イザナギは、どうしてもイザナミに会いたかった。
イザナギ
「もう一度だけでいい・・・話をしたいんだ」
そして――
生きている神でありながら、黄泉(よみ)の国 へ向かってしまった。
死者の世界。そこは暗く、冷たく、じめじめした世界。
足元は見えず、空気は重い。
イザナギは怯えながらもイザナミを探した。
イザナギ
「イザナミ~! どこにいるんだ~」
しばらくして、奥のほうから声が聞こえた。
イザナミ
「来てしまったのね・・・」
イザナギ
「会いたかった! どこにいるんだ?」
イザナミ
「そこで止まって!」
イザナギは立ち止って言った。
「さあ、こっちに来て姿を見せてくれ。一緒に帰ろう!」
イザナミ
「私はもう、黄泉の国の者。この世界の食べ物を食べてしまったの・・・」
イザナギ
「それでもいい、一緒に帰ろう!」
イザナミ
「では、黄泉の国の神さまたちに帰れるかどうか聞いてくるから、そこで待ってて」
イザナミは続けて言った。
「お願い。それまでは決して私の姿を見ないで」
イザナギ
「・・・わかった。絶対に見ないよ。待ってる!」
しかし――
待てども待てども、イザナミは戻らない。
イザナギ
「遅いなぁ・・・」
そのとき、ふと不安がよぎった。
イザナギ
「ちょっとだけ・・・ちょっとだけなら・・・」
イザナギは櫛(くし)の歯を折り、火をつけた。
ぱっ。
照らされたのは――
かつての、美しいイザナミではなかった。
腐敗した身体には蛆(うじ)がわき、雷の神さまたちがまとわりついている。
イザナギ
「ぎゃああああ!!」
その声で――
イザナミは、すべてを悟った。
イザナミ
「・・・見たのね」
イザナギ
「ご、ごめん!!」
イザナミ
「裏切ったのね、許さない!!」
怒り狂ったイザナミは、黄泉の国の手下たちを呼び出した。
イザナミ
「追いなさい!!」
イザナギ
「ひぃぃぃ!!」
イザナギは、必死で逃げた。
つづく