ホットハンドの誤謬 (スワさん)

Post date: 2014/07/31 4:17:36

みなさんの中には、ゲームの序盤で立て続けにシュートを決めるとその後のシュート成功率も高くなったように感じた経験(いわゆるホットハンド)のある人がいるかと思います。

果たしてこれは感覚的なものなのでしょうか。それとも何か科学的な裏付けがあるのでしょうか。

30年ほど前、アメリカの著名な心理学者がNBAのあるシーズンのゲームでのシュート数千本を統計分析したところ、フィールドゴール、フリースローのいずれにおいてもシュートが入る/入らないの順番は完全にアットランダムであるという結論を導き出しました。

これはラリーバードのようなスーパースターも例外ではなく、要すれば次のシュートが入る確率はコインの裏表のいずれが出る確率と同様に、直前に放ったシュート結果に依存しないというものです。仮にホットハンドが続いたとしてもそれは一時的なものであって、シュート回数を重ねていくとランダムな動きに収斂していくのです。

これが事実であれば、それまでシュートが入らなかったからといって次のシュートチャンスを躊躇する合理的な理由はありません。少なくとも確率統計的には。

バスケットボールという競技は例えばサッカーやラグビーと比べると「出会い頭」で勝利する可能性の低いスポーツだと思われます。一方でどんなに優秀なシューターを擁するチームでもフィールドゴールはせいぜい60%程度でしょうから、乱暴に言ってしまうと、仮に成功率が40%のチームであっても相手より1.5倍のシュートチャンスがあれば同じ程度に得点できる可能性があるということになります。

そう考えると、シュートチャンス、つまりはオフェンス機会をいかに増やすかということが勝つための近道のようにみえます。そのために思いつく戦略としては、

  • できるだけ時間をかけないで攻める(ファーストブレーク、アーリーオフェンス)
  • リバウンドをできるだけたくさん取る(特にオフェンスリバウンド)
  • ターンオーバーを減らす

ところが、ある一定以上のレベルともなれば相手も同じことを考えてくるはずなので、これらの戦略を容易に実行させない手立てが必要になってくる。つまり相手のオフェンス機会をいかに断つか、ディフェンスの巧拙が重要になる。そうなると次に考えるべきはこの堅いディフェンスを打ち破るためのさらなるオフェンス力で、今度はそれを阻止するためにさらに高いディフェンス力をつけて、、、、勝つための果てしないループは続いていく。

バスケットボールとは、こうした循環参照に陥りながら相手と駆け引きしていく「我慢比べ」のようなものであり、それゆえ地道に練習を重ねればどのチームにも勝つチャンスはあるのではないか。

だから奥が深くて、面白いスポーツなのだと思います。

諏訪