第11章 マンションがあぶない

新型大地震か

どうもこれまで分からなかった大地震があるらしい。

2009年2月のNHKTVでやていたが、なんだか新しい地震らしい。いや、地震はいつも新しいか、いや逆か、地震は大昔からあるなあ、どっちだろ。

普通は地震ってやつはドドドッとゆれて、壊れるもの倒れるものがガラガラガシャガシャンってなるもんだと思っていた。

ところが近頃の鯰は進化してきて、フワ~リユラ~リソロ~リと揺するのだそうで、それがだんだんよくなる法華の太鼓で長い間揺れつつどんどん揺れ幅が増していくのだそうだ。この揺れが高層ビルにチョウ危ないそうである。

あ、そうか、鯰クンも昔もそうやって揺らせていたけど、高層ビルもなけりゃ超高層ビルなんてのもなかったもんなあ、人間は別に危なくはなかったんだな。

ってことは鯰の進化じゃなくて、人間の進化?でわざわざ危険なものに仕立て上げたってことである。

特に埋立地のような土地がずぶずぶのところが危ないのだそうだ。先日チリ地震があって、その津波が日本に押し寄せるときにリヤス式海岸のような湾のなかで波が増幅する図を見たが、あれと似たような感じだ。

南海、東南海地震でおきた地震波が地中を伝わってきて、東京湾の埋立地のようなずぶずぶ地盤でしかも周りが山に囲まれたところでは、やわらかい地中に波が閉じ込められて行ったり来たり、いつまでもゆれ続けてしだいに増幅するのだそうだ。

鯰クンはそうやって揺すり続けているうちに、ビルの揺れ具合と地震波長とがピタンコ相性がよくなってケッコ~ン!?、ビルは身をよじって振るえ揺さぶりだすそうだ。

事例として、1985年にメキシコシティで起きた15階建て高層ビルの倒壊は、まさにこれだったという。あそこは湖を埋め立てた土地である。わたしの住む横浜関外もまさにその地形である。こわい。

わたしのただの推測だが、本当は東京のどの地域のどの高層ビルがどう長周期地震波に反応するか、コンピューターでの実験にデータがあるに違いない。それを放送するとパニックを招く危険性があるから出さなかったのではあるまいか。

その長周期地震波による超高層ビルの揺れの実験映像を見せてくれた。たしかに建物は倒れなかったけど、中味はグチャグチャ、走り回り倒れに倒れた家具類の下でマネキン人形が無残に死んでいる。

ってことは、このビルは構造体としては大丈夫だったけど、上下水、電気、ガス、建具類、ガラス、付属物などはめちゃめちゃだろうから、使い物にならないに違いない。

人も室内で死んだとなると、これはどう考えるか。平屋で家がペチャンコ、土地は残ったという場合と同じである。ちっとも安全な建物ではないってことになる。

どんなに安全な設計をして倒れなくとも、これでは意味が無いと思う。

それでも土地があれば、構造体があれば、金さえ都合つけば建て直しや大修繕でまた使えるようになるだろう、と考えるのが普通だが、ここにも大問題が潜んでいる。

今から長周期地震波被害予防の工事をする技術もあるそうだが、これも億の単位で金がかかるらしい。「新宿センタービル」でやった事例が放送されたが、これは大成建設の設計施工でその本社なんだから、これが倒れたら企業が倒れる。面子にかけてもやる必要があったと分かる。普通はそうは行かないだろう。

金もなし、家もなし、来るならわたしが死んでからにしてほしいが、唯一備えているのは、地震が来てもわが財産の被害をできるだけ少なくしていることだけ、つまり借家住まいで壊れる財産はないってことである。消極的対策じゃないよ、積極的に借家を選んで入っているのだ。

はびこるマンション

世の中には危険と分かってるのに、どんどんとはびこる変なものがある。

煙草とか酒とかのことではない、分譲共同住宅(日本でのいわゆるマンションだが、もともとマンションとは大邸宅のことだから、わたしは名ばかりマンションという)である。

こんな危険なものを買ってほんとにあなたは大丈夫なんですか、地震で大変なことになりますよ!

