内服治療を拒む本人と困惑する家族にどう対応すればよいのか
1.職業
訪問看護師
2.業務分類
3.施設内看護の年数
4.訪問看護の年数
5.経験内容
Fさん、68歳男性。心不全のため治療中であるが、服薬を拒み、病状悪化のため入院治療となつた。入院中も治療薬をごみ箱に捨てたり、飲んだふりをしてちり紙に吐き出すなど内服拒否の行為が見られた。
退院後、訪問看護を受けてしばらくは内服を継続していたが、ある日「薬はたくさん飲みました。あまり効果は期待できないので、もう薬は飲まない。それで悪くなつても構わない。それが私の運命だ」と話し、すべての薬を服用しなくなった。
病状が悪化する中、訪問看護師はFさんに内服の効果と、その必要性を繰り返し説明したが、薬の話になると表情が険しくなり、「もう訪間に来なくてもよい」とさえ言われた。
家族は「薬は飲んでほしいし、必要なら入院もしてほしい。もつと長生きしてほしい」と望んでいる。主治医は「できるだけ内服してほしいが、本人に拒否の気持ちが強ければ仕方がない」と考えている。
Fさんは薬を拒否し、もう何日も内服をしていない。ある日、介護士から「こっそ
り食事に混ぜることで数個は内服できているのだが、特に大事な薬はありますか」という問い合わせがあつた。
訪問看護師は、これまでの体験から、服薬の必要性について説明すれば、Fさんの拒否態度も変容するという自信があつた。
しかし、その困難さに直面し、冷静に対応策を見出すこともできず、自分の非力さを一人で悩んでいた。
本人がなぜ薬を拒否するのか、訪問看護師|まその思いをじつくり聞いていない。
家族の気持ちを本人に伝え、よく語り合うよう勧めていない。
:「本人の了解のないまま薬を食べ物に混入すること」|ま適切とはいえない。
6.出所
杉谷藤子、川合政恵監修、医療人権を考える会著『事例で考える 訪問看護の倫理』(日本看護協会出版会)、2015年、p.82.
7.キーワード
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