横浜B級観光 黄金町かいわい

お次は

黄金町界隈

青線街からアートの街へ

曙町ー伊勢佐木モールー若葉町ー黄金町

 

 ●B級化進む伊勢佐木モール

 これから横切るのが横浜1番の商店街だった伊勢佐木モールです。

伊勢佐木町は、関内駅近くの1丁目から始まり7丁目まであります。その中心軸の伊勢佐木モールは、関内駅に近い東のほうがメインで、このあたりは6丁目になるとなんとなく残照感が漂います。

真っ赤なパチンコ屋さん、夕陽に映えて隣もピンクに染まっています。

しかし、最近は東のほうも怪しくなってきていて、むしろこちらの西のほうが、かつての伊勢佐木の雰囲気を保っている感じもあるような、 、 。

このあたりは古書店もけっこうあって、わたしはよく巡っています。面白いのは東から西へと場末に来るにしたがい、エロ系古本が多くなるってことです。

「ブックオフ」ってのが数年前にでてきて、古本屋のくせにイラシャイマセ~コンニチワ~って、居酒屋みたいに黄色い声をしょっちゅう聞かされるのは、ありゃ万引き対策なんですかね。うるさくも不思議な気分です。

でも、あそこは本の目利きがいないらしく、ものすごく広い105円棚に意外な掘り出し物があって嬉しいですね。 

 

 ●曙町親不孝通り

道の北側が曙町って、これもおめでたい名前ですが、ここも昔から下半身系の遊びの町で、最近はごらんのように新たな風俗営業系の店が増えてきています。

この国道に連なる堂々のフーゾク街並みをごんらん下さいませ。上から下までフーゾクビルまでありますよ。 昔は裏通りが風俗街だったのに、いまや表通りまで進出して生きています。

では国道を渡ってその裏通りです。この国道に平行して一本北にあるこの裏路地は、「親不孝通り」って言われたらしいですよ。青線街として親を嘆かせるアヤシイ商売が連なっていたのです。永真の赤線街とセットだったんでしょうね。

そういう伝統ある界隈として、いまも風俗店が軒を並べています。

ほらそこんこと、1階の入り口あたりに緑色のモザイクタイルを貼った丸い柱があるでしょ、これがかつてはその手の店のデザインボキャブラリーだったのです。

残照というよりはまだまだカンカン照りのようですね。

 ●若葉町の映画館

では伊勢佐木モールを横切って北に行きましょう。

このあたりに横浜日劇って映画館が建っていましたが、 なくなっちゃいましたね。

CINEMASCOPEって入り口の上の大きくネオンサインがあって、なんていうか、映画全盛時代の風景でしたね。これも写真だけ見てください。

この近くに「ジャックアンドベティ」って映画館が、なかなか面白い企画の映画をやっています。映画館街でもあった伊勢佐木町の残照ですね。

そうそう、進駐軍が接収していた頃、このあたりに飛行場があったらしいですよ。接収図(15ページ)を見ると、東西に長いところがあるのはそれですね。

●消滅した青線街・黄金町

では、大岡川の末吉橋を渡りましょう。

さてこの辺りが、かの有名だった黄金町界隈です。なんで有名かって、ええ、このあたりの川沿いや京急電車の高

架の下などに、特殊飲食店街っていうか、例のあの生身下半身商品の実物現地直売の生き残り店舗が栄えていたのです。

赤線も青線も1958年に消え去ったはずなのに、その後も250軒くらいあったそうです。

なんで生き残るかって言うと、そりゃ需要と供給があったことがいちばんでしょう。警察が手入れしても手入れしても、しぶとく再生していたってことで、いたちごっこですね。

だから「有名」て言うのは「悪名高い」ほうです。

でも見たところでは、商品はラテンアメリカとか東南アジア系からの輸入が多いようでしたね。

通称「チョンの間」っていって、ちょっとの間であの用事を済ますって意味でしょうか。ほらそこにある赤いテントの庇がいくつも出ている、2階建てアパートみたいな建物がありますね、あれがチョンの間の市場でしたね。

あのようなのがガード下やガード裏路地あたり に連なっていたようです。

ところが2005年、神奈川県警が徹底的な取締りをはじめて、毎日24時間おまわりさんが六尺棒持って見張っています。

あちらさんも、さすがにいたちごっこ再生は不能になったのですね。最近とうとう交番が建ちました。これであの方面の商売は根絶です。


 ●白昼の娼婦

 今は川沿いの道もきれいに整備されていますが、これもこの3、4年のことで、その前は薄汚い町でした。

わたしが関外に住むようになったのは2002年からですが、その前からちょくちょく新聞に「黄金町また手入れ」みたいな記事が載っていて、はて、どんなところだろうかと気になっていましたが、わざわざ見に来るほど物好きでもありませんでした。