1995年の阪神淡路大震災のあとで、被災した分譲型の共同住宅(区分所有型共同住宅ビル)の建て替えや修理が、所有者の利害関係が複雑で非常に面倒なことになったことは、みんな知っているはずなのに、いつの間にか忘れて、またどんどん建てて、売り買いしている。

阪神淡路大震災から10年後、今度は人為的な震災が起きた。建築の耐震偽装設計事件である。姉歯という建築士が法的には耐震性の無い設計をして、その設計で建てた建物が危ないかもしれないと分かり、大騒ぎになった。

この件でもホテルや賃貸共同住宅は比較的早く立て直しに至ったが、分譲共同住宅(いわゆるマンション)は解決が難しかく、いまだに全部が解決していないようだ。分譲共同住宅は問題があることが、改めて証明された。

それなのになお、いまだに毎日、分譲共同住宅の広告が新聞等を賑わわせており、超高層の巨大なものもどんどんと建っているし、買っている人がいる。

おい、もうすぐ関東とか倒壊とかに大地震が来るってのに、そんなもの買っていいのかい?

姉歯事件があった

姉歯なる1級建築士の資格を持つ構造設計屋が、設計の手抜きで構造計算を偽造して、たくさんの高層ビルが地震耐力不足ということが判明して大騒ぎになったことがある。

あの事件で建築士はすっかり信用を失って、それまでは建築士は善人である前提で建築基準法も建築士法もできていたのに、悪人を前提に改定されてしまった。

姉歯が構造計算偽造して建設されたビルのうち、ホテルや賃貸ビルはそれなりに建て直しが進んでいるが、分譲区分所有型集合住宅(通称マンション)は、建て直しがなかな進まないようだ。欠陥商品だが、なにしろお金がかかりすぎることがまずあるだろう。

それよりも問題なのは、マンションというものはひとつのビルを貧乏人と金持ちが共有しているから、建てて直すにはどちらも合意しないと壊すこともできないから、そうなるとどうしても貧乏人が足を引っぱることになるからだ。

東京都心部ばかりか地方都市の都心部も、マンションミニブームと言われるらしく、高層・超高層ビルの区分所有住宅がどんどん建ち、どんどん売れているようだ。

これは困ったもんである。

姉歯事件の後でも耐震偽装事件は起きているし、偽装ビルじゃなくても大地震が来たら、大修繕や建て直しが必要になるに決まっている。

そのときがきても本当に大丈夫かどうか考えて売り買いして居るのだろうか。

超高層大規模で大丈夫か

超高層建築のマンション、つまり分譲区分所有型住宅ビルがたくさん建ちつつあるが、どうもこれは厄介な問題ををどんどんと貯め込んでいるだけのように思うのだ。

最新技術の超高層ビルだって、いずれは老朽化して建て直さなければならないし、予期しない大地震で壊れて建て直すことになるかもしれない。建て直しでなくて大規模修繕が必要にある。

その金額は膨大なものになるに違いない。

そのときに、数百戸、いや千戸を越えるような大規模超高層ビルが出現している現在、そこには住宅の区分所有持分者がいるのだ。

だが、その大金を調達するの全員が合意しないとできないが、はたしてそんなに大勢の全員合意が可能だろうか。

簡単ではないだろうから、被災して住めないままに、修繕も建て直しもできないままに、ビルは朽ちていくし、多数の住宅難民はどうするのか。

現在その超高層マンションを買う人たちは、先のことは分からない、そのときはナントカなるだろうと、頬かむりしているのだろうが。それとも、売り逃げをかんがえての購入だろうか。

