2010年5月のメッセージ

連休は ひねもすのたりのたりかな

最近のiPhoneのappsに「Sleep Cycle」というアプリがあります。夜寝るときにこのアプリをonしてiPhoneをベッドの隅においておくと、朝にはその一晩の睡眠の様子がグラフになって現れます。ベッド中で寝返ったり動いたりするとiPhoneの加速度センサーがそれを検出して睡眠度を示してくれます。だからどう役に立つかと聞かれても困るのですが(目覚ましとしては使えます。ただ、私は目覚ましが一切要らない人です)、眠っている間の自分の行動パターンが一目で分かることは、面白いと思います。

予想通り、このアプリによって私の眠りが相当浅いことが分かりました。寝付きはいいのですが眠りは浅く、一時間毎に動き回っているようです。いわゆるREM(Rapid Eye Movement)睡眠なら、眼球だけが動いて筋肉は動かないはずですが、グラフによれば私は一晩中動き回っています。

私は朝がやたら早くて、新聞配達が来るのを毎朝玄関で待ち構えています。目覚める時間は歳を重ねるにつれてどんどん早くなり、同世代の人達とはいつも早起き自慢で花が咲きます。そして「Sleep Cycle」を見せて、iPhoneの自慢話へと話が進みます。

私は、目覚ましが全く要らない人です。海外に行っても同じです。時差が8時間でも11時間でも、それがプラスでもマイナスでも、目覚まし時計なしで起きたい時間に起床ができてしまうのです。特技と言ってもいい、と思います。この「Sleep Cycle」にはとても爽やかな音楽のアラーム機能がついているのですが、私はいつもその前に起きてしまって、アラームよ早く鳴れと待ちます。ちなみに、会議でもセミナーでも居眠りすることはありません。その代わりじゃないけれど、欠伸はひどく止まらなくて、ごめんなさい。

一方、夜はとても弱くて、飲み会の後半はひたすら眠くて起きているのが大変です。最終電車で眠ってしまい、大勢の人が降りる途中駅で思わず降りてしまうことを繰り返しています。反省なき酔っぱらい人生です。

昼間でも、寝ようと思えばどこでも実に簡単に眠ることができます。アイ・マスクを鞄に常備していて、飛行機や新幹線に乗ったらこれを付けて眠ります [1] 。どうやら、私は暗くなったら眠くなり、明るくなればすぐに目醒めるようです。海外に行っても時差ぼけがないのは、暗くなると眠くなり明るくなると目覚めるからでしょう。移動中の飛行機や鉄道ではひたすら眠るので、現地に着くとすぐに活動ができます。

ところが、世の中には不眠症の方々が多くおられます。「致死性家族性不眠症」と呼ばれる遺伝性の病気があります。発病すると、全く眠ることができなくなるそうです。そして、眠らないと人は死んでしまいます [2] 。人はなぜ眠るのか?なぜ毎日眠らないと死んでしまうのか?科学的によく分かっていないそうです。人生の3分の1を寝て過ごすのは人生を無駄にしていて合理的でないとか、眠っている間に敵に襲われる恐れがあるので非合理だとかいった議論があるようです。私は、暗い夜には周りが見えず活動ができないので、動物は敵も味方も夜にはゆっくり休みなさい、と神様が教えてくれたのだろうと考えます [3] 。

「眠り」には昼間の疲れをとる以外に、もう一つ大きな役割があります。それは「夢」を見ることです。我が家の犬猫も夜中に吠えたり笑ったりしっぽを振ったり、とても賑やかです。夢のお告げは結構当たると言う人もいますし、夢占いというのもあります。私は残念ながら、夢の中でお告げが出てきた経験はありません。

ただ、「夢」とは経験に基づく無意識の願望ですから、「夢」に出てきたアイデアには覚醒時に悩んでいたことの答えであることも多いと、私は思います。折角の「夢」に出てきたアイデアは、その瞬間に夢から覚めて何かにメモらないと意味がありません。翌朝には、すっかり頭から消え去っていることでしょう。睡眠の浅い私は、いつも起きてメモをとります。それが何時であろうと起きてメモをとります。その後に、もう一度眠ることはありません。私のセレンデイップ王国は、私の夢の中にあるようです。だから、私の講演の2回に1回は、「夢」の話から始まるのです。これ以上の分析は、『夢判断』を書いたフロイトや『夢分析』を書いたユングに任せます。

というわけで、ゴールデンウイークは働きすぎずに、ひねもす(終日)うたた寝をして、夢の世界に遊びましょう。でも「羊が一匹、羊が二匹、、、」とは唱えないでください。言いにくくて、余計目が覚めてしまいます。英語で「One sheep, two sheep, three sheep、、、、」と数えましょう。sheepはすなわちsleep、「シープ、シープ、シープ、、、、」そう、寝息に聞こえるでしょう。

連休は 終日のたりのたりかな。

お休みなさい。SK

写真は、志摩観光ホテルからの見た連休の夕日。

最初の写真はSleep Cycleの画面。5月2日−3日。

[1] 先月のホームページの写真1で新幹線で撮られた写真があります。全員が熟睡しています。でも、アイマスクの人はいない!?

[2] D. T. Max, 「眠りの神秘」ナショナル・ジオグラフィック、2010年5月号。

D. T. Max, 「眠れない一族:食人の痕跡と殺人タンパクの謎」、紀伊國屋書店、2007。

[3] この例にあてはまらない動物はいくらでもあります。目が見えず地中に住むモグラの睡眠時間がどうして平均8時間なのか、などなど。

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