河井春穂さん(大学同期生)主宰の「百樹蕾」に参加しました。発行は年4回(3,6,9,12月)。
ルールは各回、7句と短評(感想)の投稿です。すべて無審査ですが、初心者は河井さんが指導してくれるので助かります。短評を書くために、皆さんの7句を何度も何度も読み返し、ネットで調べたりするので、これが一番勉強になります。
下記に森の投稿分を2冊分アップします。紙は縦書きですが、本サイトは横書きになっています。
■百樹蕾歳時記■森短評(感想) №215 R5(2023)6.1
吾と妹の誕生日なりお元日 目 博子
一年で一番お目出度いお元日にはち切れそうな女の子を授かってご両親祖父母の喜びは如何だったでしょう。それがなんと奇跡の連続大ホームラン!やがて才媛姉妹は近所の評判となり学校の誇りとなりお二人の職場は歓喜に満ち、遂に本句が百樹花集の冒頭を飾ることになりました。
元旦やマスク下げ酌む祝い酒 主森 英久
コロナ2類何するものぞ!P大統領の妄想を打ち砕け!マスクをぐっと下げて親しき友と酌み交わす元旦祝い酒。年末コロナ罹患の評者はこの句で蘇りました。若き侍JAPAN祝優勝!アメリカ発の野球はチェコ共和国まで広がった。日本発祥の最高の俳句文化で世界の文化レベルを引き上げ、平和な地球を取り戻そう。
万物の影のひれ伏す初日かな 野口 順子
初日の宇宙の荘厳な大スペクタクル。静かに顔を見せる太陽と無言の万物とのパントマイム。万物の太陽に向かう半身は明るく暖かい。万物が背負う影は暗く冷たい。元始、女性は実に太陽であった。女性生命の内なる太陽は未来永劫煌々と光り輝く。万物の影は女性の内なる太陽にひれ伏しました。
宝くじ皆で買いたる女正月 伏木 友子
女正月は1月15日の小正月の頃。 昔のお母さんは、大掃除やおせち料理作り、年賀客の接待で、年末年始は超多忙でした。今の時代お母さんだけが忙しいというのはあり得ない。お掃除はみんなで、おせちはデパートで、年賀客はコロナだから断る!宝くじはネットで買い一億円は振込みに。
受話器とり息はずませて初日かな 米山 進
門松を拝しているのは二羽の鳩
坂道をとことことこと初雀
母炊きし天の香りや正月米
お正月四句。◇元日早朝の電話機に駆け寄って受話器をとり「息はずませて」会話するお相手は海外のご家族でしょうか。◇門松を拝しているのは仲良し二羽の鳩。ふたりは年賀客のつもり。◇坂道をことことことと下りてくるのは眼を瞑っていても初雀とわかります。◇お母様が炊く正月米は馨ぐわしく尊く懐かしい。感謝の涙が溢れます。
凍(いて)星座未知の声呼ぶ億光年 出佐 凡十里
本句は思惟の限界を超える果てしない大宇宙を詠んでいる。評者は若き日、眠れぬ夜は眼を瞑り宇宙に想いを馳せるとやがて深い眠りに落ちることを知った。心理学書や禅書は全く導眠剤にならなかった。宗教なき科学は不具であり、科学なき宗教は盲目である(アインシュタイン)。現在使用中の勝れた導眠剤は、生命の小宇宙に関する法華経の題目であり、脳と喉と胸と胎と脚を順に休息させる大良薬です。
初参り青天の道ふみしめて 牛丸 美代子
「青天の道ふみしめて」「母からの指輪と共に」「釈迦堂を独り占め」「穴八幡宮に響く読経」「列の人長々続く」の初参り5句。次に家に籠もって無心に「石けんの兎仕上げて」。結びの句「大寒に友と登りし山思ふ」に心踊る。なるほど安全祈願も開運彫刻も全ては友との山行の歓びを詠うためだったのだ。