売るほうは専門家だからその辺は分かっているのだが、何か起きてもマンションは売ってしまえばよそ様のものだから知らないよって、ことなんだろうか。

「超高層の未来を語ること、それは業界のタブーでもあるんです」

これは業界人の言葉として新聞に載っていた。怖いことである。

赤の他人のリスクも背負い込むマンション

高い金を払って、分譲マンション(本当は「mansion」とは戸建豪邸のことですがね)なる危険きわまる生活空間を買ってはいけません。

マンションビルは、大勢のいろいろな事情のある人々が所有している。

ところが戸建住宅みたいに隣とは切り離されていないから、自分の住戸だけではなくそれを支える柱や梁、基礎、電力や給排水の設備は、みんなで共有している。

そのみんなには、金持ちもいれば貧乏人もいる。

ということは、このビルを持っていることは、他人のリスクも互いに背負い込んでいるってことなのだ。

大地震が来たとしよう。

仮定のように言ったが、じつは数年、数十年のうちに関東、東海、東南海地震が確実に来ると科学的に予測されているのだ。

建物は大地震でも倒れないように構造計算して設計して、その通りに建てるのだが、だからといって絶対に大丈夫とは言えない。

なぜなら、姉歯事件のような構造計算偽造事件もあれば工事手抜き事件がおきているし、実は、それがなくても大地震で建物は倒壊しなくても、大揺れでかなり痛むことは十分にありうるのだ。そのように設計してある。

なにがきてもどこも壊れないようなビルは作れるだろうが、ぼう大な建設費でそんなものは売れっこない。

そこで、そこそこに壊れて地震エネルギーを吸収して、それでも倒れてしまうことはない様に設計してあるのだ。

柱・梁の構造体や共同設備が壊れて大修理をしなければならないことは、地震だけではなく時間の経過による老朽化でも必ず起きる。これを修繕する、あるいは建て直しするには莫大な費用がかかる。

このときにその共同住宅ビルを共同所有する者全部が、修繕費や建て直し費用を簡単に負担できないのは、現にその事件が起きている通りである。

特に超高層共同住宅ならば、大規模だから費用も大きいが関係者も多いから、それは大変である。すぐに建て直ししたい・修理したい人もいれば、したいけれど金銭負担できない人がいる。

つまり、見も知らぬ他人と建物を共有することは、互いに見も知らぬ他人のリスクも背負い込んで建物を買ってしまうことなのだ。

区分所有型共同住宅(いわゆる分譲マンション)を買うとは、何千万円も出して人様のリスクを背負う、そういうことなのである。

その覚悟もできないどころか、そのことを知らないままに不動産屋の宣伝に乗せられて買うのが止まらないのは、一体どうしたことだろうか。

政策的にもそれを規制しないのはどうしたことなのだろう。

「分譲マンションの未来を語ること、それは政治のタブーでもあるんです」って、誰か思ってるのか、。

名ばかりマンション

名ばかり管理職とかいって、平社員なみの権限しかないのに管理職に指名されて、残業代を支払ってもらえず、平社員より収入が少ない労働者がちかごろ話題になっている。

名ばかりといえば、その超第1級品はなんといっても「名ばかりマンション」である。これほど名ばかりに値するものは、ほかに見当たらない。

マンションとは英米語辞書では大邸宅やお屋敷のことである。以前にアメリカ人女性から聞いたことがあるが、アメリカでマンションといえば大統領一家が住むホワイトハウスのような、広大な庭と豪壮な建築の住宅だそうである。

日本のマンションは、不動産屋用語で3階建て以上の不燃建築の共同住宅、しかも区分所有型つまり分譲型のものを言うらしい。

2階建てのそれはアパートというらしいが、それは分譲でないかららしい。

では、日本語マンションは英米語ではなんと言うかというと、コンドミニアムというらしい。日本では聞かないなあ。

とにかく、大邸宅でもなければお屋敷でもない、どんな小さなウサギ小屋でも、共同住宅ならそれをマンションというらしい。なにしろワンルームマンションなんて、ホテルなみの小部屋もあるくらいなもんである。

これはmansionを語源としてかっぱらった和製英語らしいが、物が似て非なるものの典型でありすぎるのが困る。ほんとに名ばかりmansionである。

らしい、とばかりいうのは、不動産業界用語で調べても明確な定義がないからである。

なんにしても、外国語のマンションの定義を詐称して、日本のウサギ小屋につけたという、不動産業者の販売用のほら吹きから始まったとしか思えない。

法律でいうマンションとは?

