納得できる説明を受けられないと家族から不満を訴えられた
1.職業
訪問看護師
2.業務分類
3.施設内看護の年数
4.訪問看護の年数
5.経験内容
Kさん、58歳男性。肺炎で入院後、経過良好となり退院。しばらくは通院していたが、体力低下で通院困難との申し出があり、入院先の病院がP医師のクリニックを紹介し、同時に訪問看護の要請がなされた。肺炎はよくなったものの、次々と新たな病気が発症し、訪問看護師は入浴の介助や観察に努めた。10カ月ほど経過したころ、主治医となつて診察を続けていたP医師より「肺がんの疑い」と診断された。
Kさんがこのように診断されたことで家族は「信じがたい」と非常に驚いて、「セカンドオピニオンを得るため、他の医師の診断を受けたい」と主治医に希望を伝えたところ、Q医師を紹介され再診断が行われた。その後、診断結果がQ医師から主治医に送付され、家族は主治医から説明を受けた。しかし、家族が最も知りたい腫瘍マーカーのデータについて説明はなかった。
そのため「再度主治医に説明を求めているが、説明がない」と、訪間の都度訪問看護師に不満を訴えた。
訪問看護師は、そのことを主治医に伝え、説明を依頼したが、主治医は「データについてはすでに説明しているが、あの家族は説明してもわからない」と不快な表情を示し、訪問看護師が求めても新たな診断結果やデータについて、家族に説明はなかった。
訪問看護師は家族の不安や不満な気持ちを察して放置できず、自らQ医師に会い、説明を受けて、家族に伝えようと考えた。
主治医の行う本人・家族へのインフォームド・コンセントの場に訪問看護師が自分も同席できるように配慮していない。そのため、納得のいく説明を受けるための支援もできていない。
診断内容を訪問看護師が知つたとしても、本人・家族に説明することはできない。セカンドオピニオンを受けた医師から本人・家族が直接説明を聞けるような配慮(相談)がされていない。
適切なインフォームド・コンセントがなされていないことから、本人・家族が今後の治療の意思決定もできない。
6.出所
杉谷藤子、川合政恵監修、医療人権を考える会著『事例で考える 訪問看護の倫理』(日本看護協会出版会)、2015年、p.106.
7.キーワード
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