「病状を知られたくない」と療養者が介護保険の利用を取り下げた
1.職業
訪問看護師
2.業務分類
3.施設内看護の年数
4.訪問看護の年数
5.経験内容
Jさん、75歳、気管がん。病院の退院調整看護師より、ADLの低下から介護保険の利用を申請するよう勧められ、認定調査を受けて受理された。その後、退院前の担当者会議がJさん宅で開催されることとなり、病院の医療スタッフ・在宅サービス事業者とともにJさんの病状経過等について情報共有をした。
Jさんと家族には事前に関係者が情報共有するということについて説明し同意を得ていたが、Jさんは「自分の病気についてケアマネジヤーなど医療関係者でもない人に知られることがつらい」との思いから、その後市役所で相談し、介護保険の利用を取り下げてしまった。
訪問看護師は、Jさんの「医療関係者以外には知られたくない」という思いを理解しないままに、情報を共有したことに問題があつたと悔いている。
療養者によつては、在宅サービス事業者にも自分の病気に関することを知つてもらった上で、サービスを受けたいと思う人と、そうでない人がいるため判断は一様でなく難しいが、関係者による情報共有は行わなければならないことと考えて悩んでいる。
関係者間の情報共有について同意を得ながら、具体的に“何のため”、“どのような情報”が共有されるのかについて説明が不十分に思われる。
関係者に個人情報の保護(守秘義務)がある旨の説明がなされているのか。
関係者に療養者の人格権の尊重についての認識が不十分ではないか。
介護保険の利用に当たつて、サービスの仕組み。内容、サービス提供にかかわる職種等についての説明が行われていない。
6.出所
杉谷藤子、川合政恵監修、医療人権を考える会著『事例で考える 訪問看護の倫理』(日本看護協会出版会)、2015年、p.100.
7.キーワード
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