もとは業界のほら吹き広告から始まったとしか思えない「マンション」なる用語が、なんと日本の法律で定義されているのである。

「マンションの建替えの円滑化等に関する法律(平成14年法律第78号)」という、法律の題名にマンションとついている。

その第2条に用語の定義として、マンションとは「2以上の区分所有者が存する建物で、人の居住の用に供する専有部分のあるもの」となっている。

つまり、持ち主が2人以上で住宅のある建物は、木造平屋貧乏長屋でも100階建て超高層でも法律上はどれもマンションである。

となると、いまに平屋の2連戸住宅とか、今までアパートといっていたヤツを、マンションでございという住宅事業者が出てきて、混乱を招くかもしれない。

ちょっと、どうも、そういうもんで、よいかしら、英米の常識とも、日本業界の常識らしきものとも、いずれとも乖離しているのを法律で決めてよいもんかしら。

法律屋さんは硬いお方ばかりだろうに、「名ばかりマンション」におけるマンションを法律用語にしてしまうとは、どういう神経だったのだろうか。

ここはお堅く「区分所有型共同住宅建築物」とでもいうべきであったろう。

今や全国に528万戸、1300万人が名ばかりマンションに住むらしいから、もう名ばかりといってもいられないと思ったのだろうか。法律は分かりやすくっていうことだろうか。

それにしても、これだけ大量な震災危険住宅をいまだに建設の規制をしないのは大問題だと思うがなあ、。

次の関東大震災が来て、建て替えもできず修理もできない立ち往生名ばかりマンションが林立してからようやく、名ばかりマンション規制が始まるのだろうなあ、日本は人柱と外圧でしか政策は変わらないのだ。

そういえば、アパートってのも変である。なぜ2階建てならアパートなのか。

かつて東京には野々宮アパートとか代官山アパートというのがあったが、これらはみな今で言うなら豪華マンションであった。いつから貧乏共同住宅の代名詞になったのか。

マンション不況で喜ばしい

国土交通省が2010年1月29日に発表した住宅着工統計を見ると、2009年中の着工戸数は約79万戸であった。2008年中のそれは約100万戸だったとあるから、なんと3割減である。

持家も貸家も分譲住宅も減ったなかで、給与住宅だけが増えているのは、どういうわけだろうか。

減少の中で分譲型共同住宅(日本ではマンションというが、実は名ばかりマンションのこと)は、2009年中は約7万7千戸、2008年中は約18万戸だったから、なんと58パーセント減少(内首都圏6割減)である。

大地震が来たら危険極まりないこの分譲共同住宅が減っているのは、なにはともあれ喜ばしいことだ。

しかし、着工が減ったといっても実戸数は増えているので、新たに18万戸ということは30万人以上がこの危険なものに昨年から新たに住みだしたか、住みだしつつあることになるのだろう、コワイ、、。

わたしが推奨する貸家が、2009年中は321,469戸で、これは2008年中よりも3割も減少しているのが、気に入らない。

統計に公的な住宅が分類として登場してこないも、気に食わない。統計に載るほどの戸数供給をしていないってことか。全く気に食わない。

とにかく、あの危ない危ない分譲型立体長屋、名ばかりマンションが売れないことが喜ばしい。あんな危険なものを売るほうも問題だが、買うほうも問題なのである。

もうすぐ必ずやって来る首都圏地震で、どんなに頑丈に作ってあるビルでもかなりの被害がかならずある。

そのときに、一棟で100戸どころか500戸、1000戸もあるような分譲戸数だと、どうやってみんなが意志をそろえて建て直しとか大規模修繕とかやれるのか。

1995年の阪神淡路大震災で、その難しさがよ~くわかったはずだし、その後の姉歯震災でも念押しされるように問題がわかったはずだ。

なのにどうしてあんなもの売るのか、買うのか?

