23.矢島十二頭記

 仁賀保氏が登場するモノとして、そこそこ知られているのが、『奥羽永慶軍記』の中に出てくる仁賀保氏と矢島氏との争いです。おそらくこれは『奥羽永慶軍記』の作者が「由利十二頭記」として伝わってきたものに加筆して軍記物に仕立てたものであると考えられます。小説として非常に読みやすいものですから、世に出る機会が多く、それをそのまま「歴史」として採用しているモノが多くみられます。

 ただ、私が思うに『奥羽永慶軍記』の由利諸党の項は、出典不明のどこから取ってきたの?それ???と聞きたくなるようなエピソードが多数散りばめられていて、贔屓目に見ても…という感じがします。かなり脚色が多いですしね。

 そもそも、『軍記』の由利諸党のネタ本であろうと考える「由利十二頭記」には2つのタイプのものがあります。「覚書」風のものと、「軍記物」風なものの2つですね。

 仮に覚書風の物を(A)、軍記物風の物を(B)としますと、『奥羽永慶軍記』はこの(B)の本をベースにし、どこからか採取してきた逸話をハメ、膨らませて書かれていると思われます。

 詳しいことは省きますが、私は(A)本の方が(B)本に比べて事実を伝えているように思うんですね。

 この項では、あらゆる「由利十二頭記」の中でも、私的に他の物のベースになっているのでは??。と思っている「矢島十二頭記」を見ていこうかなーって思っています。何故名称が「「矢島」十二頭記」になっているのでしょうか。それも理由があると思います。