白魚の豊漁続く今年かな 大野 雅之
白魚の豊漁まことにお目出度うございます。ネットの市場魚貝類図鑑では豊漁県を紹介していました。東京湾は大漁なのですね。評者は静岡県の水産直売所が馴染みのお店ですが、昨年末、稀に見る不漁と言われ驚きました。静岡県でも浜名湖は大丈夫らしいです。評者も白魚丼と美酒で豊漁祝いの俳句をぜひ詠みたい。
姉妹一体のごと青き踏む 河井 春穂
「姉妹一体のごと」の「一体感」が美しく新鮮。WBC侍ジャパンが対メキシコ戦で9回裏に見せた大逆転劇!栗山監督と全選手が信頼と愛情で結ばれ最高の「一体化」を生みました。名画のような本句の姉妹も信と愛で結ばれています。野山に出かけて青々と芽生えた草を踏みながら遊ぶ「青き踏む」。春穂庭園の空気はフロリダ球場と一体です。
寒に耐え蕾膨らむ檀香梅 川田 久一
檀香梅の花言葉はかなり意味深長で、「私を見つけて」「永遠にあなたのもの」。花は梅に似て、香りは強く白檀のよう、食べたり油を取る事もでき、木は薪や爪楊枝、枝葉は染色に使えます。「寒に耐え」開花は3~4月。百樹蕾諸兄姉に檀香梅の「蕾膨らむ」枝を贈りたい。
デジタルに取り残されし去年今年 木下良子
評者はサラリーマン人生の後半期にコンピュータ部門へ移り、プログラミングもやりました。そのため会社寝泊まりは屢々でしたが過労死せずなんとか卒業。鹿沼生活26年を超え、今は里山で畑作と句作中心の刺激的な毎日を堪能しております。皆さまデジタルは程々で・・・。
初春やようやく思ふ死と生と 木村 安江
「生も歓喜、死も歓喜」という有名な言葉があり評者は人生スローガンにしています。生老病死を免れないのは万人の性ですので、「初春に死と生を思ふ」のは歓喜であり希望であり、迷わない健康長寿の最上の生活法と確信します。されど光陰矢の如し、季節の巡りは年々加速度を増します。初春の俳句生活が幾久しく続きますように!
(森 正之)
森 正 之(鹿 沼 市)
🌸百樹花集🌸
バレンタイン連翹ゆたか六花亭
ホワイトデーミモザの恋の物語
菜の花や夢は晴れ野を駆け昇り
舞上れ空飛ぶクルマ日輪草
蒼天のドローンを回す鼓草
天空にふらり風船福寿草
百樹蕾百万本のバラの海
■百樹蕾歳時記■森短評(感想) №213 R4(2022)12.1
乱舞して噴水素っ気なく止みぬ 野口順子
乱舞するローマの噴水にお休みの時間が訪れ素っ気なく止まりました。脇のベンチでは王女様が深い眠りに落ちています。自由奔放な王女と一日の休日を付き合った私は、名車ベスパスクーターの後ろに王女を載せ、正直の口を愉しみ、船上パーティからふたりで川に飛び込みました。気高く美しく気品に満ちた王女様はやはり俳句も嗜むのですね。
雷轟やしがみつく手にしがみつき 伏木友子
14号台風で昼過ぎに雷轟が襲いかかり最初の一撃で雷に打たれたように殆ど失神しました。しがみつく手にしがみつき漸く蘇生しました。あなたが居なかったら永遠の眠りについていた事でしょう。熱い掌に包まれて無上の幸せを噛みしめました。
西日濃し負けてはならじわが楽天 米山 進
仙台育英学園高校優勝おめでとうございます。来年は東北楽天ゴールデンイーグルスのダントツ優勝を祈ります。応援しています!楽天モバイルの強力電波のおかげで、今年は中学2年生職業体験のウエブサイト制作活動を、楽天スマホ1台で7台のパソコンに電波を飛ばし楽々とやり遂げました。ソフトバンクだけには負けないぞ!