分譲名ばかりマンションは、日本の潜在的不良資産の巨大な巣窟なのである。今のうちに規制か禁止するしか、世を救う方法はないのだ。日本の戦後住宅政策の貧困による破綻は、もうそこまで来ている。

借家か持家か

ある日、地下鉄に乗ったらこんな広告に出会った。

曰く「このまま11万の家賃を払い続けても、後には何~んにも残らない、と、思った時から急に家賃が恨めしくなった。マンション、住み替え、一戸建て、いい人生に」

これはどうも「賃貸住宅はよくないよ、マンションでも、一戸建てでも、買ったほうがいいよ」ということらしい。

別にこの広告主のジャマをする気はないが、これは大まちがいである。

わたしはこの広告主とは考え方が、正反対に違うのである。悪しからず。

「何~んにも残らない」ので、何か残ると思ってうっかり分譲マンションを買うと、それはもうどえらいものが残るのである。

それは、借金、危ない家、個人では建て直しもできないミニミニ土地、孫子が相続から逃げるお化け屋敷などなど、とんでもないものが残る可能性が大きいのである。

つまり不良資産を抱えるリスクが大きいのである。

大地震によるマンション建て替え問題は、阪神淡路大震災で証明されているし、姉歯事件でそれは念押しされたことだ。

姉歯事件では賃貸住宅ビルと分譲住宅ビルがあったが、賃貸ビルはすぐに解決したが、分譲の共同住宅ビルはいまだに建て直しになったのは2件だけらしい。

それにもかかわらず、世の中は分譲マンションを売っているし、買っている。みんな忘れたのかしら。

短期でも長期でもボロ財産が残るのが、マンション(区分所有型共同住宅ビル)である。大地震問題もあるが、それがこなくて、管理がわるい名ばかりマンションはどんどん老朽化して、売ろうにも売れない、そのうちに空き家が増えてくる、そうすると住むのが怖いからますます空き家が増える、ますます老朽化する、そのうちに不法占拠社が入ってくる、てなことになるのだ。建て直しはもう不可能だ。お化け屋敷である。

となることが分かると、早いことほかの知らない人に売り逃げししよううてことになる。

売り逃げ流行となると、社会資本であるべき居住環境が、金融投機対象となるというまことに退廃社会である。実にいびつな日本の都市社会である。

政府は所有型住宅優先の政策をやめて、都市における優良な一棟丸ごと賃貸共同住宅の供給政策を打ち出すべきである。

これなら地震で被災しても早期に回復ができるのだ。所有が一体化しているから管理もやりやすい。共同住宅は利用と所有を分離するべきである。

高くて買えないと思案している人は、ちょうどよい時期だから考え直してはどうか。

政府の政策も、持ち家にはローン減税があるのに、借家に家賃減税がないという大不公平である。

だから、分かっていながら(いや、もしかしたら分かっていないのかな)危ない分譲住宅ばかりがはびこる。悪貨は良貨を駆逐するのである。

政府は、住宅は十分に満ち足りた、もう五カ年計画もやめたって言っているのに、2008年暮に発生した「日比谷派遣村」みたいに、実は住む家のない人がたくさん居るってことがあぶりだされた。ホームレスも大勢見かける。

日本では住宅政策がヨーロッパ先進国のように社会政策ではなくて、アメリカや発展途上国なみの経済政策だからだ。それは住宅政策とは言わない。

だから、アメリカで経済政策としての住宅政策が大失敗して、世界不況になったのだ。

まあ、日本は世界不況を起こすほどの経済力も実はないんだってことが、逆証明されたようなものだ。

これでいいのか?

