「延命」を希望せず、点滴の継続を望む家族
1.職業
2.業務分類
3.施設内看護の年数
4.訪問看護の年数
5.経験内容
Cさんは90歳男性で、長期にわたる認知症のため要介護5の状態。訪問看護を利用し、家族による在宅介護が行われていた。やがて嚥下困難となり、経口摂取ができなくなったことから入院。しかし、症状が改善せず、医師から家族に対して胃瘻造設が提案されたが、家族は高齢を理由に受け入れなかった。なお医師・訪問看護師は、Cさんが認知症であるため胃瘻造設の意思確認は行っていない。
その後、Cさんは家族の意向で退院し、在宅で終末期を過ごすこととなった。しかし、「水分が入らないのは心配」という家族の声を受け、Cさんは毎日、訪問看護で点滴を受けている。血管確保が難しく、点滴針の刺入時、Cさんは「痛い」と発語することが多くあった。また、体位によって点滴の滴下速度が変わりやすいことを家族が不安に感じているため、点滴中は体位変換が行われていな点滴を施行するようになってから、Cさんには浮腫が出現し、徐々に増強。同時に、圧のかかる部位の褥瘡発生も危惧されるようになった。
家族は「単なる延命”は希望しない」と言う一方で、命綱を絶つようなことはしたくないと考え、点滴を継続してほしいとの思いを持っている。しかし、浮腫などの随伴症状を考えると、「Cさんにとって点滴が最善な医療行為であるのか」という疑問が生じる。
・倫理的視点からの問題点・
a:治療方針について、本人の意思を知る努力や家族との話し合いが行われていないまま、家族の希望により点滴が続けられている
b:家族は“単なる延命”を希望していないが、点滴の治療効果について説明がされていないために、適切な判断ができていない
c:体位変換がされず、また、浮腫の増強があるなど、本人の安楽が保たれていない
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6.出所
「事例で考える 訪問看護の倫理」 医療人権を考える会著 日本看護協会出版会 p69