Announcement: Closing of RIKEN's Nanophotonics Laboratory

Our lab, Nanophotonics Laboratory, has been closed due to Professor Kawata's  retirement from RIKEN, We very much appreciate our friends' strong support, encouragement and friendship for the length of 13 years to NaPs and RIKEN.  Professor Kawata is still actively working as a Distinguished Professor at Applied Physics Department of Osaka University.  All other members also work in the different places around the world actively as scientists, professors, and R&D staff in companies.  

March 31, 2015


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理研の研究室閉室のご挨拶

河田 聡

元・理研主任研究員、近接場ナノフォトニクス・チームリーダー


2015年3月末をもって理化学研究所の近接場ナノフォトニクス研究チーム(通称NaPs)を閉じることになりました。2002年4月に河田ナノフォトニクス研究室を発足して以来13年、関係者の方々には大変お世話になり、ありがとうございました。これまでのさまざまなご支援に感謝します。私たちが理研で始めたプラズモニクス、メタマテリアル、先端増強ラマン散乱顕微鏡などは、その言葉すら当初はほとんど誰も知りませんでした。いまではこれらはフォトニクスの世界で大きな分野に育ち、Nature誌を初め多くの学術誌に毎号のように記事が載るようになりました。私達がこの分野を先導し、理研の先進性を世界に示すことができたなら、望外の喜びであります。


もともと私は、科学研究に専念するために理研に来たのですが、阪大において機構長やセンター長を命じられたため、最後まで兼務となりました。阪大と理研とでは別の研究をしたいと思い(それでなければ2ヶ所で働く意味がない)、理研では阪大で推進していたナノイメージングやバイオフォトニクスそしてナノカーボン関連の研究とは異なる新しいナノ光科学を模索しました。大河内正敏氏の理念に憧憬していましたので、理研から産業を創出したいと思い、特に新奇なデバイスの開発に挑戦する事にしました。論文発表もさることながら、特許を多く取得し、理研の経験者に教えを請うて自らベンチャー企業も創業しました。


13年の間には、実に多くの研究者や学生が研究室に所属しました。当初より研究員として参加した岡本隆之氏はプラズモニック結晶のレーザーなど多くの先駆的成果を上げ、またプラズモニクスの本も上梓されました。プラズモニック・レーザーは当時は早すぎて認められませんでしたが、最近では多くの人が先駆的研究として評価しています。加藤純一研究員は精密工学科出身の経験を活かしてエンジニアリング指向の研究を進めました。マイクロレンズアレイを使った3次元マイクロ構造の同時2光子造形などで成果を上げました。城田幸一郎研究員は化学系出身であり液晶研究のスペシャリストでしたので、2光子液晶レーザーなどの様々な液晶デバイスの開発をしました。


阪大基礎工電気系の助手をしていた田中拓男君は、研究室発足の翌年に理研に研究員として加わり、3次元金属ナノ構造形成の研究を行いました。作製された金属ナノ構造は光に対しては特異な機能を発現するメタマテリアルズと呼ばれます。今では多くの研究者がこの分野に参加していますが、私たちがおそらく日本で最初の研究チームです。田中君は2008年に河田研から独立し准主任としてメタマテリアルズ研究室を主宰しています。以上のプロジェクトは、理研の次世代ナノサイエンス・テクノロジープロジェクトの光チームとして研究を進めました。


ナノイメージング研究は阪大でのメイン・トピックスでしたが、理研の方々からの要望もあり阪大の井上康志氏が客員研究員として最初の準備をしてくれて、理研でも行うことになりました。阪大のポスドクであった早澤紀彦君を研究員として2004年に採用しました。Extreme Photonicsのプロジェクトのテーマの一つに取り上げていただき、私の主任研究員定年退職後も、早澤君にサブチームリーダーを続けてもらい、多くの成果を発表しました。


13年間の間に18人のポスドク研究員が参加し研究室の分野展開に貢献をしてくれました。一人ずつに多くの成果と多くの思い出がありますが、ここでは省略します。とくに私が主任研究員を定年退職するときには全員に転出を求めることになり、皆さんに苦労をかけてしまいました。しかしポスドク全員が理研を離れ、国内外で素晴らしい次の仕事を見つけられました。現在、最後のポスドクの熊本君は先端計測プロジェクトのポスドクに移ります。


研究室立ち上げ時に参加してくれた4人のポスドクについてだけ少し触れます。九大出身の武安伸幸さんはイギリス・ラザフォード研究所などを経験し、理研に参加してくれました。2光子光還元などで先導的な研究成果を挙げられました。東大出身の齊藤結花さんはイギリス・リード大学のポスドクから理研に参加してくれました。偏光ラマン分光とプラズモニクスを組み合わせてたくさんの独自の研究成果を挙げられました。ジン・フェンさんは中国・吉林大学から参加してくれました。プラズモニック結晶のOLEDと言うテーマを世界に先駆けて開拓しました。フェクラ・ヘディリさんはフランス・トロワ大学から参加してくれました。近接場顕微鏡をやりたいと言って研究室に来られたのですが、世界初のプラズモン・バンドギャップレーザーの論文を発表してくれました。現在、それぞれ別の大学で准教授として活躍されています。それ以外にも大勢の研究者や学生が理研河田研で研究を進め、そしていま世界中・日本中で活躍してくれています。そのネットワークは研究室終了後も私たちの最も大切な財産になります。


