家族が介護の負担増のために認知症高齢者のリハビリ中止を求める
1.職業
訪問看護師
2.業務分類
3.施設内看護の年数
4.訪問看護の年数
5.経験内容
Nさん(89歳。男性)は長男夫婦と3人暮らし。認知症で日常生活全般に長男の妻Bさんによる介護を必要とし、訪問介護サービスを受け自宅で生活していた。Bさんは親身に世話をしているが、Nさんが昼夜問わず徘徊し、それがBさんの心身の負担になつていた。
昼、Bさんが目を離したすきに家の外を徘徊し転倒した。手足を強く打ち上下肢挫傷を負つた。入院治療を要し2週間程度入院することになつた。入院後、Nさんは一日中、寝たままで過ごすようになり、食物摂取や精神活動が徐々に低下してきた。担当医は、入院時治療計画に追加して、歩行訓練を指示した。入院10病日目からリハビリが開始となつた。Nさんはリハビリを嫌がつたが、介助することで少しずつ掴まり立ちができるようになつてきた。Bさんは、「家に帰つたら1人で看なければならない。家の外を出歩いたりすると大変だから、寝たきりのほうが介護しやすいのでリハビリをやめてほしい。
介護の負担がつらい」と医師に懇願しリハビリを中止することになり、その後上下肢の挫傷が治癒したため退院となつた。看護師はBさんが介護負担から、Nさんへの「リハビリをやめてほしい」と言つた気持ちも理解できなくはないが、一方Nさんにとつては、リハビリをして寝たきりにならないようにすることも必要と思われ、どうしたらよいのかと悩んでいる。
6.出所
杉谷藤子、川合政恵監修、医療人権を考える会著『事例で考える 訪問看護の倫理』(日本看護協会出版会)、2015年、p.