2013-2-9 中池見湿地に北陸新幹線を通す件に,生態学会から要望書

Post date: Feb 9, 2013 5:38:35 AM

世の中の自然保護,環境保全への意識は,私がこの分野に入って四半世紀,隔世の感があるほど向上し,市民権を得た.

しかし,まだまだ驚くようなことが頻繁に起こる.

ラムサール条約登録地の敦賀市中池見湿地の一部に新幹線を通す件しかり,近畿地方で唯一残存するアユモドキの生息場所上に京都府がサッカー場を建設する件もしかり.

中池見の方は,アセスで認められた程度の「距離」の計画路線の変更なので,新たなアセスは不要だとゴリ押しされている.しかし,山の湿地側にトンネルを掘るか(変更後の計画),外側に掘るか(元の計画)は,単に距離の問題ではなく,湿地の保全上,非常に重要な問題である.

これは「水は高いところから低いところに流れる」ということを理解するだけで,わかるはず.

日本生態学会自然保護専門委員会は,新たなアセスとそれに基づく計画を求める要望書を提出した.

産経新聞:新幹線ルート環境再調査を 生態学会専門委が要望書 福井・中池見湿地

福井新聞:中池見湿地の新幹線通過計画再考を 日本生態学会が国交相らに要望書

以下,後者を転載:

中池見湿地の新幹線通過計画再考を 日本生態学会が国交相らに要望書

(2013年2月5日午後6時30分)

ラムサール条約に登録されている福井県敦賀市樫曲の中池見湿地を北陸新幹線が通過する計画について、日本生態学会自然保護専門委員会は4日付で、湿地の生物に与える影響など新たな環境影響評価調査を求める要望書を太田昭宏国交相らに郵送した。

同学会は生態学の研究者ら約4200人が加盟している。

北陸新幹線については2002年に環境影響評価結果が公表されているが、要望書では「現在の路線は(公表時の路線より)150メートル湿地側に変更されている」と指摘。路線が通過する「後谷(うしろだに)」はミズトラノオやトチカガミなど湿地植物が多く生息する場所で、「工事によって壊滅的な影響を受ける」と訴えた。

トンネル掘削や新幹線運行が水環境や生物に与える影響にも懸念を示し、「詳細な環境影響評価調査を実施し、結果を踏まえた計画の再考を要望する」とした。

要望書は西川知事、河瀬一治敦賀市長、鉄道建設・運輸施設整備支援機構にも郵送した。

同湿地の新幹線計画については日本自然保護協会なども昨年、ルート変更を求める要望書を国などに提出している。