伝統的療法に頼る患者
1.職業
訪問看護師
2.業務分類
3.施設内看護の年数
4.訪問看護の年数
5.経験内容
Wさんは伝統的治療に従っているベトナム人。多くのベトナム人は、中国人のように、陰と陽の概念を信じている。この概念は、宇宙が積極的な力と否定的な力とのバランスから成り立ち、健康とは、この均衡状態に他ならない、とする点にその特徴がある。もし、これらの力の間に不均衡が生ずれば、病気が結果として生じるとされる。また、一般的に受け入れられているが、Wさんも食事と医療はつながっている(医食同源)と考えている。年配のベトナム人は、よく漢方医に相談に行き、西洋医学の治療方法を伝統療法と組み合わせる。例えば、Wさんの娘は、ハーブを西洋医学の医薬品と混ぜて使うが、医療者はそうした治療方法が危険であることを彼女に教える必要がある。多くのベトナム人は、痛みと病気というものは、がまんすべきことであり、したがって、鎮痛剤を処方すべきではないと信じている。これを知れば、Wさんがなぜ鎮痛剤を2錠、胃炎を抑える薬を4錠処方するかが明らかになる。たぶん、医師は、患者が胃炎の薬を飲んでいないから、それが聞かないのだと思うだろう。
Wさんの娘さんとその息子は、Wさんを家で看取ることを考えている。家族は、彼らがいつでも、看取りの方針を変えることができること、また、ホスピス・ケアは、在宅でも院内でも可能であることを知る必要がある。
6.出所
Leslie Neal-Boylan, Case Studies in Nursing. Clinical Case Studies in Home Health Care, Wiley-Blackwell, 2011. p.117