訪問看護倫理とは
Visiting Nursing Ethics
わが国の医療は、要看護・介護高齢者の急激な増加を背景に「病院・施設から地域・在宅へ」という構造改革に迫られています。団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年、国の医療費は、現在の37兆円からその約1.5倍の54兆円に膨れ上がります。また、患者が病院に殺到することから、たとえ命にかかわる病気であっても、患者がこれまでのように病院で必要な治療を受けることが難しくなるとされています。
こうした医療の構造的な問題を考えるうえで、特に在宅ケアを担う訪問看護は、地域包括ケアの中核、すなわち、医療の持続可能な発展の礎石として、大きな期待が寄せられています。
在宅ケアは、病気の治療や延命を主目的とする施設内看護とは異なり、「限られた生命予後」のもと「豊かに行き果たすこと」を主な目的としています。しかし、その現状は、必ずしもこのような目的に適うものではありません。
たとえば、在宅ケアでは、依然として法的根拠のないまま家族や後見人等が患者の医療を「代理同意」しています。また、在宅ケアの現場では、延命治療の中止(尊厳死)に向き合うケースがありますが、家族がそれを容易に受け入れられるわけではありません。さらに、在宅ケアには「単独」「密室」での医療という側面が避けられないため、その臨床的判断の「透明性」が担保しにくくなるという問題も考えられます。
こうした在宅ケアの特徴を踏まえて、以下の倫理学的課題を挙げることができます。
倫理原則(自律、善行、無危害、正義、誠実、守秘)は、これまで施設内看護との関連で捉えられてきましたが、在宅ケアを担う訪問看護の文脈でその妥当性を再検討する。
在宅ケア固有の倫理学的課題の構造を具体的事例の収集に基づいて解明し、それを命題集にまとめる。
倫理学的課題の構造の解明と命題集の作成によって、訪問看護師が在宅ケアで直面するモラル・ジレンマに対応した、訪問看護の実務的指針の可能性を探る。
「訪問看護倫理」とは、以上の論点を課題とする、訪問看護の意思決定や医療行為に関する倫理を言い表しています。この問題を考えるには、広く国内外の関係機関、団体、訪問看護ステーション、研究者、特に現場で働いていらっしゃる訪問看護師の方々との連携が重要になります。
こうした理由から、わたしたちは、このポータルサイトを通じて、閲覧者の方々と訪問看護倫理に関する諸問題を共有し、共に思索を深めていきたいと考えております。
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