ドヤ街に見る貧困な住宅政策

なんでも名ばかりマンションが売れる気配らしい。

不景気で売れないから、値下げや投売りが出てきているのと、購入に当って減税措置が拡大されたのだそうだ。

まったく困ったものである。

まず第1の問題は、わたしが言うところの名ばかりマンションは、大地震がきたらたちまちに困ることになる可能性が高い危険なる代物なのに、政策はその購入を支援しているのである。

第2の問題は、なぜ持家購入の借金返済には減税して、借家の家賃には減税しないのか。まったくもって不公平である。

日本には住宅政策はなくて、経済政策だけがある。

横浜に寿町という、いわゆるドヤ街がある。東京の山谷、大阪の釜が崎とならぶ、簡易宿泊所と呼ぶ実情は超零細アパートメントビル街である。

約6ヘクタールの街に約6400人のドヤ住人たちが寝起きしているが、人口密度を計算するとヘクタールあたり1000人を超える超過密である。それに高齢化も押し寄せて、今や労働者の街から介護の街になりつつある。

わたしは寿町の近くに住んでいてよく通るし、この地域の新展開を目指すホステルビレッジ事業者に案内してもらって体験宿泊もしている。

かつて若くて体力のあった港湾荷役労務者たちがその後に建設労働者となり、仕事が減り高齢化して労働能力が下がったままにずるずると暮らし続けて老いているのだ。

50歳以下は極端に少なく、65歳以上の高齢化率は31.5%(2005年)、9割は男単身世帯である。高齢者が多いから病人も多いという。日雇いだったから健康保険も年金もない。8割の世帯が生活保護費を受給している有様である。

簡易宿泊所数は118棟、8461室、宿賃は1室ネット約5㎡(3畳)で2200円/日である。実質的には住んでいるのだから月66000円、つまり1平米当り13000円の月家賃である。このあたりのワンルームマンションの家賃相場は3~4000円だから、これは超高額である。

実態的に超高額超低級アパートメントに住む人たちに、その家賃として生活保護費を支給していることになり、つまりその超収益不動産経営者を公的資金で支えていることになる。奇妙な構造である。

この地域の歴史的背景は複雑なものがあるが、ここには日本の住宅政策が社会政策ではなくて、経済政策としてしてきた歪みが見事に現れている。

日本に社会政策として住宅政策があったなら、当然のことにこの地域に公営住宅を建設して、これらの人たちをいれていただろう。

民主党の居住・住宅政策は?

2009年9月から国交省に民主党の大臣が座った。

やってることはダムやら道路やらちょっと目先の派手な話題ばかりだが、もっとも基本的な居住政策については、なにか変えてくれるのだろうか。

日本では55年体制の自民党政権下では、基本的人権としての社会政策であるべき居住政策が存在しなくて、住宅政策という経済政策で住むところをつくってきたのである。

居住政策は持ち家建設促進政策という経済政策であって、ちょっと景気が悪くなるとローン優遇なる借金政策を進めるのである。

借りたくもないのに大借金して持ち家にしないと、屋根の下に暮らせない政策なのである。

その結果は、日本人の家庭はどこでも大借金返済を数十年もかけて、ほかの生活費を犠牲にして暮らしているのである。

生存権という基本的人権のひとつの居住の場を、借金で買い取らなければならないという奇妙なことが、先進国といわれる日本では起きている。

だから、今の100年に一度のような不況が来ると、目に見えてその矛盾があらわれて、住宅戸数は統計上では十分に足りているのに、借金が返せなくなって住宅が無い人が出てくるのである。

では借家に入ればよいはずだが、日本では借家には全くといってよいほど促進政策がないのである。だから狭くて環境の悪い高家賃の賃貸借住宅しか、一般向けには無いのである。

低家賃の公営賃貸借住宅はもうほとんど建設をしないから、なかなか入れない。

公社や都市機構(UR)のような公的賃貸住宅も新規建設をやめて、しかも現在の賃貸住宅の家賃を民間なみに高額にしているのである。

全くこの国は、人間の居住権という基本的なところに政策が欠けていることおびただしい。

戦前は都市では借家住いが普通であったのに、いまは名ばかりマンションなどの持家ばかりがもてはやされる。

だから賃貸借住宅業界は、寡占的な立場にあって強気の商売である。家賃滞納者のブラックリストを作って、その者の入居を排除するシステムを共有する家賃保証会社の団体をつくろさおうだ。ちょっとでも滞納すると業界に知れわたって、家を借りることができなくなるのだそうだ。サラ金みたいである。

