〈文化〉 ドローンの可能性
榎本幸太郎(国際ドローン協会代表理事)2023年8月17日
簡単に入門でき奥深い面白さが
ドローンを持つ榎本さん
手軽に空撮が楽しめる
皆さんはドローンを知っていますか。最近では、スポーツの試合やコンサートなどの空撮だけでなく、被災地などへの物資の運搬、橋梁やダムなどのインフラの点検などにも利用されるようになってきました。
多くの人は“ラジコンの進化版”だと思っているかもしれません。実は“空の産業革命”ともいうべき潜在力を秘めていると考えています。
そんな、ドローンの面白さや可能性を伝えたく、近著『ドローン超入門』(青春新書)を出しました。どこで飛ばせるかなど、初心者向けの注意点も載せてあります。
最近のドローンは非常に高性能で、重さが100グラム未満のトイドローンでさえ高画質カメラが搭載され、自律・自動飛行が可能で、リターンホーム機能(自動的にスタート地点に戻ってくる機能)もあり、初心者でも簡単に空撮などが楽しめるようになっています。
近著の中でも、トイドローンで空撮した動画(https://youtu.be/kgdmf69_Zj8)を紹介しています。見てもらえれば、トイドローンでもここまでの映像が撮れるんだと納得してもらえると思います。
ただ、100グラム以上のドローンは航空機となり、航空法で飛ばし方などが細かく規定されています。100グラム未満であっても、人と接触すれば相手にケガをさせてしまいます。人の多い場所で飛ばすのは危険ですし、周囲の建物や車などにぶつからないように、気を配らなければなりません。また、自治体や公園などの管理者が禁止している場合もありますので注意が必要です。
期待が高まる農業分野
ドローンが利用できるのは、空撮だけではありません。昨年、利根川のヨシ焼きに初めてドローンを使いました。ドローンに搭載した赤外線カメラで監視するとともに、スピーカーで避難を呼びかけたのです。
上空からアナウンスをすることで、こちらが燃えているので逆方向に逃げてくださいとか、こちらには近付かないようになどと知らせました。また、赤外線カメラで燃え残っている場所をチェックし、延焼を防ぐこともできました。このように、ドローンで安全レベルを上げることができるのです。
地震などの災害時、災害無線などで避難を呼びかけますが、実は地形の影響で聞こえない場所が多くあります。そこで、ドローンをゆっくり飛ばして避難を呼びかければ、そんな心配はなくなります。子どもたちの登下校時の見守りや、施設の巡回警備にも役立ちます。多くのカメラを設置するより、メリットがあるかもしれません。
また、一番期待が高まっているのは農業分野。就農人口が減り、高齢化が進む中、人手の代わりにドローンの活用が期待されているのです。例えば、農薬や肥料の散布。手作業でまくのは大変です。でも、ドローンであればゆっくり飛びながら、満遍なくまくことができます。
また、特殊なカメラと連動させれば、作物の育成状況に合わせて肥料の量を変えることも可能です。田んぼや畑ごとに収穫量を均一化でき、使用する肥料の無駄をなくすこともできるのです。
屋外でドローンを操縦
生活必需品への潜在力
昨年、法改正によって、ドローンの「有人地帯での補助者なし目視外飛行」が認められるようになりました。もちろん、誰でも自由に飛ばせるわけではありません。第一種機体認証を受けた機体を、一等無人航空機操縦士の資格を取得した人だけが、飛ばすことができます。
これによって、どう変わっていくのか、国土交通省の説明によると――。
スタジアムなどでのスポーツ中継、映像撮影のための空撮が可能になります(これまでは競技をしている人の上空を飛ばすのは不可でした)。市街地や山間部、離島などへの医薬品や食料品、生活必需品の長距離輸送が可能になります(ドローンを見ながら飛ばす目視飛行でなくても可能になったため)。
現在、一等の取得者は全国で150人程度という狭き門。学科も実技も非常に難しいのですが、先月、障がいのある一人の高校生が合格しました。
実は、この資格、彼女のような障がい者にとってのバリアーをなくすことが可能だと思っています。遠隔操作が可能になるため、自宅のコントローラーを使って、遠隔地のドローンを操作することができるのです。
今後、ドローンは、農業・物流・点検・空撮・警備・測量・災害調査など、いろいろな分野で利用されていくでしょう。まさに生活必需品になる潜在力を秘めていると思うのです。=談