私が理研に来た理由の一つは、大学における雑務からの開放を期待してでした。大学入試(センター入試、前期、後期)から始まり、学部、編入、秋入学、留学生入試、帰国子女入試、大学院前期・後期ほか様々な形の入試にまつわる会議、試験作成、試験監督、採点、合格判定、配属会議、などなど、です。これに加えて一般の授業の試験、卒業判定、学位審査についても、同様です。これらは学部教育を受け持つ教員にしか分からないでしょう。さらに驚くほど雑務があり、教育と研究どころではないと感じていました。それと比べて、理研は朝永振一郎先生が文藝春秋1960年11月号に書かれたとおり、科学者にとって自由な楽園です(でした?)。しかし、学生のいない研究室には年度のけじめがなく、学生の卒業のないため人の移動も少なく、毎日毎日同じ人との締切のない議論の繰り返しになりがちです。その中で学習院大学理学部の協力研究室となり、毎年数名の学習院の学生の指導と授業をさせていただくことになりました。彼らは研究室に大いなる活力を与えてくれました。研究室で1年から3年を過ごした学習院の学生諸君、そして阪大の博士課程に在籍しつつ理研で研究に専念した院生諸君にも感謝したいと思います。もちろん、そのほかの大学から来て研究をして学生諸君、毎年NSFのナノジャパンプログラムで来た10人のアメリカの学生諸君も、大きな刺激を与えてくれました。


現実には私は最後まで阪大との兼務を続けることになりました。主任が留守の研究室を守る秘書さんは大変だったと思います。立ち上げ時から前半を助けてくれた佐藤理恵子さん、そして後半と主任退職後のチーム時代にさらに忙しくなった私を支えてくださった梶田さんには本当に感謝しています。


今の理研は、研究にいかなる間違いもあってはならないという萎縮感と、研究費が少なくなるかもしれないという不安の中にあります。しかし、科学の創出は間違いと失敗と研究費不足からも生まれます。間違いを恐れず不安を克服し冒険をしなければ、新しい科学は生まれません。装置や設備や研究費に依存することなく、自分自身の中から生まれるひらめきを大切にすることが必要です。間違ったことを言うことを恐れてはいけません。この13年間、研究室スタッフに私はこのことを伝え続けました。研究室出身の皆さんが新しい世界で萎縮することなく挑戦を続けてくれることを期待して、研究室を閉じたいと思います。


13年間における発表論文からのセレクション(一人1論文まで)

Y. Kumamoto, et. al, ACS Photonics, 1, 598-603 (2014). 

C. Chen, et. al, Nature Commun., 5, 3312 (2014). 

T. Yano, et. al, Nature Commun, 4, 2592 (2013). 

A. Palonpon et. al, Nature Protocol, 8, pp. 677-692 (2013). 

N. Hayazawa, et. al, J. Raman Spectrosc., 43, 1177-1182 (2012). 

A. Taguchi, et. al, Appl. Phys. Lett., Vol. 101, 081110 (2012). 

K. Furusawa, et. al, J. Raman Spectrosc., 43, 656-661 (2012). 

M. Okada, et. al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 109, 28-32 (2012). 

J. Ando, et. al, Nano Lett., 11, 5344-5348 (2011). 

M. Ozaki, et. al, Science, 332, 218-220 (2011). 

A. Tarun, et. al, J. Raman Spectrosc., 42, 992-997 (2011).

T. Yano, et. al, Nature Photonics, 3, 473-477 (2009).

S. Kawata, et. al, Nature Photonics, 3, 388-394 (2009).

Y. Cao, et. al, Small, 5, 1144-1148 (2009). 

N. Takeyasu, et. al, Appl Phys. A, 90, 205 (2008).

S. Kawata, et. al, Nature Photonics 2, 438-442 (2008).

T. Okamoto, et. al, Phys. Rev. B, 77, 115425 (2008).

J. Feng, Appl. Phys. Lett., 93, 051106 (2008)

T. Tanaka, et. al, Phys. Rev. B., 73, 125423 (2006).

F. Formanek, et. al, Appl. Phys. Lett, 88, 083110 (2006).

J. Kato, et. al, Appl. Phys. Lett, 86, 044102 (2005).

Y. Saito, et. al,  Chem. Phys. Lett., 410, 136 (2005). 

A. Ono, et. al, Phys. Rev. Lett, 95, 267407 (2005).

A. Ishikawa, et. al, Phys. Rev. Lett., 95, 237401 (2005).

K. Shirota, et. al, Appl. Phys. Lett, 86, 1632 (2004).


理研から去った人・去る人のリスト:

(名簿が整理できていないので、1年以上滞在した人に限ってます、かつ学生さんが含まれていません、ごめんなさい。間違いや抜けがあったらお知らせください。順不同です。)

斉藤結花

Fekhra H’Dhili

武安伸幸

Jing Feng

Janne Simonen

Florian  Formanek

石飛秀和

小野篤史

奈良岡亮

櫻井 篤

Alvardo Tarun

古澤健太郎

Chi Chen

田口敦清

熊本康昭


2015年3月20日