悲惨なアジア・太平洋戦争が終わって既に65年、衣食住のうち衣と食は戦後復興したが、住はいまだに戦後復興から置き去りなのである。

居住政策を経済政策担当の国交省ではなく、社会政策担当の厚生労働省の所管にしてはどうか。トンカチ屋ばかりの国交省には社会政策は無理である。

民主党さんよ、社民党と共にご努力いただき、賃貸借住宅促進策を展開していただくことを期待している。

さすが名ばかりマンション

パークタワーグランスカイ、パークホームズ○グランテラス、パークリュクス○、パークシティ○、ファインコート○プライムスタイル、○パークハウスザプレミアコート、ブランズ○、シーサイドコート○、ブランズ○オーシャンフロント、ブランズガーデン○、ライオンズグラマシーハウス○、ライオンズ○マスターレジデンスファインステージ、ライオンズ○ニュータウンフォレストフォート、ライオンズ○レスティアコート、ライオンズ○プレミアム、サングランデ○ドアシティ、サングランデアルフィーヌ、ザブランディス○、ルネ○、リージェントハウス○、ハートビートベース○、ルネ○レジデンシャルヴィラ、ルネプレイズコート○、リビオ○アリアフォート、○ウェルウィンガーデンヴィレッジ、○isaac○D.C.、クレヴィア○、○メープルヒルズ、Brilla○、イニシア○、グランフォーム○、ウェリス○、アズベリーヒルズ、フランサZ、ルティアス、リライズガーデン○、リバーフェイス、ファーストレジデンス○、レクセル○フォレスタ、レクセル○サザンフェイスプレミアムステージ、レクセル○シティエクセレントステージ、リーフィア○テラス○、プラウディア○プラウドタワー○、プラウドシティ○ガーデン、プラウド○サウスフォート、プラウドタワー○、シティタワー○、○ウェストシティタワーズ、シティタワー○ウェストゲート、シティタワーズ○ザツイン、MID OASIS TOWERS、BELISTA○、グランドメゾン○、○ALL PARKS(ザシーズンズ)、アイランドグレース、ユニヴェルシオール○、ノブレス○、パークフィールド○、ユトリシア、センターフォート、オーベル○ラチエン○、○フェイシア、、、、 (○のところには地名が入る)。

もう嫌になった、某日の新聞の全面不動産広告に載っている名ばかりマンションの名前である。

どーでもいいけど、なんだかすごいね。誰か分析してみないかしら、名づけるほうの心理状態を、、これなら売れる名だって思ってつけるんだろうなあ、、。買うほうの心理はどうなのだろうか、あら格好良い名前ねって買うのかしら、まさか、、。

書き写していて気がついたことの第1は、フォートやゲートが意外に多くあって、これは今話題のゲイティッドコミュニティ(安全を売り込みにして、囲い込みして周囲から孤立させる新開発住宅地)をネーミングにしたのだろう。安全が売り物である。

第2はガーデンとかコートのような広場や庭を意味する言葉が多く、緑が売り物なんであろう。

第3は、めちゃめちゃ長たらしいものがあることだ。セールスマンも買った人も覚えられないし、大丈夫か。

第4は、よくは分からないが語源は英語がほとんどで、フランス語、イタリア語、スペイン語らしいのが混じり、ドイツ語や中国語、ロシア語ましてやハングルはないことだ。ひとつひとつにバカ翻訳つけようかと考え始めたが、アホらしくなった。

ウェルウィンなんて元祖イギリス田園都市の名前を、ちゃっかりいただいているのには笑った。

まったくもって「名ばかりマンション」の名に恥じない、実に立派な名づけ方である。こんな名前でなんだか恥ずかしい、、とわたしなら思う。

横浜市南区の真金町と永楽町の真ん中あたりにある集合住宅ビルの名前を採集した。

グリーンハイツ大通り公園、コスモスクエア大通り公園、ホーメストハイツ大通り公園、ライオンズマンション大通り公園南、ジュネス伊勢佐木、センチュリー伊勢佐木、東横イン横浜関内(これはホテル)。