関外に住むようになって、 ある日の昼頃、散歩がてら来てみて驚きましたね。

赤いテントの庇ごとに、きれいなおねえさんが立ち並び、通る人に客寄せの声をかけているのです。超ミニスカートでね。

まだ太陽は真上にあるんですよ。さすが夜には来ませんでしたが、朝方の散歩でも同じでしたね。聞きしに勝るとはこのことか。どうも写真を撮るのはためらいましたね。

間口1間、奥行き3間半ほどの店が連なる共同店舗です。

この建物自体にもこの道の営業ノウハウがありそうです。

後に空き家ちょんの間の建物をアートイベントで公開していたので入って見ました。

1戸が間口1間、1階に飲食店ですって申し訳程度の小さなカウンター、その奥に階段があって2階に上がると、階段を挟んで奥に2畳間でこちらは休憩部屋らしい、表に3畳間があって営業部屋のようでした。

 ●三国間貿易

 繁盛していたころ、この路地を通る人のなかに目立ったのは、どうも米軍横須賀基地の若い兵士らしいひとたちでした。

立っているおねーちゃんも、どうも日本人じゃなくてラテン系、それも中南米系とか東南アジア系のような風貌がほとんどでしたね。どういうルートでこんなところに来たんでしょうか。

で、その商品とか場所とかの供給をするその筋のほうの日本人が、その中間で手数料とか家賃で儲けるって仕組みだったらしいですね。

つまり日本を舞台にして三国間で貿易が成立している。

『黄金町マリア』(2006年八木澤高明)って、黄金町の娼婦を追うルポルタージュ本があります。そこにはこんなことがかいてあります。

「黄金町には250軒のちょんの間があるといわれ、中国、タイ、中南米、東欧などから来た女性、そして日本人女性も含め、約500人が働いていた」

彼女たちの、販売価格は30分で1万円、娼婦の払う部屋代が1日2万円、ここにきた裏事情には人身売買もあること、などがかいてあります。

 ●映画のなかの地獄

 黒澤明監督作品の映画に「天国と地獄」があります。横浜と鎌倉が舞台でした。天国とは丘陵上の高級住宅地、地獄とはその下に広がる平地のスラム街という設定です。

そのスラム街の描写のひとつが、戦争直後の黄金町界隈でした。撮影所で制作した映画セットだったそうですが、ものすごい怪しくも暗い世界で、地元からあれほどじゃないよってクレームがついたとか。

 戦争直後は大岡川から南の都心部の大部分が、進駐軍に接収されてしまったので、この辺りから野毛、桜木町にかけてが替わりに大繁華街になったのだそうです。

繁華街といってもその頃は、物資統制時代ですから、ヤミ商品が取引されるヤミ市場が広がっていて、カストリ焼酎の立ち飲み屋台、青線はもとより怪しげな商売がはやり、怪しげな薬も取引されていたのですね。その雰囲気が映画によく描かれています。


●黄金町バザール

さて、昔話はおいといて、今の話をしましょう。

ほら高架下になにやら格好よさそうな店があるでしょ。あそこに入りましょう。

そんなイメージの低い街をナントカしようと、2003年から地元の人たちが「初黄・日ノ出町環境浄化推進協議会」、NPO「黄金町エリアマネジメントセンター」を作って、地域整備に立ち上がったのです。

2005年に警察の非合法飲食店の徹底的検挙で壊滅してから、イメージダウンしていたこの街を今後どうもって行くかということになりました。

そこに登場したのが「文化芸術のまち」に再生させる試みです。 地元住民や大学、横浜市などが共同で企画して「黄金町アートフェスティバル」、「黄金町バザール」を2008年から、毎年に開催しています。 そのためにこの高架下には、この格好よい「黄金スタジオ」と「日ノ出スタジオ」を作ったのだそうです。

それから、ほら、そちのガラス張りで何かアトリエみたいに見える建物、あれも実はもとは 「ちょんの間」営業でした。今はアーティストが居ついて制作を続けているでしょうか。

アートイベントは毎年おこなわれるようになっていますが、あちこちに前衛芸術が登場して奇妙な雰囲気です。

猥雑だった街にアートって、考えようではアートも猥雑なものですから、まあよいでしょう。別の形で残照を受け継いでいくかも知れません。

若者たちが地元住民と一緒になってがんばっているようです。

さて、この活動が根付くでしょうか。その行く末が、わたしの散歩の楽しみでもあります。

では大岡川に沿って下りましょう。ご覧のように桜並木が両岸にあります。春はいい景色ですよ。

◆黄金町については次を参照

「初黄・日ノ出町環境浄化推進協議会」、NPO「黄金町エリアマネジメントセンター」

http://cgi.city.yokohama.jp/naka/service/syosai.php?jigyocat1=&jigyocat2=&jigyocode=G0000339

「黄金町バザール」http://www.koganecho.net/

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