患者のQOLの低下
-認知症高齢者に対する家族の介護の負担-
1.職業
訪問看護師
2.業務分類
高齢者の医療選択
3.施設内看護の年数
4.訪問看護の年数
5.経験内容
私は訪問看護師としてある病院に勤めている。認知症を併発している高齢者Lさんの在宅看護に行ったところ、家族が、Lさんのおむつを重ねて、外せないように固定をしていた。
Lさんは、記憶力や判断力だけでなく、身体能力もかなり衰えているようにみえるが、介助があれば短い距離なら歩くことがもでき、尿意や便意を口頭で伝えることも可能だ。同居し、介護にあたっている息子夫婦の話によると、Lさんが排泄する時間が、いつも朝方や夕方の家事で忙しい時間に重なってしまって十分な介護ができないことや、Lさんがおむつの使い心地を気持ち悪がって外そうとすることから、おむつをしっかり固定した方がいいのではないかと考えたということだった。
しかし、Lさん自身はおむつを嫌がっており、このままおむつを固定された状態が続けば、衛生面や身体面で悪影響があるだけでなく、自分でトイレに行こうという自立意識も弱まってしまうので、改善した方がいいと私は考えている。一度、家族に「Lさんが自分でトイレに行けるうちは、おむつはなるべく使わない方がいいです」と伝えたが、娘さんは「そうはいっても、家族だけで介護するのは大変で、限界があります。いままで何とか自宅で世話をしたいと思ってやってきたんですが、施設や病院でされているような介護はとてもではないけど、できません」とつらそうに答えるばかりだった。
6.出所
ジーサプリ編集委員会編『事例でまなぶケアの倫理』(改訂2版、MCメディカ出版)、p.120.