しかしながら、ここは大通り公園からは200m、伊勢佐木町からは500m、関内駅からは800mも離れている。しかも、いずれも隣の中区の地名である。

ちなみに、真金町と永楽町は1958年までは永真遊郭と呼ばれる赤線地帯であった。

アパートとマンション

どことかの殺人容疑者の住んでいるのが「4階建てのアパート」と、新聞にある。

アパートってのは、せいぜい2階建てまでの賃貸借型集合住宅だろうと思っていたのに、4階となると違うなあ。記事を書いた記者の解釈はどうなんだろうか?

早速、「貧者の百科事典」(インターネットWEBサイトこと)であちこち開いて調べて、分かった。というよりも、分からないってことが分かった。

まず建築構造の違いで、木造と軽量鉄骨の2階建てまではアパート(わたしのこれまでの印象)、重量鉄骨や鉄筋コンクリートあるいは鉄骨鉄筋コンクリートで3階以上となるとマンションである(らしい)。

次が、境目は分からないが、高級ならマンションで低級ならアパートである(らしい)。

問題は賃貸借居住か自己所有居住かのちがいであるが、どうもこれがわからない。わたしは漠然とながら、マンションというと区分所有型高層集合住宅を言うらしいと思っていたのだが、賃貸マンションという用語もある。となるとわたしは賃借マンション住まいとなるわけだ。

ウィークリーマンションとかマンスリーマンションもあって、これは短期間賃貸型集合住宅であり、要するに長期滞在型ホテルである。

また高層賃貸借型集合住宅でも、「アパートメント」といっているものもある。アパートよりも高級なものの様子が伺えるのだ。

そういえばそうだった、かの同潤会の集合住宅はアパートメントと言ってかなり高級だったし、その後の野々宮アパート、代官山アパート、三田アパートなど、どれも高級だったよなあ。

いつからアパートが低級集合住宅用語になったのだろうか。

そうだ、そのうちに高層低級集合住宅のことをマンションという日が来るにちがいない、いや、もう来ているか。

たしかに、米欧マンション(庭園のある豪邸)と比べて、日本マンションの低級なることよ。

ようするに不動産屋が場当たりにテキトーに名づけているに過ぎないのだった。

冒頭の話の4階建てアパートは、もしかしたら高級賃貸借型マンションのアパートメントなのか、それともその逆で低級なのでアパートと言ったのか、どっちなんだろう。

斜面マンション

街の中を車で走っていたら、建物の陰からチラッと、異様に明るく真っ白に輝く巨大な丘が見えた。

とまってしげしげと眺めると、斜めに向うに転んでいる共同住宅である。いや、転んでいるのではなくて、それは大きな丘の斜面におおいかぶさって、斜めに建っているというか、寝転んでいる共同住宅ビルが、西日を浴びているのであった。後に見えるふたつの鉄塔は、その丘の上に建っているらしい。

丘陵の斜面の緑をそっくり剥ぎ取ってしまって、住宅群に置き換えられた丘には、まるでたくさんの切り餅のようにバルコニーが積み重なっている。中央の青い縦線は、斜め昇降エレベーターらしい。(上の2枚、現地と航空写真)

また別のところでも斜面地共同住宅に出会った(下の2枚、現地と航空写真)。こちらは隣に緑の斜面があるので、元はどんなところか分かる。

ところでこれは何階建てと計算するのだろうか。各階が地面についているから平屋建てなのか。

斜面地は相対的に地価が安いから、土木や建築の工事費がかかっても採算にあうのだろうが、こんな斜面マンションばかりになると、風景は一体どうなるんだろうか。

都市化が進む中で斜面地の緑が環境を保っていたのに、こんな共同住宅を建てられては、もう市街地で緑を望むことは無理か。

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