白馬秘め新緑映す御射ヶ池 出佐凡十里
御射鹿池(みしゃかいけ)は検索で長野県茅野市豊平 (奥蓼科)と出て来ます。グーグルマップ上、白馬まで百キロの距離ですね。蓼科は学生時代写真部の合宿で訪れ、白馬岳は二十歳台後半、後立山縦走で頂上に立ちました。いつか新緑映す池畔に佇み、白馬秘める御射ヶ池を目に焼き付けたいものです。そして白馬ハイランドホテルに戻って温泉に浸かりコロナ支援ポイントを使い切りたいと思います。
弦の音響く真夏のコンサート 牛丸美代子
弦楽四重奏でしょうか。ピアノは?ステージは屋外?弦の音が響きわたる真夏のコンサート!リアルの演奏会は魂の奥底に響き渡ります。涙は生の演奏以外では溢れません。ごく最近地元のホールでチェロとバンドネオンの合奏を聴く機会がありました。流麗なチェロと響き合うバンドネオンは真正パイプオルガンの重奏低音そのものでした。
露草の花かすかなる恋の彩 大野雅之
牧野富太郎「原色少年植物圖鑑昭28」の説明「つゆくさ 一年で枯れる雑草で花は美しい(中略)夏の朝、あい色の花がさき、おしべの形がいろいろある。黄色でめだっている」。万葉集(巻10 2291)朝(あした)咲き夕(ゆうべ)は消(け)ぬるつき草の消(け)ぬべき戀(こひ)も吾(あれ)はするかも 万葉時代も現代も恋のときめきに彩られるのが人生ですね。
鴨来たり地図を開きて旅心地 河井春穂
鴨がやって来ると地図を開き無性に鴨たちと旅に出たくなる。鴨たちは北海道で食べ物が少なくなると本州へ移って来るという。本州で生まれ一生そのまま過ごす鴨たちも多いと思います。ネット上は鴨情報満載ですし、わが家はいつの間にか鴨の陶器・彫刻・アメリカ土産でいっぱいになりました。いつか目の醒めるような鴨俳句をものにして旅心地・夢心地を味わいたいものです。
尾根に立つケルンに小石加えけり 川田久一
ケルンwikiは「高地、稜線、山頂付近に人が組み立てた積み石で、目的は四種のいずれか①埋葬場所の明示と慰霊②山頂の明示③特定ルートを示す道標④趣味で石を積み上げた作品」と説明しています。この句は慰霊の句でしょうか。「小石」に万感の思いが込められています。重いです。
時計草巻き戻したき幼き日 木村安江
ドラえもんに時計草を出してもらって巻き戻せば幼き日に戻れます。評者(森)が孫娘を観察した結果と生物学上の定説(福岡伸一博士)に依れば、幼年時代の女性は太陽のように万能です。彼女は己れに不可能は無いと信じており、怖いものは何一つ無いのです。孫娘は祖母の鏡です。孫娘もそのまんま大きくなってやがてドラえもんの時計草を懐にすると、お花とスイーツとお寿司がいっぱいの星の国の王子さまに愛されて俳句三昧の日々になりました。
夏来るぶっかけ蕎麦に黒七味 目博子
東京人がこれほど豪快な句を詠むとは!わたしは蕎麦天国の鹿沼に住んでいます。蕎麦畑が広がり、街は蕎麦屋さんだらけ、村には「そば処」があり、直売所も蕎麦で溢れています。各家庭には蕎麦打ち用具が一式備わっていてご主人も奥さんも自分たちの蕎麦が一番旨いと広言しています。夏来たりなば、ぶっかけ蕎麦に黒七味をどーんと食べに鹿沼へどうぞ!
なじみ床日焼け具合を賞めにけり 主森英久
外へ出て俳句に精進した健康日焼けを賞賛されたのですね。七句を辿ると、連山の月代(さかやき)の緑の変化に目を瞠り、町内で友と語り合い、畑に一本も雑草を許さず、麦畑を渡る風の音に耳を傾け、手花火を囲むわが子らの成長を愉しみ、畑に共棲する大蟻小蟻を愛でて、ご褒美は「俳句焼け」の絶賛でした。腕の立つなじみの床屋さんは目も高い。
(森 正之・短評)