでしょう。

ぜひ、要約の練習を気長に続けてみてください。

さて、これまで文章をまとめる練習についてお話ししてきました。

最後に、指導のポイントを記しておきます。

1,練習の方法

・文章はどのようなものでもよいが、

最初は簡単なものからはじめるとよい。

読めない漢字や、意味の分からない言葉があまりにも

多すぎる場合はもう少し簡単なものにする。

・適度な長さに要約してみる。

初心者は、長さは「3~5行」のように、ゆるめの条件で。

慣れてきたら、「3行以内」のように厳しめの条件に。

2,評価や指導のポイント

・大切なところが抜け落ちていないか。

・余計な部分はどんどん切り捨てることができているか。

・日本語がおかしくないか。

・できるだけ簡単な言葉を使ってもよい。

3,ここは口を出さない(けなしたりしない)

・字が汚い

・脱字がある

・ひらがなで書いている

ちょっと最初は戸惑うかも知れませんが、

慣れれば意外と簡単なものです。

また、生徒の側もコツが分かってくると、

この練習が面白くなるみたいですね。

最初の壁さえ越えてしまえば後は楽、という

ケースが多く見られます。

なかなかご家庭では実行するのが

難しいかもしれませんが、

実行できたら相当な力になることでしょう。

最後に【部品と組み立て】のお話をします。

これまで国語に関するお話を数多くしてまいりました。

それだけ、国語という教科が重要だからです。

重要と言うよりは、「命綱」という表現の方が適切かもしれません。

ただしここで言う国語とは、単に言葉を知っているとか、

そういう部分的な能力のことではありません。

もちろん、それらも必要ですが、それらは部品にすぎないのです。

本当に大切なのは、部品を組み立てる力なのです。

国語において、漢字や文法やことわざなどは苦手だけど、

読解や作文はあまり苦労しないよ、という人は

「組み立て」のうまい人です。

逆に、漢字も知ってるし読めるしことわざも知ってるよ、

けど長い文章とか読むの苦手だし、作文はキライだ、という人は

組み立てよりも「部品」が得意なタイプということになります。

あなたのお子さんはどちらでしょうか?

テストの結果を見てみれば判断しやすいでしょう。

お子さんの国語力のタイプが見えてくれば、おのずから

何を練習すればいいかも分かってきます。

学校や塾では、あまりその子にあわせた国語力育成というのは

やってくれないことが多いですから、その点においては

家庭で訓練しておくのがもっともよい方法なのです。

「組み立て」「部品」どちらも大切です。

国語力の向上は勉学のでき具合を左右する重要なポイントですから、

普段からコツコツと練習を重ねるとよいでしょう。

これまでこのメールでは色々と学習メニューを紹介してきています。

どれも古典的で地味ながら効果のあるものですから、

ぜひ取り組んでみてください。

まとめ

・漢字練習の前にカタカナを練習しておくと

スムーズに進められるようになる

・漢字練習は一日5分から練習していって

少しずつ切り崩していく。

・作文では、まず字数を稼ぐことから始めて

苦手意識をなくしていくことが第一。

字数を稼ぐには、事実でも感想でも、詳しく書くこと。

・どうしても苦手なら、まず音読などの練習で

国語の基礎を自分の中につくる。

・書き出しを音やセリフから始めるなどして、

ドラマっぽくすると面白い作文になる。

・自在に文章を書くことができるようになると、

テストでの記述式問題はもちろん、

教科書の文章も理解しやすくなる。

・要約する練習をやっておくと

全ての勉強の役に立つ。

家庭でやるのは難しいが効果は高い

・お子さんが、国語の中で

何が得意で何が苦手なのかを

しっかりと調べてから行動する

国語・英語のコーナーに戻る