人工呼吸器を装着した療養者の外出の支援に危険を感じている
1.職業
訪問看護師
2.業務分類
3.施設内看護の年数
4.訪問看護の年数
5.経験内容
Nさん、60歳男性。ALSのため気管切開し、人工呼吸器を装着している。体幹の姿勢保持能力は消失しており、座位バランスがとれない。
妻と2人暮らしであるが、妻が働いているため日中は1人である。訪問看護師、介護士、リハビリテーションのスタッフが訪問し、在宅でケアを行っている。病状や人工呼吸器を使用している状況を考えると、ベツド上での生活が安全であるが、車いすへの移乗やトイレでの排泄はNさんや妻の希望があり、訪問看護師や介護士がサポートして行っている。また、病院でのリハビリテーションを希望していることから、訪問看護師が通院時のサポートをしている。
Nさんは「外出したいときにそれができる権利が保障されるべき」と考えており、「希望どおりに行動できることが本人のアイデンティティを支え、生きる気力につながっている」と訪問看護師は考えている。
Nさんの外出は主治医、医療関係者の話し合いによってサポートし、安全確保のための工夫や配慮をしている。
しかし、訪問看護師は、人工呼吸器による呼吸管理を行っていて座位保持が困難な現状において、無理をして外出することがいいのかどうか、危機回避の観点から疑問を抱いている。
訪問看護師として「外出への意思を尊重したい」と考えているが、安全について不安を持っていることを本人や妻に率直に話していない。
本人の病状等を踏まえ、関係者全員(本人、家族、主治医、訪問看護師、介護士、ケアマネジャー、リ八ビリテーションスタッフ、医療機器メーカー担当者等)による安全対策会議を実施していない。
本人の“自己責任"が問われることがないよう、家族、主治医、訪問看護師を交えて危機回避の観点で話し合い、合意が得られていない、
6.出所
杉谷藤子、川合政恵監修、医療人権を考える会著『事例で考える 訪問看護の倫理』(日本看護協会出版会)、2015年、p.121.
7.キーワード
#ALS #人工呼吸器 #家族 #安全対策会議 #自律尊重原則 #無危害原則