征台の役

当時の外務卿（大臣）副島種臣（そえじま たねおみ）は、リ・ゼンドルの話術が素晴らしく、世界を知り尽くしたかのように聞こえたらしく、

「これはよいアイディアがもらえそうだ」

と外交顧問として迎えています。

簡単に言えばリ・ゼンドルは、

「報復しなければならない」

と言っているのです。

アメリカが日本に台湾を攻撃させようとした裏には、後々アジアのマーケットを独占するための思惑がありましたが、それは後ほど触れます。

内務卿（大臣）大久保利通は、廃藩置県やその後に行われる廃刀令、すなわち刀狩りなどにより50万人とも言われる武士達が職と誇りを奪われた不満により、各地で反乱を起こすなどして困っていました。

そこで大久保は

「武士達の不満が爆発している。 彼らのはけ口を台湾に向ける事で、少しは騒ぎもおさまるかもしれない。」

と考え、西郷隆盛の弟、西郷従道（さいごう つぐみち）陸軍中将に命じ、幕府から引き受けた小さな軍艦二隻に兵隊となった元武士達を乗せ台湾を攻撃しました。

闘いはすぐに決着がつき、日本軍の大勝利に終わりました。

ところがこれが世界的（国際法）には問題で、特にアジア侵略を視野に入れる白人の国々は日本へ抗議してきました。

実は日本は、清国に宣戦布告せず軍隊を派遣し、台湾を攻撃し占領してしまったのです。

もちろん、戦争をする為には前もって相手国に宣戦布告をしなくてはいけないという国際法やルールを知らずにした事ですが、清国の多くを植民地化し多くの利権を持つイギリスは特に猛抗議してきました。

大久保は遣清大使となり北京に行きます。

清国との交渉は難航しましたが、清国が日本側の出兵費用を払う事で台湾から日本兵が撤退すると約束しました。

台湾出兵は、それまで中華思想（清国は文明の中心の華であり、周りの国は野蛮であるという思想）から近隣諸国を見下していた清国に対する、日本の抵抗であり自己主張でした。