もうすぐシニアカップ - スワコラム

Post date: 2017/11/01 8:30:51

最初の香港駐在のとき、ちょうど長野で冬季オリンピックが開催されました。J'sメンバーはリアルタイムでの記憶が薄い人もいるかもしれませんが、スキージャンプ団体の奇跡の逆転優勝シーンはニュースで観たことがある、と言う人は多いのではないでしょうか。当時はまだネットニュースやYoutubeもなく、海外でこれらの結果をいち早く知るには一日遅れで届く日系の新聞を待つしかない時代でした(香港で冬季オリンピックが地元メディアで話題になるはずもない)。

当時の香港には日本人向けのレンタルビデオ屋さんが何軒かあって、映画やドラマだけでなくスポーツ番組のコーナーに「オリンピック特集」もラインナップされていました。しかし即時に借りるには競争が激しく、オリンピック閉幕後に速攻で店に足を運んだものの2ヶ月待ち(!)とのこと。忘れかけていたころにようやく順番が回ってきて、まるで赤子を扱うようにビデオを後生大事に抱えて帰ったのです。たとえ数ヶ月遅れで結果が分かっていてもビデオで観る逆転シーンは感動します。3泊4日のレンタル期間中にこれらのシーンをいったい何回再生したことでしょう。実はこのとき、ウィンタースポーツを香港で観ること自体に違和感を感じたのも事実です。これは季節感の問題、つまり香港で観戦するには単純に「季節はずれ」だった、ということです。

一般的に日本人が過去の曖昧な記憶を思い起こす際、無意識のうちに「季節」を手掛かりとすることが多いのではないでしょうか。「記録的な冷夏だった夏」、「大型台風がたくさん上陸した年」など季節感あふれるイベント(或いは特異な自然現象)と結びつけることでそのおぼろげだった記憶が鮮明に蘇ってくることがあります。四季に富んだ日本で生活しているとこうした記憶を呼び起こす反復作業が自然と身につくのかもしれません。

対照的にシンガポールで暮らしていると、こうした便利な「記憶喚起装置」が発動することはまずありません。参照すべきが常に「猛暑」なのだから仕方ないでしょう。しかも、ここで生活していると「1年間」という時間軸で区切った場合、時間の流れの感覚に「居心地の悪さ」を感じます。これはひとえに季節の変わり目という節目がないため、本来それに慣れていたはずの体感とかバイオリズム(?)までも鈍ってしまうからだと思われます。

将来、シンガポールでの数々の出来事や思い出を時系列に並べていく、という作業をしたとするとそれは実に骨の折れるものになるに違いありません。

さて、毎年10月に開催されていたシニアアップ、今年は事情あって12月となりました。私は今回、熟慮に熟慮(?)を重ねた結果、香港のスーパーシニアに専念して出場することにしました。香港シニア皆さんのご好意に感謝しています。香港チームは旧知の方が多いものの、一緒にプレイするのは久ぶりなので当日は試合をこなしながら徐々に勘を取り戻し、少しでも香港チームに貢献できればと思っています。そして、目標は連覇することよりも怪我なく無事にゲームを終えて、美味しいお酒を皆さんと飲むことに尽きます。結果がどうであれ、年の瀬に暑いバンコクで飲むビールはこの上なく美味しいに違いありません。

諏訪