いつでも自由に帰宅できると思い、夫婦は施設入所をきめたが
1.職業
訪問看護師
2.業務分類
3.施設内看護の年数
4.訪問看護の年数
5.経験内容
Dさん夫婦、夫86歳、妻80歳。共に要介護1・認知症自立度Ⅱaで二人暮らしである。夫は肺気腫・腰痛があり、妻は腰椎圧迫骨折で鎮痛剤を処方されているが、自己管理ができない状態である。炊事・掃除は介護士、入浴介助や薬の管理などのため週2回訪問看護を受けている。
看護師は訪問時の様子から、Dさん夫婦は認知症ながらもしっかりとした態度で対応していると捉えられたが、夫婦2人とも物忘れが激しく、真夜中に探し物が見つからないなどと言つては介護士やケアマネジャーに電話をかける行動などをとり、関係者を振り回している。
県外に住む子どもたちは両親の様子を耳にし、周囲の人に迷惑をかけていることから、二人暮らしは生活上困難であり危険も伴うと心配し、施設入所を希望している。
主治医やケアマネジャーも同じように思い、施設入所が適切と判断している。その後、子どもたちは両親を説得し、両親一緒に施設入所することを決めた。しか
し、Dさん夫婦は施設そのものの理解ができず、入所しても夫婦でいつでも自由に帰宅できるものと思い込んでいたので、不安を訪問看護師に訴えた。
認知症であるという理由から、医師はDさん夫婦の意思確認をしないまま施設入所することを決めてしまつた。訪問看護師は、在宅療養サービスの活用次第では家での夫婦二人暮らしが可能ではないかと思うが、主治医やケアマネジャー等との認識に違いがあることが気になつていて言い出せない。
夫婦のための生活の場はどこが適切なのか、関係者間で協議されていない。
夫婦に対して施設の説明がわかりやすく行われていない上に、施設入所についての意思確認がされていない。
訪問看護師は夫婦が施設入所に必ずしも納得していないことを家族にも、ケア関係者にも言い出せていない。
6.出所
杉谷藤子、川合政恵監修、医療人権を考える会著『事例で考える 訪問看護の倫理』(日本看護協会出版会)、2015年、p.73.
7.キーワード
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