積極的な治療を望まない家族の気持ちを医師に伝えられなかった
1.職業
訪問看護師
2.業務分類
3.施設内看護の年数
4.訪問看護の年数
5.経験内容
Bさん、93歳女性。脳梗塞後遺症で要介護5判定、週2回訪問看護を利用している。長男夫婦、孫との4人暮らしで長男の妻Pさんが介護をしている。もともとPさんとの関係がぎくしゃくしており、Pさんの体調面も万全ではなく介護力に不安があつた。
状態が急変し病院へ救急搬送されたが「施す術がない」と説明を受け、入院する
ことなく自宅に帰つた。その時点で家族は自宅で看取ることを決め、長男夫婦から訪問看護師にこれ以上積極的な治療は希望しないという思いを伝えた。しかし、家族は主治医には遠慮があり、積極的な治療を望まないということを伝えていなかった。
Bさんの意識レベルが低下しているため、主治医は本人から意思確認はできておらず、家族にも確認をしていないまま、点滴注射や経管栄養を勧め、毎日1回の経管栄養が開始となつた。
訪問看護師は家族、特にPさんの介護負担が大きいと感じており、これ以上治療を継続して介護生活が長くなることは、Bさん、家族にとつて決してよい状況ではないと思つている。
そこで、訪問看護師は家族の思いを代弁し、Bさんのために何が最善かを話し合うことを提案しようと試みたが、医師にうまく伝えられなかつた。
訪問看護師は、在宅療養が決定した時点で、家族の思いを医師に伝え、治療方針の合意が得られるように家族と話し合いを持つことを提案していない。
訪問看護師は、医師の判断に対して自分たちの気持ちを表現することをためらって何も言えないでいる家族の気持ちを代弁しようと試みているが、十分に伝えることができていない。
本人、家族の意思を聴くことなく治療方針を決定している医師に対して、訪問看護師|ま対応できていない。
6.出所
杉谷藤子、川合政恵監修、医療人権を考える会著『事例で考える 訪問看護の倫理』(日本看護協会出版会)、2015年、p.64.
7.キーワード
#家族 #インコンピテント #善行原則 #医師・患者関係 #媒介者としての看護師