●書評『都市再生・街づくり学大阪発・民主導の実践』

(高田昇ほか23 名著大阪市街地再開発促進協議会編)(評者:伊達美徳)

本書は、大阪商工会議所が設けた大阪市街地再開発促進協議会が、設立50周年の記念誌として編纂出版した。半世紀前といえば、基盤整備から都市建築へとようやく制度の光が当って、街並み形成が動き始めた頃である。そういえば、本書の中でも提唱される「身の丈再開発」は、その頃の防火建築帯や防災建築街区がまさにそれであった。

この書評原稿の締切はお正月過ぎで、本書を読み返してみてその内容の濃さ、多様さ、量、盛付け、これはまさに豪華オセチ料理である。過去・現在・未来にわたる三段の重箱に詰め込んでいる。だからナマ物はないが、それだけに長持ちする出版物だ。

中心には大阪府下の市街地再開発事業の来し方行く末について現場論(執筆者:森澤、千葉、新巻、坂本ほか)や制度論(横島、伊藤)、まわりをニュータウン(加藤)、歴史的街並み(高田)、下町路地や長屋(川口、六波羅、寺西)が取り囲み、さらに都市社会文化論(白石、佐々木)までも取り揃える。

締めは東西大御所で、西の大久保昌一の政策論は歯ごたえと苦味のある数の子とすれば、東の伊藤滋の高齢者街づくり論はふんわり含み味の黒豆である。

民学官のベテラン腕利き街づくりシェフ24 人の料理を、盛り付けた編集委員(高田ら)の腕前もなかなかなものだ。全体に美味で面白いが、味の濃さと量の多さが胃にちょっともたれるのは、「街づくり学」のお勉強だから仕方ない。

本書の副題にあるように、大阪では民主導の都市整備が戦前から進んでいたが、その力量は戦後復興でも生きて、関東では国の機関の横槍が入るような独特の創意と工夫をしてきているのが、読んでいて楽しい。

●全文は→書評『都市再生・街づくり学』

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